よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

権限と責任

 

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 組織は人により構成されます。役割により、職位は管理職、監督職、一般職に分類されます。

 

病院であれば、理事長、院長や副院長、事務長や看護部長、診療支援部長といった者が管理者に該当します。その下位に師長や課長などの中間管理職(監督職)があり、一般職員が配置されるという図式です。

 

それぞれの階層は、病院の運営に対し、その目的や目標を達成するため責任をもち行動しなければなりません。組織構成員全員が組織の運営をそれぞれの役割として担っています。

 

役割を与えられた者は、その役割を果たす責任を負わなければなりません。ここで役割を規定するものの一つを権限といいます。

 

権限とは、個人がその立場でもつ権利・権力の範囲をいいます。また、果たすべき責任とは、立場上、当然負わなければならない任務や義務をいいます。権限を得るときには同時に責任をちます。権限を行使するためには責任を伴う、ということの理解が必要ですね。

 

病院職員は、自分がどのような権限と責任をもつのかについて知り、日々の業務を適切に行うことが求められています。

 

権限は、起案、審査、承認、(実施)、報告という行為に区分されます。

 

「起案」は何かを提案すること、お伺いを立てること、そして「審査」はそれが組織のルールや目的に合致したものかどうかをチェックすること、さらに「承認」は、審査を経て上程された事案の実施を許可することをいいます。

 

組織におけるすべての業務はこの3つの段階を経て実行されます。さらにその結果がどうであったのかを、最終権限者に「報告」することで、ある業務が完結します。報告を受ける権限ですね。

 

権限の行使をこのフロー以外で行うことはありません。特定事項において上記の何れかの権限を有するものが責任をもち、それぞれの行為を行い、業務を遂行します。

 

組織は、すべての仕事を洗いざらい抽出するとともに、責任者を列挙し、上記権限を誰が、いつ、どこで、どのように行使するのかを決定する必要があります。

 

そして決めた権限の行使の形態を権限規制に取りまとめ、組織に開示することにより権限(=責任)を明確にします。

 

権限を決定し開示、それを遵守させることが組織運営を的確に行うための要諦です。

 

実際には、権限や責任が曖昧ではあっても、実務で慣習化した不文律で動いていることが多くあります。上司だからその権限を持つと推測して指示に従うこともあります。これだと組織が意図していない権限行使が行われる可能性が高く危険です。

 

また、例え権限と責任を文章(規程)化した後、そ毎回見ないで行動するケースも多くあります。途中で規程を変えることもあり、慣習を正しいとするのも問題です。

 

しかし、規程があれば、現実が規程に合っているか、また規程に書かれている内容が現実に合っているのかどうかについて直ちに検証作業を行えるので、規程があることは有効です。

 

権限規程をつくる→業務を行う→時々検証する→(現実にそぐわなければ)改定する、というながれをつくり、そのサイクルを繰り返すと、組織の意図した権限行使、組織運営が行われると考えています。

 

当たり前の話しではありますが、組織目標を決め、役割分担を行いながら成果を挙げるのが組織維持・発展の基本的な活動とすれば、組織構成員が役割に応じた権限と責任をもち仕事を進めなければならないことは自明の理です。

 

地味なテーマではありますが、リスクアプローチから業務フローや内部統制を見直すなかでの権限規程は、実務ではとても大事なものだと私は考えています。このことは、医療のみならず全ての事業において検討されるべき事項です。

 

曖昧な業務フローや(権限が的確に行使されない)内部統制である組織は、不効率だし事故も起こり易いことが証明されています。

 

あらゆる組織は、屋上屋を重ねることなく必要十分な権限課程を作成し、規律をもって円滑な業務が行えるよう努力し続けなければなりません。