よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

前向きな企業(組織)文化と後ろ向きの企業(組織)文化

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 企業(組織)文化とは「企業や従業員が意識的・無意識的に共有する独自の価値観や規範、ルールなどの行動原理となる価値観」をいいます。企業全体なのか部署やチームのそれをいうのかにより、企業文化や組織文化というようです。

 

 企業文化は、外部からの影響を受け、徐々に形成され変化するものと言われていますが、最終的には、その企業の戦略や政策により決定されると、私は考えています。

 

例えば個人主義かチームワークか、失敗をマイナスとするのか許容するのか、年功序列か成果主義か、集団主義か個人を尊重するのか、といったことは当該企業の採用する制度や規程により、あるいはリーダの考え方により大きく影響を受けるからです。

 

企業が年功序列制度を採用し、個人の成果を評価する制度がないのに、うちの会社は成果主義で、成果をベースに評価するし、そのために個人が力を発揮できるよう、皆がサポートする組織です、という文化をつくるのは困難です。

ある部署がそう行動しても、結局企業としての個人の成果を評価する仕組みがなければ、当該部署の評価は処遇に結びつきません。

当該部署のなかで報酬に関わらず、個人の成果を認め、個人のやる気を醸成する、ということは可能かもしれませんが、企業のなかではそれが重視されないのです。

そのような活動が、組織内で成果主義を推進するリーダーの去就により変化しないとは言えず、継続して文化にまで昇華されるかどうかは疑問です。

 

ただし、企業のトップが環境変化をみて、当社は年功序列を排し、軋轢の生まれない成果主義を取り入れようと考えれば、制度を変えて新しい文化をつくり、自分の思いを遂げることは可能です。個人の成果を評価に反映しやる気になってもらおうと政策を変え、活気のある企業文化をつくれるのです。外部の影響を受けたものの、自分なりに意思決定し政策化するのです(そもそも企業戦略や政策で、まったく外部の影響を受けないものはありませんよね)。  

なお、部署によっては、成果主義を導入しても、年功序列を念頭においた評価を行うリーダーもいるので、この成果主義の制度を導入したこのケースでは、「どちらかというと成果主義を重んじる文化」という表現になります。

 

さて、さきほどの失敗をマイナスとするのか許容するのか、でいうと3M 社の企業文化が有名です。いくつかあるもののうち、行動の重視、自主性の奨励と失敗の許容が特徴的です。仕事の一部の時間を好きな(やりたいと思う)製品開発にあて、チャレンジに失敗しても誰も咎めない、というものです。研究開発を重んじる同社の経営者が決めた制度のなかで企業文化が発展してきたという証左です。自然に生まれたのではありません(なお、同社はチャレンジする企業文化に支えられ発展してきたのは言うまでもありません)。

 

このように企業文化や組織文化は、経営者の考えや戦略、政策により影響を受け、それらにより形成されることが分かります。

 

企業(組織)文化は戦略と同様に重要なものですが、企業文化も結局はリーダーが戦略や政策により方向を決め、制度をつくり、それを継承して初めて形成されるものであることが分かります。

さの企業のなかで経験を積んだ社員の多くが、企業文化を行動様式のなかに取り込み、実践することでそれらがより濃いものに発展するのだと考えています。

繰り返しますが企業文化は決して、気付いたらできあがっていたという類のものではないことを知る必要があります。

 

なお、組織において共通の認識とされる、独自の規則や価値観などを組織風土と言います。風土は企業の業種により方向づけられると思います。

 

私が監査法人で監査をしていた銀行は、保守的で堅実な風土でした。その後に勤務した信託銀行も同様の傾向がありました。銀行業の仕事の特性が風土をつくっていたと理解できます。

 

しかし、信託銀行には不動産や信託、コンサル部門があり、この領域の部署はどちらかというと銀行のベースの風土がありながら、オープンで創造的な業務を行っており少し毛色の違う風土がありました。それも仕事の性格に起因するものだと思います。

 

こうして考えると監査対象であったメーカーはメーカーの、また商社は商社なりに、建設は建設として、通信は官庁の影響もあり、それぞれの業種による風土ができあがっていたという印象です(もちろん、それぞれの企業の文化は面白いほど違いましたが)。

 

 いずれにしても企業のトップ(もちろん病院のトップも同様ですが)は、企業文化を重視し、社員が心からやる気になり力を発揮するためには、どのような前向きな(社員を活かす)企業(組織)文化が有効なのか、そのためにはどのような戦略、政策、そして制度やルールを整備していけばよいのかを考え続けていく必要があります。

 

 後ろ向きの文化をつくれば、職員が離反し組織が衰退することが明らかだからです。