よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

経験曲線の捉え方

f:id:itomoji2002:20211216134838j:plain

累積生産量が増加するほど効率よくその仕事ができるようになり、結果としてコストが下がることをモデル化したのがボストンコンサルティンググループ(BCG)の経験曲線理論(エクスペリエンス・カーブ)です。

 

同じ作業を繰り返すことにより経験を積みノウハウが蓄積され、さらに仕事の仕組みを変えていくことで仕事の質が高まり、生産性が向上して業務のコスト削減につながるのは容易に理解できます。

 

これは製造業だけではなく、サービス業の場合も、課題解決や顧客の要求に対応した経験が社員の能力を高め、仕事の見直しにより仕事の質が向上し、同様の成果を得ることができます。なお、経験曲線は組織全体に起こる事象を説明するものであり、コスト引下げの成果は個々の組織に帰属する社員のパフォーマンスにより異なります。

 

暗黙知が形式知化され、また個人知が組織知化されノウハウが標準化等で組織に定着したとしても、経験を積むことができるのは社員であり、また仕事の仕組みの見直しも社員の日常的な業務改善に依存するからです。

 

経験曲線にいう成果が成立するためには社員により

  1. ルーチン業務を円滑に行える、
  2. 日々発生する内外課題の解決が迅速に行われる、
  3. 仕事の仕組みを常に変え環境適合できる、

という前提が必要です。組織のガバナンスが適切に行われなければならないのです。

 

そこで重要なのは社員の自立を促し内外連携を誘導するマネジメントです。社員がやる気になって自立することで、現状で実績を上げるとともに環境に柔軟に対応できるよう改革や創造を行えます。さらに経験を蓄積し仕組みを変えつつ現業を進化させ、連携により自立度を高め、より一層の成果を挙げていくのです。

 

自立せず役割を果たしきれていない社員が、従来の仕事を右往左往しながら行い、ただ時間の経過を経験と置き換えるような日々を過ごしても、そこからの高い生産性向上は望めません。

 

経験による生産性向上やコスト引き下げのレベルを高めるためにも常に社員の自立をテーマにしたマネジメントISM(イズム)が行われなければならない理由がここにあります。

 

同じ経験を積んでも、仕事に取り組む姿勢や実績とともに、やりたいことへの思いや信念、そして技術、人間力、コミュニケーション、改革に対し高い意欲をもって行動している社員Bとそうではない社員Aにより、仕事の質向上の成果が異なります。

 

ある時点でAとBを比較した図では、Bにコスト引き下げに対する比較優位があることが分かります。

f:id:itomoji2002:20211216135027j:plain

なお、生産性は、経営資源に対する成果を意味しますが、同じ経営資源でより高い成果を生むことが生産性向上です。分母に経営資源、分子に成果を置いて計算します。例えば8時間で10の仕事をしていた社員が同じ時間で20の仕事ができるようになれば生産性は倍になります。1時間当たりのコストも半分になることが分かります。

 

同じ経験を積んでも早期に仕事の質を上げられる社員もいるし、そうではない社員もいます。自立する社員は上記で示す特性により経験を生かした自己変革や周りを巻き込んだ改革を行うことで、そうしない社員より仕事の質を高めることができるのは当然ですよね。

 

組織の経験曲線の形状は、社員の自立度のバラつきの総和であり、自立した社員の比率が曲線の角度に影響を与えています。鋭角になれば累積生産量対コスト削減比率は高くなります。生産性の高い自立する社員をできるだけ多く育成し、組織との相互関係を築けるよう環境整備を行うことが企業経営に重要であることを強く認識しなければなりません。

 

社員は、組織とベクトルを合わせた目標をもち自立することで、周りを巻き込みつつ努力を行いそれらを達成し続ける環境に身を置けます。やりたいことや、やらなけらばならないことができる自分をつくり達成感を得て評価されながら思い通りの人生を生きられるのです。

 

組織も社員も自立をテーマにどう活動すれば良いのかを考え行動する時が来たと考えています。

 

自立を促進する ISM(Independence Stage Management)

f:id:itomoji2002:20211211222043j:plain


企業と社員にとっての自立について検討してきました。支配や助力を受けずに自立し企業とフラットな相互関係をつくる力のある社員を数多く生み出し、社員間、社外間の連携を誘導することで企業はどのような環境においても成長し続けることができます。

 

社員に自立してもらうために企業はどのようなマネジメントを行えばよいのかについて検討します。我々の開発した自立のためのマネジメントISM(イズム)を紹介します。

 

ISM(Independence Stage Management)では、社員の自立の状況を4つのステージに区分し、それぞれのステージにいる社員に適切なマネジメントを行うことで、できるだけ多くの社員に自立を促す方法です。自立した社員は、社内外の連携を通じたより一層の高い成果を挙げていけるようになります。

 

ISMは、次のプロセスで実施します。

  1. 全社員のステージ評価
  2. 課題抽出
  3. コミットメントによる課題解決目標化
  4. 解決支援
  5. 課題解決によるステージ移動

 

まずは、「全社員のステージ評価」を行うための4つのステージを説明します。

 

ステージは自立度を企業への依存度と独立度の組み合わせで構成します。企業に依存している程度を評価し、併せて企業から独立している程度を評価することで自立の状況を焙りだそうとするものです。

 

さて、企業は適切な人材配置と仕組みにより組織目標を達成していきます。企業ミッション達成のためには社員の貢献が不可欠です。社員の貢献があることで企業は所期の目標を達成できます。しかしISMでは貢献度を評価基準にしていません。「貢献」は自立した社員が連携し成果を挙げて初めて到達する領域であり、自立の状況を直接判断する基準ではなく帰結です。

 

さまざまな理由により環境が短期間で目まぐるしく変化する現状では、社員が予め設定された活動目標や行動様式を受容れ順応するだけでは、企業は柔軟な環境適合ができません。従来のやり方である時点での組織目標を達成しようと活動することも必要ですが、指示通りに仕事をすれば事足りる時代ではありません。ほぼ同じことを続ける日々から抜け出せない度合いを依存度と言っています。「確実に同じことができる」高い依存度を持つことも重視しつつ、それだけでは不十分な領域を独立度で評価します。

 

ここに、依存度においては、組織目標達成のために規律を持ち協調して行動しているか、また自らの役割に対し、責任をもち積極的に行動しているか、結果として目標を達成し実績を挙げているかが評価されます。規律、協調、責任、積極の4項目は、仕事に対する姿勢や態度をみる情意考課の項目でありとても身近です。実績については業績考課の対象でもあり、評価する企業において現状の評価制度と親和性が高いと考えています。

 

そして独立度です。仕事ぶりが従順で実績が挙がったとしても、言われた通りに行動し低い生産性を以て成果を挙げているのでは企業は変わることができません。独立度は、社員一人ひとりが、これをやりたい、こうなりたい、こうしたいという思いを信念に変え、自分の進むべき道をはっきりさせて、それぞれの得意分野でプロとして独立している度合いをいいます。

 

独立度の高い人は、将来を見通したうえで目標を持ち粘り強く取り組むことで周りを巻き込み成果を挙げます。置かれた現状を改革し組織を変えていける人です。独立度が高ければ、企業文化や風土や計画、仕事の方法に順応しても依存せず、自らが率先して価値を生むことができるのです。

 

常に向上心をもち、技術を身に着け、人から求められる社員になるよう取り組むとともに人としての気遣いや思いやりをもち他者の力を引き出すなか、ともに改善や改革を進め生産性向上や価値創造を行なっているかどうか社員に求められている自立の要素です。独立度として、向上心、技術力、人間力、コミュニケーション力、改革力の程度が評価されます。

 

上記より、

企業への依存度は、

1規律

2協調

3責任

4積極

5実績

により評価するし、

そして、企業からの独立度は、

1向上心

2技術力

3人間力

4コミュニケーション力

5改革力

により評価することが分かります。

 

上記で説明した依存度を縦軸に、独立度を横軸にとります。依存度は下から上に、また独立度は左から右に値が高くなります。そこに生まれた空間を4つのステージに区分します。

 

左下 低依存度・低独立度 

左上 高依存度・低独立度 

右下 低依存度・高独立度 

右上 高依存度・高依存度 

がそれらです。

 

それぞれにはステージの特性を表現する名称を付しています。

 

低依存度・低独立度 ハンモック 

高依存度・低独立度 ベッド 

低依存度・高独立度 チェアー 

高依存度・高独立度 スタンディング

がそれらです。

f:id:itomoji2002:20211211222751g:plain

ハンモックのステージにいる人は「リゾート社員」と呼ばれます。ハンモックは南国のイメージ、休暇のときの時間をゆっくり過ごすときにリラックス効果を得ることができます。自立度でいえば、面従腹背してやらない、言われたこともできない、向上心もない、現状を気にしないという気楽な状況です。

 

ただ、ハンモックは使うと分かりますが、揺れはするものの制約があり寝返りすら打てません。横になり方を間違えると腰にも悪いといわれています。降りるときにも降りづらく不安定であり、よほど芯が強くなければ、ハンモックにとどまり続けるのは困難です。

 

しかし、このステージに位置する自立できていない社員が意外と多い組織もあるので注意が必要です。彼等がそこにいる理由を解析し現状を打開出来るよう支援します。

 

ベッドのステージにいる人は「ぬくぬく社員」です。組織目標達成のために、それなりの姿勢や態度をもって行動し、一定の成果を挙げている社員です。しかし、結局は指示通りに仕事をして、同じことを続けることから抜け出せていません。「なんとなく一生懸命にやっているのでいいだろう」という安心感や心地よさをどこかに感じながらも変われない自分に気づいていません。

 

暖かいベッドから抜け出すことは勇気がいるし、これでいいよねと納得しているので踏ん切りがつかない状況にあります。ただ実は、厳しい冬の時代を迎えいつまでも布団が役に立つかも、またベットが壊れるかも分からず安心できません。

 

企業のなかでのマジョリティに属しているステージで企業が不確実性に対応することができない原因をつくっている社員がいるステージなのです。

 

企業は彼等がベッドから抜け出しスタンディングできるよう誘導しなければなりません。

 

チェアーのステージにいる社員は「腰かけ社員」といわれます。ここにいる社員は、独立度を評価すると高いポイントを付けられるけれど、どこか組織のベクトルと合っていない社員ですが、これをやりたいという信念をもち、将来を見通した目標を持ち自分の進むべき道をはっきりさせています。ある分野で高い能力もあり行動しますが、この組織のためには働きたくないと考えています。

 

もともと力があるため、外部からも一目おかれていることも多くあり、組織に背中を向けて椅子に座り、あからさまではないもののどこかでいつでも外に出ていく心の準備をしています。もともと自立していた人が組織の方針転換や上司との軋轢によりこのステージに降りてきてしまうということも多いと思います。本人のやりたいことを聞き入れ、適切な環境を用意できていない可能性があります。企業は、隠れ腰かけ社員を引上げ、彼らがもつポテンシャルを発揮できる機会を提供して改革を牽引できるよう誘導しなければなりません。

 

スタンディングのステージは文字通り「自立した社員(An independent person)」です。企業に依存しても一方で独立心とのバランスをとり、率先して自ら価値を生むことができる社員です。常に使命感や向上心をもち、プロフェッションとして求められる技術を身に着け、人から求められる社員です。人としての気遣いや思いやりをもち常に進歩しています。また、改革を進め高い生産性向上や価値創造を行ない進化しながら組織貢献し結果を出し達成感を得続けていく社員です。

 

既存の体制が許容する範囲で改善や改良を行うとともに変革の一部を担うことを改革といっていますが、まさに自立した社員には現場を変え、組織へリーンな情報を提供することで戦略に影響を与えていくことが期待されています。

 

なお、このステージにいる社員と企業の関係は平等(equal)です。なので企業はしっかりとしたリーダーシップをもち彼等が力を発揮できるよう環境整備をするし、自立した社員も自分の進むべき道を明確にしたうえで、良心に従い組織に応えていく必要があります。企業がそれを怠れば自立した社員は腰かけ社員になるか、そのまま組織を去ることになるでしょう。

 

自立した社員が多ければ多いほど組織は変革し不確実な未来を、胸を張り乗り越えていくことができるようになります。今回、社員の評価ステージを明らかにしました。

 

これからは、複数回にわたり、「自立した社員を数多く輩出することを目的として課題解決によるステージ移動を行うためのISM」を活用し、

  1. 具体的な評価基準の使い方の説明、
  2. なぜそのようなステージ分布になっているのかの組織的課題、
  3. 個々の社員がなぜ現状のステージにいるのかの課題、
  4. そして彼等のステージを変えていくコミットメントによる課題解決の目標化、
  5. 解決支援

について詳細に検討していきます。

 

本稿が、ISMを理解した各企業が実際に依存度と独立度の評価基準をポイント化し、自社の現状を分析して課題を抽出し解決への対応を行う、そして社員の方々は自分はどこのステージにいるのかを確認し、そこからどのように自立への道を辿ればよいのかを考えてもらう機会になればよいと思います。

社員は自立して飛翔する

f:id:itomoji2002:20211207164659j:plain

社員の側からの自立を考えます。

 

我々は、個人の成功は「何をもって成功と言うのか」というテーマに長い間向かい合ってきました。

 

個人の成功は地位でも名誉でも、財産でもなく自己実現であり、まずは主観的な達成感を得ることであると考えています。客観的に評価されることへの欲求は、マズローの尊厳の欲求を引き合いに出すまでもなく重要ですが、主観的満足が伴わなければ真の達成感は得られません。

 

ただ、企業においては社員は組織ミッションや経済的成果への貢献を経て主観的満足を得ると共に客観的評価を得る必要もあります。自らの仕事の質を高め生産性を向上し目的を達成するために行動しなければならないのです。

 

そのためには、

  1. 仕事の仕組みを見直すこと
  2. 個人の技術技能向上を図ること

への取り組みを行います。

 この2つをクリアーするためには、

 

  1. やりたいこと、やらなければならないことを目標化し、
  2. 自分の行動様式を見直し
  3. タイムマネメントを行い
  4. 日々のやり方を変え
  5. ITを使い倒す
  6. 決めた領域でのプロフェッションになるとともに能力を高める

 などをテーマとして行動します。

 

どうしたら質を上げ、単位当たりコストを引き下げ、時間を付加価値業務に振り向けられるのかを考え行動することで、仕事の質は明らかに上がります。

 

企業の視点からも能動的に自己変革を行う社員の存在は有益ですし、求められる人材像であると意識しつつ行動することはとても重要です。仕事において個人でもASCSとPDCA等どのようなフレームワークでもよいので、成果を挙げるための自分なりの管理方法を工夫し、より高い成果を生む活動を行います。

 

なお「やりたいこと」、「やらなければならないこと」の目標化はとても大切です。これがなければ、我々が「サクセスキューブ」で紹介している成功の6要素、すなわち思いを信念に変え、技術技能を高め、人間力を磨き、コミュニケーションをとりつつ行動し成果を得ながら達成感を得ることができないからです。 

 

私の周りやクライアントの中にも「本当にやりたいこと、やらなければならない」ことが見つからない方々が意外と多くいます。自分の心に深く問いかける時間も必要かもしれません。

 

本当にやりたいこと、やらなければならないことの見つけ方については別稿で書いているので参考にしてください。

 

何れにせよ、自立しなければならない仕事においては自分のやりたいことにフォーカスし特定の分野で高いパフォーマンスを発揮する必要があります。そして、やりたいことや、やらなければならないことに取り組むときには、ここでいう思い、信念、技術力、人間力、コミュニケーション力、達成感の6要素を片時も忘れてはなりません。

 

さらに、優れた社会人として自立し、思い通りに生きるためには、併せて我々が提言するCANの考え方も大事です。

  1. 正しい仕事の姿勢(Correct attitude)
  2. 適切な行い(Appropriate action)
  3. 必要とされる人(a person Needed)

がそれらです。自立し相手から好かれる仕事をするためには、3つのファクターを身に付ける必要があります。これらの3要素を我々はCAN(できる)と名付けています。

 

ここで「正しい仕事の姿勢」は、約束を守る、人の話を聞く、要点を整理できる、仕事が正確で迅速、前向きであることを言います。また「適切な行い」は、礼儀正しい、笑顔がいい、身だしなみ・清潔である、身振り手振りがあるという態度と、誠意がある、正直である、信念がある、といった生き方により構成されます。そして「必要とされる人」は、仕事に精通している、仕事以外の知識を持つ、先見性をもつ、創造性をもつことを言っています。

 

なお、「必要とされる人」になることは、とても重要です。それこそが比較優位(Purple Cow)であり、自立の基礎であるからです。

 

まずは仕事でやりたいことのなかから

  1. 得意分野をつくること、
  2. 自分の仕事の領域以外の知識をもつこと
  3. そのうえで先を読める力をつけること

が大切です。これからの世の中はどう変化するのか、経済はどうなるのか、自分の仕事はどう変わるのかを考えます。先を読めない、将来ビジョンを示さない人と仕事をしたいとは誰も思いません。    

 

先を見ることができる人は、それに備えた何かを創りだすことができます。CANを意識し、足元を固めたうえで常に先をみて仕事ができるからこそ、人から一目置かれ仕事ができる人だと認められます。

 

仕事への姿勢や態度、そして人間性をも備えたうえで自信を付けて必要とされる人になり、一緒に仕事をしたいと思われて自立できるのです。

 

すべての社員は、やりたいこと、やらなければならないことを行い思い通りに生きるためにCANを片時も忘れてはなりません。

 

日々の業務を高い生産性を以て行える発想や情報収集力、能力を身に着け、主観的そして客観的な達成感を得続ける活動のなかでこそ「自立」が現実のものとなると認識し、覚悟をもって行動していく必要があります。

 

自立が連携を生み成果を挙げる

f:id:itomoji2002:20211207142905j:plain


自立と連携を考えます。自立した社員が企業価値を高め、厳しい環境に勝ち続けるためには連携が必要です。

 

ここで連携とは、「相互に連絡をとりながら協力して仕事を行うこと」をいいます。自立した社員が、企業の進む方向と自分のやりたいことのベクトルを合わせ社内外で連携することにより始めて価値が生まれると考えています。

 

もうお分かりのように自立した社員が個々バラバラに自分の思いで行動するのでは企業は成果を挙げられません。一人で動くよりも組織を活用した連携を行う事で多くの価値を生みだせることに疑問を持つ人はいないでしょう。

 

自立からは自らの進歩や進化が、そして自立した者同士の連携からは協働、ベンチマーキング、支援、改革、創造が生まれます。

 

一緒に働くだけではなく相互を比較して良いところを学んだり、不足するところを支援し合い共に成長を享受できます。そこからは改革や価値創造が行われるといった実質的な連携です。

 

そもそも社員が自立していなければ実質的な連携は生まれません。自立していない社員でも連携という形式はとれ一定の決められた範囲内で一緒に仕事はできるものの、自立していない社員からは感化や啓発、鼓舞もされず、ひらめきや刺激も与えられません。上記に示した連携を実践できず価値創造を行なえないからです。

 

自立した社員だからこそ、どの職位にあってもリーンな(無駄のない)情報をもって現場で発想し率先して行動することで認められ、他の社員や取引先への影響を相互に与えながら連携できます。

 

なお、連携によって社員は、自立→連携→成果→自立2→連携2→成果2→自立3→連携3→成果3といった上方スパイラル的な効果を得てより一層成長することになります。

 

企業から社員の自立をどう促すのか、自立できていない社員にどう自立してもらうのかがマネジメントの重要なテーマの一つになります。    

 

社員自ら自立を考える必要もありまずが、まずは企業からの「自立」促進のための枠組みを考えます。

 

企業が社員に自立してもらうためには、社員一人ひとりの役割を明確にするところから始めなければなりません。そのためのガバナンスが必要です。

 

組織自体の到達点を明確にして、現状分析を行ったのち、到達点と現状のギャップを確認、その乖離を埋める解決策を検討しPDCAを回して目標を達成するという流れをつくります。

 

我々が開発したASCS(アスクス)のフレームワークです。

 

  1. 何をしなければならないのか、到達点(Attainment=A)はどこか
  2. 現状(Staite=S)はどのようになっているのか分析
  3. 到達点と現状の間にはどのようなギャップがあるのかを確認(Confirmation=C)
  4. ギャップを埋めるための解決策(Solution=S)

といった枠組みのなかで、解決策をPとしてPDCAサイクルを回します。問題解決のためのフローの頭文字を取りASCSと言っています。

 

  1. 到達点が不明瞭だと、組織として何を目指して活動すればよいのか分からず、日々の直面する仕事を懸命に行うしかなくなる
  2. また仮に到達点が明確でもs、現状分析ができていなければ、解決すべき問題がどれだけあるか、そのための課題は何かが掌握できず、行動が網羅的に行われない
  3. 到達点や現状分析が行われて乖離の確認が行わなければ、何を解決すべきかを見いだせない
  4. そして解決策が適切でなければ解決につながらない

ということを理解して、ASCSを意識しギャップを埋める解決策(最適解)を誘導しなければなりません。

 

ここでPの段階で各部署の、そして各社員の役割が確定します。社員が自立するためには、彼らが成果を積み上げ力を付けて自信をもつプロセスが必要です。

 

企業は経営方針を目標化し提示したうえでOne on oneミーティングにより、

  1. 一人ひとりの属性や能力、思い(やりたいこと)を評価する
  2. 個々に明確な役割を付与する
  3. 達成に対する約束(Commitment=コミットメント)を行う
  4. 達成を支援する

ながれ(コミットメントサイクル)を回します。

 

ハーズバークの二要因理論にあるように、承認、責任、適正な評価、昇進、達成感(動機付け要因)により社員はやる気になり、給与、福利厚生、同僚や上司との人間関係(衛生要因)は悪いと不満になるけれども良くてもそれほどのやる気につながらない、という傾向にあります。

 

目標管理により社員一人ひとりの役割を確定し、達成支援のなかで成果を挙げ、「動機付け要因」に関与しながら達成感を得て自信を付けてもらうのです。このプロセスの連続において社員の能力を高め能動的な活動を誘導し経験やナレッジを以て自立を促す仕組みです。

 

なお、どの段階で行われるものであっても「現場の情報を得つつ行う意思決定」が必要です。情報提供者の一人である社員が、経営思決定のどこかに自分の思いがにじみ出ていると感じることが彼らの自立を促す一助になるからです。

 

意思決定による管理方法にはトップダウン、ミドルアップ、ボトムアップといった方法があります。

 

しかし、トップが独自で意思決定を行い下位に指示を行うトップダウンメソッドでも、中間管理職が軸になるミドルアップメソッドでも、そして現場の意見をもとに意思決定を行い行動するボトムアップメソッドでもない「トップマネジメントが着想し、現状分析→情報収集→仮説立案→情報収集→仮説検証→情報収集→仮説立案というサイクルを繰り返しながら確信を得た段階で最終意思決定を行い、下位に落とす」という形をとることが有効です。

 

トップマネジメントが現場や中間管理職と「コンスタントにやり取りをしながら意思決定を行い管理する方法」を我々はCIM(Constant Interchange Method=シム)と名付けました。

 

CIMでは、

  1. 意思決定を行うトップマネジメントが情報収集を行い、自分の考えを整理したうえで情報を下位に流す
  2. そしてその考えが正しいかどうかの情報を収集し、検証作業を行い判断を行う
  3. そしてまたその考えが間違っていないかを別の階層に下ろしたのち情報収集により考えの妥当性を確認する
  4. これら作業を納得いくまで繰り返し最終的に意思を決める

というながれをつくりだします。

 

決めたことをいきなり組織に落とすトップダウンでもなく、現場の意見を尊重し判断をするといった意思決定ではありません。

 

一端ボトムに落とし現場の情報を得て、検証し結果をミドルに落とし、彼らの持つ情報を判断するというプロセスを何度も繰り返しながら、さらにマネジメント層と議論し考えをまとめる、といったトップマネジメントと組織内を行き来する絶え間ない(ギザギザした)やり取りのなかで、最終決定を行うものです。

 

この方法による意思決定は、既に現場の事情や意見を汲んでいるし中間管理職の考え方も聞いた結果なので、トップマネジメントからある決定による指示が行われたとき組織に受容れられやすく、皆が同じ方向を向いて行動することができて成果を出しやすいという大きなメリットもあります。

 

意思決定に必要以上に時間がかかるのではないかという懸念は必要ありません。時間があるものはじっくりと、瞬時に判断が必要な案件については制約の中で効率的にCIMプロセスを回すことができるからです。

 

なお、トップが現状を把握して回るとことは必要条件ではなく、例えば経営企画やネットで意見を収集することでも事足ります。

 

敢えてCIM(シム)と定義することで当社は経営意思決定には、各階層を行き来しながら主体的に情報を集め、仮説検証を繰り返し徐々に意思を固めて、最終的に意思決定し組織に落とす、という意思決定プロセスを当社は採っている、ということを企業内に明らかにできるのです。

 

CIMを採れば、前述したように社員に「この件について現状や自分の思いを聴いてもらった」という安心感があります。結果、経営意思決定のプロセスにおいて全階層の参加の帰結として社員の自立を得られるのです。

 

この他業務の質向上のためのシステム化や業務改善提案制度など社員が変革や創造に関わりつつ力を付ける仕組みは多数あります。

 

適切なリーダーシップのもと、日々の指導や評価、教育制度も含め「自立」をテーマへの取り組みをしっかり行わなければなりません。

自立する社員が企業価値を高める

f:id:itomoji2002:20211206172640j:plain


企業からの支配や助力を受けず(
自立)に企業とフラットな相互関係をつくる力のある社員を数多く生み出すマネジメントが必要です。数回に分けて社員の自立を促すマネジメントについて考えます。

 

そもそも、組織はなぜ存在するのでしょうか。「組織とは、目的を達成するために人が集まり、秩序ある行動をとる枠組み」をいいます。

 

組織は人を軸とした経営資源を活用し成果を挙げ続けなければなりません。社員は組織の機能の一部を役割として活動し、集団として結果を出さなければならないのです。企業は目的達成のためコストをかけて収益を得て利益を出し継続していく(Going Concern)ことが期待されています。

 

ここで大切なことは目的を達成するための組織目標と個人目標の一致です。組織に集まる人は、その組織が何をする組織なのかを知り組織に帰属します。少なくともこの企業はこんな仕事をしていると知り、漠然とここでの仕事に興味がある、あるいは明確にこんな仕事ができるからこの企業に入社するという動機がある筈です。

 

稀に仕事があればなんでもいいやという人もいますが、組織としては好ましいことではありません。言うまでもなく頭数ではなく「こんな仕事をして欲しい」という期待や成果を想定しての採用だからです。

 

いずれにしても企業と社員には双方の思いを遂げるために成立する関係があり、そのうえで事業活動が行われています。しかし、時が経つと組織サイドからすれば、想定していた成果を挙げてくれない社員が見えてきます。当初に曖昧な採用を行うことやマネジメントの脆弱性が原因ですが、社員の側にも当初思い描いていた仕事ができていない不満も生まれてきます。

 

その相互の感覚は明瞭なこともあるし、モヤモヤしていることもあります。相互感覚をうやむやにして企業活動が継続される組織が多く、「うやむやをなくしはっきりしたい」と思い、さまざまな組織的取り組みを行うものの思うような成果を得られないまま日々が経過する企業も多く存在します。

 

企業のその時代にフィットした業種や一定規模、勢いや成長があると、そうした課題は小さくみえるので余計に手をつけないし、逆のポジションにある企業は手を付けたくても課題が大きすぎて、きめの細かい対応ができず、むやみに大ナタを振るうことで本来の課題解決が行われないまま業績を落とす羽目に陥ります。これらの事象は組織にとっても、そこで働く社員にとっても不幸です。

 

なお、順風満帆に事が進んでいると安心している企業でも、社員の力を十二分に引き出してはいないことに気づかなければなりません。社員が覚醒し力を発揮することで企業もより高い成果を得られます。そのためのマネジメントを行う必要があります。

 

まず、企業と採用される者の関係から振り返ります。そもそも人の採用時に、企業側にも自社の良さや課題についてすべての真実を伝えられる訳もなく、働く側も自分が何をやりたいのか、イメージが鮮明に描けていないか、仮に具体化できていたとしてもよほどの専門家でないかぎり、企業側にその仕事が必要であるのか分りません。

 

自分に求められる筈の実力があるとしても、神でないかぎり組織内にその仕事ができる人が実はどれだけいるのか、またいないのかまで知る由もありません。企業のニーズと社員の実力がほぼ合致し双方が思いを遂げることがあるとしても、それは稀です。

 

現実には働く側の思いとは別に、ある分野で企業が目星をつけて人を採用したあとは、その時々の企業にとり必要な役割を担ってくれる人を、どれだけ企業の考える一定の方向に誘導できるかどうか、あるいは不足するところがあれば育成できるかどうかが大切なマネジメントの一つになります。

 

社員は、組織と柔軟に折り合いをつけながら、その都度組織の求める方向で自分の力を発揮し、どのように仕事をしていくかを考え行動することが組織の中で上手く生きられるコツだと知る必要があります。社員は未だ経験していないことを仕事から学び、組織のポテンシャルを活かしさらに経験を積み成長できます。

 

企業は社員に役割を与えミッションを果たすようマネジメントし、社員は自分の思考や行動を組織に合わせ敷かれた線路を踏み外さないようにしっかりと自分をコントロールして仕事をすることで安定した環境を確保するのです。そのことで「想定していた成果を挙げてくれない社員」はいなくなり、企業は所期の目的を達成できるようになります。

 

もちろん、全ての社員がそのような行動をとることは困難であり、この議論は理想論かもしれません。パレートの法則を持ちだすまでもなく、残念なことにどのような企業にも何らかの理由により仕事へのモチベーションが低い、あるいはやる気はあっても能力が伴わない社員が一定数いるからです。

 

しかし仮にここでいう相互関係さえあれば目まぐるしく変化する環境に適合して最適化し、企業は成長できるのでしょうか。そうではありません。これだけでは間違いなく不十分です。

 

付与された役割を果たすだけではなく、主体的により一層高い技術を身につけ、変革を仕掛け新しい価値をつくりだす社員が数多くいれば、間違えなく企業は掲げた目標をより早く達成できるし、その時点でのゴールに辿り着くことができます。

 

社員も、順応しながら役割を果たして組織に貢献するとともに、自らの思いを以て組織を利用して、変化しながら力をつけて本当に自分がやりたいことを企業のなかで実現できる地盤をつくれるようになることが本来の生き方です。自分の価値を高め将来に向けて仕事の選択肢の幅を広げて行くことができるようになるからです。

 

ここでのキーワードは自立です。自立とは、企業内において他への従属や支配から離れて独り立ちすることをいいます。

 

企業は社員に自立を促し、また社員は自立できるよう鍛錬を重ねて成長する関係がなければ、企業も個人も思いを遂げられません。  

 

社員は、自分の価値を高め自立することで自分の得意とし評価される市場に身を置くことができます。

 

企業に従属するしか道がない人生ではなく、自分を求める他の企業に招聘されたり新事業を起こせる実力を身に着けられれば、企業も一騎当千の社員を抱えられ高い生産性を確保できます。

 

企業はどこに出しても恥ずかしくない実力のある自立した優秀な社員とフラットな関係をつくり、彼らを組織に繋ぎ止めて社員同士の連携を牽引するマネジメントができれば企業価値が格段に上がります。

 

社員の自立を促し社員間、外部との連携を牽引する経営こそが先の見えない環境をものともせず、次々に立ちはだかる障害をなんなくクリアーして行ける企業をつくるれるのです。

連携はブランディングとともに

f:id:itomoji2002:20211203225533j:plain

他の医療機関との連携による増患を行うために、病院で多職種による連携プロジェクトを組成運用したことが何回もあります。一番始めの案件の話です。

 

CTの共同利用による連携、とりわけ地域でニーズのあった歯科の治療に必要な撮影を行っていた病院でしたが、そのときには糖尿病をテーマとした眼科、そしてオペ患者や健診患者の紹介を受けるために内科の診療所をターゲットにプロジェクトをつくり巡回(営業)をしようということになりました。

 

前提として可視化のために部門別損益計算を導入しました。定量的に各診療科の弱点を掌握し、さらにマニュアル作成運用など改革を進めながらの増患プロジェクトでした。普段は外にでない看護師、放射線技師、検査技師、医事課等の職員7〜8名が選抜されメンバーになりました。

 

地域に出て活動を行ったおかげで実質的に組める医師との関係をつくりあげ、その後の紹介増につなげた事例です。

 

このプロジェクトを通じて分かったことは、他の業種同様にやはり連携は人のつながりによりつくられるものだ、ということです。相互に信頼関係をつくるための誠意をもった日々の活動の帰結であるということを確信したのでした。

 

前後してクライアントの名刺を持ち地方にある大学付属病院の院長とお会いしたとき、私が「どうしたら貴院との連携をより強くできますか?」とお聴きしたところ、「それは君、看護部長と事務長と仲良くなることだよ」と言われたことを思い出します。

 

ところで、このプロジェクトにはいくつものエピソードがあります。

 

この連携プロジェクトを支援したとき、結構奮発して弊社から名刺入れを提供しました。挨拶のトレーニングも行いましたが、名刺入れを開けるとホワイトボックス株式会社の名前が刻印されていて皆が嫌がっていました。

 

「そもそもこういう接客の仕事が嫌で看護師になったのに、名刺を出して挨拶することなんてできませんよ」と真顔で反発するメンバーの看護師さんもいました。しかし、彼女はプロジェクトで多くの診療所を訪問している間に徐々に明るくなり、後半のミーティングでは「普段お会いしていない医師と意見交換ができて、いろいろ勉強になりました。本当によかったです。地域の事情も分かり、自院の活動の見直しもできました」と喜んでいました。

 

他にもいくつもの気づきがある職員が出てきて、プロジェクトを進めるにつれてどんどん活気が生まれ成果が出たのはとても嬉しかったです。

 

そういえば、連携先の眼科医師がプロジェクトメンバーの名刺を受け取るやいなや横に投げたとの報告を受け、プロジェクトリーダーである糖尿病の医師は、メンバーに対しその眼科との関係を直ちに止めろと指示を出したこともありました。

 

プロジェクトメンバーに悪印象を持たれた眼科医は、残念なことに毎月10人以上の当院からの紹介患者を失ったのです。社会人としての心得、大事ですね。

 

このクライアントでは、全体的な病院改革のなかで、増患プロジェクトが行われましたが、他に前述した部門別損益計算や業務改善、マニュアル作成運用を実施した結果、大きな変革についていけないスタッフが徐々に退職し看護部は50%近い入替があり、大変でした。

 

しかし、困難を乗り越え残ったスタッフは業績を挙げて一騎当千のスタッフに成長したことも感慨深い思い出です。

 

さて、病院には営業という考えがありません。営業=自院のサービスを販促する行為(プロモーション)の一つであり重要な経営テーマであるにも関わらずです。

 

そもそも職員は、比較優位性のないもの、自信なく自立できていない医療は、他に勧められません。活気がなく地域の評判も芳しくない病院では大方の職員が「家族には当院に来てもらいたくない」と口を揃えて言うのを何度も聞いています。

 

なので、連携には自立のためのブランディングが伴わなければなりません。多くの患者に来院、入院してもらうための医療の質向上によるブランディングは職員全員の役割であり、それを受けての連携プロジェクトという位置づけだったのです。

 

いずれにしても、コロナ以前に少子高齢化や社会保障費抑制、また他国民の可処分所得が低下し30年前を下回った時代を迎え、病院は厳しい環境を迎えています。自院の使命を果たすための医療の質向上や全職員によるプロモーションへの取り組みを継続し、成果を挙げていかなければなりません。

 

増患プロジェクトがいかに意味のあるものかを理解する時です。今でも連携、増患は地域連携室の役割である、としている多くの病院は考えを改める必要がありそうです。

 

 

 

職員への期待と権限について

f:id:itomoji2002:20211201224444j:plain


先日ある規模の大きな診療所のトップが、「職員がやるべきことをしない」と嘆かれていました。しかしお聴きしてみると、ご自身のやりたいことを整理し経営方針として提示することや具体的な目標設定なしに、日々のルーチン業務のなかで職員に期待をしていることが明らかになりました。

 

もちろんルーチンそのものは医療現場の要であり大切な仕事ですが、個人の役割が明確になっておらず、現場は過去からの仕事の積み重ねのなかで方向を見失い、もがいていたかもしれない状況でした。ガバナンスも効かず標準化も改善のための取り組みも評価や教育もないなかでの失望だったのです。

 

組織が何を目指すのかにより、必要な人材像も役割も変化します。当たり前ですが、なぜ、何を、どこで、いつまでに、誰が、どのように、いくらで行うのか、5W2Hが明らかにされた明確な戦略、成果を挙げるための具体的な方法や計画をもち、それを具体化するプロセスにおいて「職員がやるべきことをしない」のかどうかが議論されなければなりません。

 

職員の自立を促し連携しながら成果を挙げるよう誘導していかなければならないのです。

 

さて、自立した「職員がやるべきことをする」必要があるときに権限や責任に光が当たります。組織の権限は、起案、審査、承認、(実施)、報告という行為に区分されます。「起案」は何かを提案すること、お伺いを立てること、そして「審査」はそれが組織のルールや目的に合致したものかどうかをチェックすること、さらに「承認」は、審査を経て上程された事案の実施を許可することをいいます。


    組織におけるすべての業務はこの3つの段階を経て実行されます。さらにその結果がどうであったのかを、最終権限者に「報告」することで、ある業務が完結します。これらは権限の4行使といわれます。権限の行使をこのフロー以外で行うことはありません。特定事項において上記の何れかの権限を有するものが責任をもち、それぞれの行為を行い、業務を遂行します。

 

組織は、すべての仕事を洗いざらい抽出するとともに、責任者を列挙し上記権限を誰が、何時、どのように、行使するのかを決定する必要があります。そして決めた権限の行使の形体を権限規制に取りまとめ、組織に開示することにより権限(=責任)を明確にすることが求められています。

 

権限を決定し開示、それを遵守させることが、組織運営を的確に行うための要諦です。なお、特定の人に依存する度合いが増えリスクが高い、権限が集中することで牽制が行われない、といった問題が発生します。

 

組織運営上の統制上、権限を委譲し、また分散させリスクをヘッジする仕組みをもつことも必要です。組織運営を設計するときの重要な視点の一つだと考えています。

 

整理すると、職員の成果を期待するためには、

  1. ガバナンス体系において戦略やアクションプランの立案を行い、
  2. 「職員がやるべきことをできる」体制をつくり、
  3. 適切な人が適切な権限を行使する

といったことが必要なことが分かりました。このことは医療に限らずすべての組織運営に求められるマネジメントの基本です。

 

ミーティングを経て、院長が上記マネジメントの仕組みづくりに着手する決定を行ったことはいうまでもありません。