よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

病院戦略の明確化が地域連携のポイント

地域連携のポイントは、病院戦略の明確化です。

以前から説明していますが、結局はどのような患者さんを地域で診ていくのかといった戦略がなければ、
こんな疾患の、こんな状況の患者さんを紹介して欲しい、ということが開示できません。地域連携室のスタッフが診療所を巡回して多くでてくることは、先生の経歴を見るだけで、患者さんを紹介することはできないというものです。

この場合には、それなりの資料をお持ちして、こんな医師がいますのでご紹介下さい、というプロモーションをしているわけですが、そうではなくて、どんな治療が得意で、何をしてきたのかといった治療の履歴や得意分野が明らかになることが地域連携の大前提であることを意味しています。

さらに、顔が見える、ということが必要で、さらに、どうしてもその病院に紹介しなければならない誘因すなわち、逆紹介を受けるといった、その病院から多くのメリットを享受しているということが与件として加わります。

したがって、患者さんの紹介をしたのに、返送してくれない。これからは紹介しない。患者さんを返して欲しいという医師の意見がありましたが、これなどは地域連携を推進しようというよりも、もっとも基本的な地域連携のルールを遵守していない、病院側の地域連携をあえて成立させまいとする、診療所の紹介誘因の芽を摘む事例です。

医療における理念や哲学をベースとして、経済原則をもとに成り立つ紹介、逆紹介といった関係を継続するためには、地域完結型医療を推進するうえで守らなければならないルールを守ることが必要であり、信義則というものがあることを忘れてはならないと考えます。

但し、よくよく分析をしてみると、地域完結型医療の重要性、地域完結型医療の必要性、紹介逆紹介の方法、ルールといったものを理解していない医師が病院側に多く存在することや、意図しておらず、そうした状況になっていることを、忙しさにかまけて、あえて積極的に解消しようとしていない医師がいることがわかりました。

病院の医師の教育や、明確な戦略としての地域完結型医療の打ち出しを病院トップが徹底的に行うことが必要であると考えます。
ここにすなわち、科別、医師別の得意、あるいは専門分野の明確な提示と、地域完結型医療を徹底するための方法を院内に周知するといった病院戦略の明確化が地域連携には不可欠である、ということが判ります。