よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

院内セミナー開催の意味

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 厳しい医療環境を迎えたなかで、検討されるべき病院や診療所運営上の大きなテーマは、増患、単価アップ、生産性向上です。

 

 多くの患者が来院し、そして治療を受ける病院や診療所が地域に残ります。

病院であればそこから入院が発生し、手術につながり日当点(入院単価)があがるし、生産性が高く(質が高く)、短い時間で多くの患者を治療できる仕組みがあれば、病院は継続して医療を続けられます。

 

 無床の診療所においては入院がない分、来院した患者に治療の必要があるときにはいつも自院を選択してもらうことや、患者に高い評価をもらい、家族や友人に自院を勧めてもらうことが繁栄の要因です。増患のために、医療の質を常に高めることは言うまでもなく、できるだけ病院や診療所の敷居をまたいでもらうための企画が必要です。

 

 病院が季節毎に病院祭やクリスマスコンサートを開催するのは、外来に来院している患者や入院している患者のためだけではなく、広く地域住民を呼び込み、何かあったときの来院動機を喚起する目的をもつこともあります。

 院内でセミナーを行うこともこの類です。

 

 花粉症や風邪、心臓発作や脳疾患など季節により増加する疾患への備えや、広く生活習慣病の改善、悪性新生物の治療法、QOL確保などのための知識の提供や啓蒙を行うことや、心配なことがあれば自院で治療を受けて欲しいというプロモーションのために院内セミナーを行います。

 院内セミナーにより、自分の健康に危機感をもち、またはセルフコントロールができるようになることで、地域住民が健康で豊かな生活を送れるよう病院や診療所が支援を行うことは、自院のブランドを高めて、自院の地域での患者シェアをあげる効果をもっています。けっして健康な地域住民が増加することで自院の患者を減らしてしまうものではありません。

 増患やリピート率を高めるために、院内セミナーを行うことが有効です。

 もっといえば医療機関として地域住民の健康管理を行うという思いをもって院内セミナーを頻回に行い、多くの地域住民や患者のニーズに応えていくことこそが、実は地域医療を守る病院や診療所の使命であると私は考えています。

 もちろん、現場にいると患者の診察や治療によりセミナー開催の時間がとれない、という事情も理解できます。

 しかし、伝えたいことがあり、その思いを止められないという衝動があれば、時間を捻出することは可能です。例え15分や20分のスモールセミナーでも思いは伝わります。患者も含む地域住民とどのようにコミュニケーションをとるのか、という部分においてもとても意味のあることだと思います。

 

 院内セミナー、そして場合によれば外に出てのセミナーの運営について議論が必要です。

チームで達成するためのリーダー

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 私がリクルート(現リクルートホールディングス)のA職として、飛び込み営業の仕事をしていたときの上司はチームリーダーの見本のような人でした。都心の小さな営業所の開設を行う部隊でしたので、人数も5~6名だったと思います。

どちらかというと鬼ではない(任侠映画のスターのように格好のよい)軍曹のようなイメージで、我々が当初入職した支社長が落ち着いた紳士という感じでしたので、タイプの相違がよくわかりました。

所長は時に厳しく、時に優しくしかし着実に我々をコントロールしながら成果を挙げていました。同行するときにはスーツを肩にかけ、鼻歌を歌いながら貴社したことも記憶にあります。自宅に招きBBQをする、成績がよければレンタカーで旅行をするといった気遣いもあり、かなりまとまったチームとしての活動をして成果を挙げていた記憶があります。

 

一方監査法人は部門がありパートナーの下にマネージャーがいて、インチャージ(担当責任者)がいる下で、仕事を一兵卒でスタートしましたが、マネージャー迄は雲の上の人で、インチャージと食事にいったことが数回ある程度で、あとは仕事を軸につながるという関係でした。

会計監査というルールにしたがった仕事のなかで一定のアドバイスを受けるけれど、それ以上の関係をつくるものでもない、チームはあるものの自立したかたちとしてのチームワークだったと思います。

私が退職したあとに海外旅行やパーティによるコミュニケーションのシステムができたようですが、いずれにしてもインディペンデントな世界であった印象です。

 

そして銀行です。銀行は入社した部門がコンサルティング業務を行うコストセンターであったことから、尊敬できる上司のリーダーシップに影響され、皆がよく勉強していました。もちろん、銀行らしく歓送迎会が多いなかで、今はないと思いますが、半期半期の飲み会や雀荘での祖域横断的なコミュニケーションはありましたが、監査法人よりもより階層的な社会であり、銀行員としての規律や仕事に対するプロフェッションとしての意識の上にチームが成立していました。リーダーが独創的な銀行員であり啓発され身体を壊しながらも、寝ずに頑張った思い出があります。

 

雑駁ではありますが、リーダーシップやチームの在り方は多様であり、そのときの仕事の内容、リーダーの性格や属性、メンバーの能力、属性により大きく影響されることが分かります。

 

リーダーのタイプはそれぞれであり、その時点で成果を挙げるリーダーシップは異なるという理論も腑に落ちます。

すなわち特性理論→行動理論→条件適合理論という推移のなかで、まさに「あらゆる状況に適用可能な普遍的なリーダーシップは存在しない」「リーダーを取り巻く環境との関係性でリーダーシップが成立する」という考え方がそれです。組織目標を達成するために、リーダー自身の人間性を基礎として、メンバーに合せたリーダーシップを柔軟にとれるリーダーの存在が求められています。

 

リーダーは生まれつきのものではなく、また画一的なかたちではなく、条件適合理論によるリーダーに必要な属性やスキルを自分なりに整理し、具体化することが有用だ、それができれば、どのような内外環境変化においても、活躍できるチームをつくり上げることができるという帰結です。次回以降、自分なりの考えを整理してみたいと思います。

 

 

 

 

 

社員にとって受容できる夢のあるビジョン

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 ビジョンとは、経営者にとっては戦略の方向、社員にとれば実現したらよいと思える未来だと私は理解しています。

 

 ただ、ビジョンがあるからといって社員がすべてそれに惹かれて入社するとは限りません。

 

 入社するときにビジョンに共鳴して、また会社のビジョンが自分の夢であり仕事により自分の夢を叶えたいという思いをもって、入社する社員もいるでしょう。

 

 私はビジョンというよりは、選択肢もあまりなく監査法人に入社しましたし、また銀行に入行するときにも自分がやりたいことができるので応募し入社させてもらったという経緯があります。

 

 はっきり言って二つの組織のビジョンがどのようなものであったのかは知らないままに仕事を始めた記憶があります。

 

もちろん、前回の記事でも触れましたが、監査法人のおかげでさまざまな業種の経営を知り、銀行では信託銀行特有の風土に支えられた多くの聡明な上司や仲間に啓発され、とてもやりがいのあるコンサルティング業務ができたので幸せでした。

 

監査法人の仕事は当時においては、会計監査や付随するアドバイザリーに限定されていましたし、銀行においても銀行業のなかにおける仕事でしたので、仕事の価値を感じながらも未来にわたり意味のある何かをつくりあげていこうというビジョンがなかったのではないかとも思います。

 

私には、職業人としての使命感はありましたが、ビジョンがあったからといって仕事への動機が変化したとは考えていません。

 

仕事に勢いや創造性はあったものの制約された自由度の中で未来というより少し先を見ながらも、その時点での仕事を懸命にしていたのかもしれないという気がしています。

 

新しい何かをつくりあげる、ビジネスモデルを創造する、いままでにない価値をつくりあげる、といった業種であれば、別の経験ができたのかもしれないと思うと、もっとビジョンの有用性について理解していればという後悔もあります。

 

そうはいっても、当時はオールドエコノミーが成長期にある時代であったことは事実で、ビジョンの在り方や捉え方も当時はそれでよかったのかもしれません(誤解のないようにいえば当時もビジョナリーなマネジメントをした多くの企業があったことは間違いのない事実だと思いますが)。

 

いずれにしても、自分のやりたいことと会社がこうしたいというものが、目の前の仕事レベルではなく、未来を示すところで一致し、その状況の実現可能性が高いリソースをもつ企業があれば、やりがいのある仕事ができる組織なんだろうと容易に想像できます。

 

もちろん、その時点では資源がないとしても、それをつくりだそうとするトップがいて、それに呼応するように多くの社員が仕事をしている企業があれば、同じです。

 

私はその恩恵にあずかれませんでしたが、夢のあるビジョンがもつパワーを想像すると、やはりビジョンは大切だと強く思います。

 

もしそれが、夢のない未来のない事業で、やる気を失わせることのスパイラルに入るようなネガティブンな環境であれば、きっと社員は力を発揮できないのだろうと考えるのです。

 

未来を想い、ビジョンを明確に打ち出し、政策に昇華させ、具体的な日々の業務に落とし込むことができるトップマネジメントの存在があれば、どのような業種でも、どのような業態でも、きっと夢をもった仕事を社員に提供できるのでしょう。

 

幹部を動かす社員の力も必要かもしれませんが、リーダーの力量、意欲、覚悟があれば、よい企業文化が形成され、高い成果を挙げることができると思います。

 

心底から湧き上がるビジョンをもてるリーダーが数多く出現することを望んでいます。

 

前向きな企業(組織)文化と後ろ向きの企業(組織)文化

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 企業(組織)文化とは「企業や従業員が意識的・無意識的に共有する独自の価値観や規範、ルールなどの行動原理となる価値観」をいいます。企業全体なのか部署やチームのそれをいうのかにより、企業文化や組織文化というようです。

 

 企業文化は、外部からの影響を受け、徐々に形成され変化するものと言われていますが、最終的には、その企業の戦略や政策により決定されると、私は考えています。

 

例えば個人主義かチームワークか、失敗をマイナスとするのか許容するのか、年功序列か成果主義か、集団主義か個人を尊重するのか、といったことは当該企業の採用する制度や規程により、あるいはリーダの考え方により大きく影響を受けるからです。

 

企業が年功序列制度を採用し、個人の成果を評価する制度がないのに、うちの会社は成果主義で、成果をベースに評価するし、そのために個人が力を発揮できるよう、皆がサポートする組織です、という文化をつくるのは困難です。

ある部署がそう行動しても、結局企業としての個人の成果を評価する仕組みがなければ、当該部署の評価は処遇に結びつきません。

当該部署のなかで報酬に関わらず、個人の成果を認め、個人のやる気を醸成する、ということは可能かもしれませんが、企業のなかではそれが重視されないのです。

そのような活動が、組織内で成果主義を推進するリーダーの去就により変化しないとは言えず、継続して文化にまで昇華されるかどうかは疑問です。

 

ただし、企業のトップが環境変化をみて、当社は年功序列を排し、軋轢の生まれない成果主義を取り入れようと考えれば、制度を変えて新しい文化をつくり、自分の思いを遂げることは可能です。個人の成果を評価に反映しやる気になってもらおうと政策を変え、活気のある企業文化をつくれるのです。外部の影響を受けたものの、自分なりに意思決定し政策化するのです(そもそも企業戦略や政策で、まったく外部の影響を受けないものはありませんよね)。  

なお、部署によっては、成果主義を導入しても、年功序列を念頭においた評価を行うリーダーもいるので、この成果主義の制度を導入したこのケースでは、「どちらかというと成果主義を重んじる文化」という表現になります。

 

さて、さきほどの失敗をマイナスとするのか許容するのか、でいうと3M 社の企業文化が有名です。いくつかあるもののうち、行動の重視、自主性の奨励と失敗の許容が特徴的です。仕事の一部の時間を好きな(やりたいと思う)製品開発にあて、チャレンジに失敗しても誰も咎めない、というものです。研究開発を重んじる同社の経営者が決めた制度のなかで企業文化が発展してきたという証左です。自然に生まれたのではありません(なお、同社はチャレンジする企業文化に支えられ発展してきたのは言うまでもありません)。

 

このように企業文化や組織文化は、経営者の考えや戦略、政策により影響を受け、それらにより形成されることが分かります。

 

企業(組織)文化は戦略と同様に重要なものですが、企業文化も結局はリーダーが戦略や政策により方向を決め、制度をつくり、それを継承して初めて形成されるものであることが分かります。

さの企業のなかで経験を積んだ社員の多くが、企業文化を行動様式のなかに取り込み、実践することでそれらがより濃いものに発展するのだと考えています。

繰り返しますが企業文化は決して、気付いたらできあがっていたという類のものではないことを知る必要があります。

 

なお、組織において共通の認識とされる、独自の規則や価値観などを組織風土と言います。風土は企業の業種により方向づけられると思います。

 

私が監査法人で監査をしていた銀行は、保守的で堅実な風土でした。その後に勤務した信託銀行も同様の傾向がありました。銀行業の仕事の特性が風土をつくっていたと理解できます。

 

しかし、信託銀行には不動産や信託、コンサル部門があり、この領域の部署はどちらかというと銀行のベースの風土がありながら、オープンで創造的な業務を行っており少し毛色の違う風土がありました。それも仕事の性格に起因するものだと思います。

 

こうして考えると監査対象であったメーカーはメーカーの、また商社は商社なりに、建設は建設として、通信は官庁の影響もあり、それぞれの業種による風土ができあがっていたという印象です(もちろん、それぞれの企業の文化は面白いほど違いましたが)。

 

 いずれにしても企業のトップ(もちろん病院のトップも同様ですが)は、企業文化を重視し、社員が心からやる気になり力を発揮するためには、どのような前向きな(社員を活かす)企業(組織)文化が有効なのか、そのためにはどのような戦略、政策、そして制度やルールを整備していけばよいのかを考え続けていく必要があります。

 

 後ろ向きの文化をつくれば、職員が離反し組織が衰退することが明らかだからです。

 

収益=単価×患者数

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「医療は非営利である。したがって利益を出してはいけない」という誤解をしている医療関係者がいます。しかしここでいう「非営利」は出た利益を分配しないという意味であり、非営利組織であっても組織継続のために利益を出さなければなりません。

 

公的病院でも民間病院でも考えは同じです。公的病院であっても厳しい経済環境を迎え税収が減るなか利益にこだわらない病院はいずれ淘汰の波に洗われます。

 

利益=収益―費用で利益は管理されます。費用の管理は適切に行なうとしても、収益がなければ利益を得ることはできません。

 

病院収益は、外来収益と入院収益から成り立ちます。さらに健診や人間ドックやその他の収入が追加されます。ここで重要なことは、収益=単価×患者数であることです。単価は診療報酬で決まります。どのような医療行為を行うのかを計画し、施設基準等に合致した診療報酬が得られます。

 

なので、外来単価にしても日当点(入院単価)でも単価については、どのような診療活動を行うのかに依存して決定します。自院の経営資源を分析し、できることをすべて行い最も高い点数を得られるよう職員の配置や施設基準の確保を行うことは、組織の重要な戦略の一つです。多くの病院がそうした対応を行うなか、診療報酬に合せた単価アップが病院マネジメントの最重要領域になっています。

 

しかし、実は、より大切な最重要課題は患者数です。患者がどれだけ来院するのかが病院の評価であり、業績に大きく影響することを忘れてはなりません。患者がより多く来院する病院であるためには患者の信頼を得ることが必要です。質の高い医療を提供することが信頼を得て患者増を誘導します。

 

質の高い医療は、医師だけで達成できるものではありません。職員全員の患者に対する対応や、その背景にある思想や技術を日々高めるマネジメントが必要です。

  1. 仕事の仕組みを常に見直し、
  2. やる気になった職員一人ひとりが役割を果たす

ことがなければなりません。

 

  • 当院は何をする病院なのか、
  • どうすればそこに到達するのかを戦略として、
  • 事業計画を立て
  • 具体的に達成できるまで行動

する必要があります。

どのような医療を提供する病院なのかを明確にするとともに、人事や医療で使う道具、そして決めた通りに行動しているかどうかのモニタリングの仕組みづくり、直接的な地域での連携など、ガバナンスを駆使して成果を挙げます。

 

  • 対象となる患者に最適な医療環境をつくり、
  • それを地域に提供することが医療の本質であると認識し、
  • 決めた方向に進むことで多くの患者の来院を促す

ことがマネジメントです。

 

収益=単価×患者数という公式の背景に、病院マネジメントの本質があることが分かります。

やる気にさせる要因と、やる気を削ぐ要因

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 組織運営の基本は言うまでもなく人であり、人のやる気により成果が大きく影響を受けます。

 事業成功のためには、人がビジョンや戦略に共鳴し、仕事に対し強い思いや信念をもち、チーム内においてそれぞれの得意とする分野で力を発揮し、組織目標を達成する仕組みや文化をつくりあげる必要があります。リーダーはビジネスモデルや成果の挙げ方を考え、事業計画、目標管理、評価制度、ガバナンスの仕組みをつくることで働く人の適切な処遇を行うだけではなく、人がやる気になるためのあらゆる取り組みを行わなければなりません。

 

 組織に対する忠誠心ややる気はチームにおけるリーダーシップに大きく依存するといわれています。それは概ね正しいと思いますが、リーダーシップだけをマネメントの対象にすることは危険です。組織をあげてやる気にさせる要因、やる気を阻害する要因について考えていく必要があります。

 

 組織のなかで、人をやる気にさせる要因には、次のものがあります。

前向きな組織文化

受容できる夢のあるビジョン

(自分と無関係に)成長する組織

自ら成長できる機会の提供

(自分と関わり)成長する組織

達成感を得られる組織

尊敬できる上長の存在                                                                                     

前向きで相手の立場に立つ仲間

信頼できるチーム

高い評価を得て感謝される風土

自らの成長に応じた処遇

 

また、逆に人のやる気を削ぐ要因には以下のものがあります。

後ろ向きの組織文化

受容できない夢のない組織

(自分と無関係に)衰退する組織

自ら成長できる機会を奪われる

(自分と関わり)衰退する組織

達成感を得られない組織

嫌な上司の存在

利己的で自分勝手な仲間

信頼できないチーム

評価されず又は低い評価で罵倒される風土

成長しても処遇は変わらず又は下がる処遇

 これら一つひとつの内容について、やる気になること、やる気を削ぐことを対にしたテーマでブログで解説していこうと思います。

可視化は何のために行うのか

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 よく可視化、見える化が必要だといわれます。見えなければ変えられないからです。

 

 しかし、世の中には可視化をしただけで満足をしてしまうケースが山のようにあります。可視化したものが必要十分であるかも分らずに、また、どう使うのかも決めず、ただ可視化をして終わりでは何の意味もありません。

 

(1)自分は、組織は何をしたいのかを明確にする (写真はバンダルスリムガワンのRIPAS hospitalに掲示されていたビジョンとミッション)

(2)合目的的に目に見えないものを可視化する

(3)可視化したら分析する

(4)分析したものから傾向を見出す

(5)目的を達成するために、当該傾向からどのような解を見いだせばよいのか検討する

(6)解を実行するための計画を立案する

(7)PDCAサイクルのなかで計画を実行し。修正をしながら目的を達成する

 といった流れをつくる必要があります。

 可視化はあくまでも、目的達成、問題解決のために行うことを肝に銘じる必要があります。

 

 いろいろな指標を網羅的にとり、表にして推移をみる、ということで傾向が分かることはありますが、実は大まかな傾向をみても、より詳細なデータがなければ見えないことがあります。医業収益の詳細は診療科別収益、その推移をみると患者数と単価の推移に、患者数のうちオペ患者の推移と術式の推移、医師別の患者数、患者属性毎の推移とオペ件数の推移といった具合にどんどん実態が明らかになります。

 

 しかし、ここで、ではオペ件数をどう伸ばすのかといったことが目的であるのに、ここまでガラス張りにして終わりという病院がよくあります。

 

 結局患者をどう集めるのか、入院経路分析や個々の経路別の増患対策、地連のみならず病院のプロモーションや連携、医師の活動の仮説を立てて計画を立案し、行動するところまで進めなければ膨大なデータをとっても何も生まれないことが分かります。

 

 この病院は何をしたいのか、どこに向かっていくのか、どのように地域貢献するのか、どうすれば職員の求心力を集められるのか等を明らかにするなど、上記のプロセスを経て可視化に入らなければならないことを理解しなければなりません。

 

 なお、決めたことを実行するためにはガバナンスが必要です。管理者の意識、組織の仕組みをつくり、決めたことは必ず達成するという文化を醸成していくことが求められています。個人においても同じ。決めたことは必ず実行する。なかなか難しいものの、可視化の前提として心にとどめておく必要がありそうです。