業務改善とは、文字通り「業務の改善を行うこと」をいいます。
ここで、業務とは日頃の仕事、改善とは、簡単にいえば、よりうまく、よりはやく、より安く仕事ができるようにすることです。経営資源を一定として成果を高める、すなわち生産性向上を目指していることが分かります。
改善には4種類あります。自分で変えられること、自部署で変えられること、他部署の協力がなければ変えられないこと、組織が決定しなければ変えられないことがそれらです。
さて、今の仕事は完璧ではない、と考えるところから改善は始まります。
同じ時間で仕事の質を上げるためにはどこに留意して仕事をすればいのか、同じことをより短い時間でにはどうすればよいのか、コストを下げるための方法はあるかという、着眼を持たなければなりません。
常にその視点をもち仕事ができれば、生産性が向上し、組織や自分に時間が生まれます。さらに評価され、利益貢献ができるし、何よりも自分が成長し、組織貢献できることは社会人のプライドだと教える必要があります。
但し、経験上、業務改善提案は制度化しなければ継続できません。
・一定数の提案を行うことは仕事であると決める
・職員が提案できるように仕組みをつくる
・提案提出を啓蒙する
・組織がしっかりと評価する
・組織が改善に介入し、積極的に改善を推進する
・各部署のリーダーが率先して提案活動を行う
・適切な改善をした者に報奨を与える
・改善提案を管理する仕組みづくり
といった取り組みが必要です。
方向→啓蒙→教育→評価→介入→報奨というプロセスを構築しなければならないのです。
業務改善提案制度には、次の特徴があります。
・全職員が参加できる創造活動である
・当初は無理やりでも、自分で考え行動する癖をつける機会
・提案者は制度にのって自らの貢献をアピールできる
・誰かの提案は、ベンチマークによる他部署への影響を与える
・部署間コンフリクトを解決する機会
・自分で何かを改善し評価されることで達成感を得られる
組織は、改善提案を制度を整備し機能させることに注力しなければ、組織の活力を引き出せないと考えています。
ところで、改善提案活動は職員により行われますが、私は、職員の仕事に対す姿勢、もっといえば職員の生き方により活動の質や量が大きく影響を受けると考えています。 生き方や価値観が改善提案を受け入れなければ、制度に魂は入りません。一人ひとりの生き方に切り込み、提案を促す必要があります。
場面場面で個人の考え方は変わる可能性がありますが、分かりやすいように私は人の生き方を4類型に区分しています。
1類型は「与えられた仕事をすればよい」という生き方(与えられた仕事ができない人については別途の対応が必要ですが)、2類型は「自分が仕事を通じて成長したいが余り他人との関係を持ちたくない」、3類型は「自分が仕事を通じて成長したいし他人とも積極的に関係を持ちたい」、そして4類型は「自分が成長するプロセスにおいて、自分がやりたい事を組織を通じて実現したい」というものです。
お分かりのように1類型では何かを変えようという動機がないため、提案活動は行われないと考えます。また、2類型では、チーム内やいわんや自部署以外のメンバーとのコミュニケーションがうまく進まないため、改善提案のうち自分でできる階善に制限される可能性があります。それほどは多くならない可能性があります。3類型がノーマルな社会人モデルであり、提案制度が機能すればしっかりとした提案が生まれ、成果もあがってくると考えます。
この領域にどのように職員を引き上げていくのか、そのための文化・風土、職場環境をつくり上げていく必要があります。
そして4類型ですが、いわゆる、やり手の人です。
実際に、こういう職員がいるクライアントがあります。
「現状の課題はこれだ」「それを改善することでオペ1件当たり40分の時間節約ができるし、熟練がいらない」「年間6,500件のオペがあるので、年間4000時間以上の節約と人員不足解消」そのためには大きな投資をするが2年で回収し他の数年間は大きな利益」といった提案をしてきます。
購買の責任者である彼はは、投資のない案件も含め、有用な提案を少なくとも年数回行います。彼は自己実現のために、とにかく組織改革をしたい、そのための案件を目を皿のようにして発見します。
高い創造性や問題解決能力をもった職員であり、このような人材が多数いる同院は長い間成長し続けてきています。
同じような医療機関は数多くあると思いますが、最終的にはこんな職員が多く育成されることを、改善提案制度の目的としています。
なお、ここで提案活動は職員の生き方に依存するという説明をしており、仕事の姿勢に依存するとしていないのは、仕事には本人の生き方が色濃く反映すると考えているからです。
前向きな挑戦を生き方としている人が、「与えられた仕事をすればよい」という思いで仕事をするはずがありません。
仮にそうであれば、その嫌な仕事を離れられない事情があるはずで説明がつかないのです。
生き方と仕事の取組みは他の制約がない限りイコールであると考えています。他の制約は社会情勢や特殊な事情、短期的には組織の状況に影響を受けます。
いずれにしても、1類型、2類型の職員には仕事への取組み姿勢をどのように変えていてもらうのか、よって社会人としてどう生きるのかを考える機会を提供するとともに、リーダーが、職員としてのあるべき生き方を示せるよう行動しなければならないと考えています。