会計には財務会計と管理会計があります。
財務会計は報告のための会計をいいます。納税や銀行提出、関係監督官庁や理事会等への報告がそれらです。
管理会計は、文字通り意思決定に役立つ管理を行うための会計をいい、指標管理や月次会計、部署別・診療科別損益計算や疾病別原価計算、投資意思決定のための投資経済計算(特殊原価調査)等があります。
財務会計は病院会計準則に従い作成されますが、残念ながらそこからは多くの経営情報を得られません。
収益と費用、利益の発生状況や資産や負債、資本の状況を把握することはできても、毎月発生している問題を網羅的に拾うことはできないのです。
そこで管理会計の登場です。管理会計から多くの経営情報を得て成果を挙げることができるからです。
しかし、例えば月次決算の閉めが2ヶ月後の環境で部署別・診療科損益計算を行ったとしても、経営会議で2ヶ月前の問題点を発見し、その改善策を練っているのでは修正が間に合わないことは誰でもわかります。
増患の指標管理でいえば、診療科別、コマ別、医師別、紹介経路別外来患者数やオーダー件数、入院経路別入院数、紹介元別紹介件数、病棟別病床稼働率や平均在院日数、オペ件数や、手術室稼働率、時間外労働、有給休暇取得率、インシデント・アクシデント種別件数等(他にも膨大にあります!)が、タイムリーに計算そして分析されなければ適切な意思決定と行動は行えません。
管理会計を迅速に経営に活かすためには、以下の要件が必要です。
(1)何のために管理会計を使うのか(何を解決したいのか)必要性を理解する
(2)正確かつ迅速にデータを出す体制をつくる
(3)数値を出しただけで満足せず、適切なデータ分析から意思決定を行い、必ず実行につなげる
これらができなければ、暗闇で経営を行っているのと近い状況におかれます。
毎日ただ懸命に仕事をする、現場で日々発生している小さな問題解決をその場で行うことで日々が終わってしまうのでは、これからの時代を乗り越えていくことはできません。
現状把握を行い、到達点との構造的なギャップを即座に認識し、そのギャップを埋めるための解決策を明らかにする。そしてどう行動すればよいのかを計画に落とし込み実行することが正しい病院経営だからです。
何をしたいのか、どこに到達したいのかを明確にしたうえで、到達点辿りつくために1年間、1ヶ月、毎週、毎日どのように行動すればよいかを決め、決めたことを実践しなければなりません。管理会計の有効な活用が望まれます。