PDCAは、普遍的な成果獲得のためのフレームワークです。
各組織は大小さまざまな目標を設定し、PDCAサイクルを回します。活動の結果として成果を獲得し、また次の目標を設定し、というように組織は成長していくのです。
もちろん、個人においても課題解決のためにPDCAを回す、ということを意識下、無意識下で行う人も多くいます。
しかし、当たり前はありますが、PDCAは成功を求めるフレームワークの一つであり、これだけで組織マネジメントを行うことはできません。
やろうと決めた何かを徹底したり、組織運営を行いながら得られたナレッジを組織の資産とする仕組みづくりを行うときに、留意しておかなければならないことがあります。
組織運営における実施必要事項の段階(フェーズ)を捉えることで、組織を挙げて最適行動をとるマネジメントを行うための枠組みが必要です。
導入、定着、機能、進化のフレームワークがそれらです。これを、導入する(Introduce)、定着させる(Settle)、機能させる(Make work)、そして進化させる(Evolve)の頭文字を拾い、ISME(イズミー)と言っています。
何かを始めたときに、始めたけれどもうまくいかない。なので次はこれ。これでもダメなら、次はこれ、という中途半端な動きをしている組織は求める成果を永遠に得られません。
PDCAサイクルを回しながら、物事を進めるプロセスを管理するとしても、成果を必ず得るために、常に実施必要事項のフェーズ管理を行い、決めたことは機能させる、さらに、よりよいものに進化させるという取り組みを行わなければならないのです。
そのために、このフレームワークを使います。
ここで導入とは、何かに取り組み始めたフェーズです。戦略実行のため方法や仕組みを考え、さまざまな機会を捉え、組織にあることの周知を行う段階を示しています。
例えば新しい制度を導入するときに、その制度の説明会を開き質問を受付け、一定程度納得してもらう活動を行ったのち、実際に運用が始まります。
大げさな話ではなく、通達で、こんなルールにします、といった対応で済むこともあるし、現場レベルで、今度からこんなやり方にしましょう、と話し合い決めることもあります。
物事の質や量に関わらず、何かを組織内で始めるとき、いまは導入期にある、だからこれを徹底しよういう意識をもつことが大切です。
次に定着です。定着は、決めたことが組織内で認知され遵守されてきたとか、行動が変容してきた、業務が変わり始めた、コミュニケーションが活発になった、〇〇が増えた、あるいは減ってきたね、という段階です。
100%求められているものは100%が到達点ですし、できるだけそうなって欲しいというものは、おおよそのスケールで評価が行われることになります。
定性的ですがマネジメントのなかには、定性から評価され定量での検証が追認的に行われるものもあり、その領域も含むという意味で説明しています。
機能は、進めようとしている事項が目的としているものや成果が得られるようになること、結果がでることを意味しています。
何かを導入し、工夫をしながら定着させ、さらに改善を行い、やろうとしてきたことを達成する、という状態を以て、機能する、機能させると捉えるのです。
卑近な例で考えてみましょう。
働き方改革の柱として、あるいは新型新型コロナウイルス感染症をきっかけとして導入した組織が話題になっていますが、テレワーク(ICTを活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方)の実施必要事項のフェーズ管理をみると分かりやすいと思います。
・当社はテレワークを積極的に、もしくはいたしかたなく仕事に取り入れた
・さまざまな課題がみえてきた
・補完的に〇〇のやり方も行おうと決めた
・やり方も〇〇に変えた
・実際に工夫を重ね、状況に応じた対応を行いながら、日常業務の多くでテレワークを進めてみた
・組織構成員の30%から始め、摘要可能範囲の最大値に近い50%までテレワークに変えることができた
・やっとテレワークが定着してきた
・十二分とはいかないものの、仕事の成果が従来のやり方と比較して遜色ないことが見えてきた
・ケースによれば出社するよりも生産性が挙がることが分かった
・テレワークは初期の目的を達成し機能しているね
というストーリーです。
何かを行うときに、組織構成員すべて、とりわけリーダーは実施必要事項を意識し、組織におけるそれらの運用状況が、いまどのフェーズにあるのかを見極めたうえで、行なうべき何かへのコントロールを行います。
判断を間違えると、次のフェーズに進めず成果を得づらくなるからです。
導入だけで終わり定着させることを怠れば必要実施事項は失敗に終わります。このレベルで終わってしまった取り組みがいかに多いことか。
新規事業も含め、新しいことを進めるとき導入で終わっていないか、いつまでに定着させるのか、定着しない原因は何か、本当に機能しているのか、機能していないとすればどこに問題が隠されているのかを発見し、都度手を打っていかなければなりません。
導入、定着、機能のフェーズを意識し、その段階に合致した取り組みを行うこと、導入したものが機能するまで徹底的に取り組むガバナンスが必要になります。
そして、さらに進化のフェーズに辿り着けるのかを考えなければなりません。
目的とした仕組みづくりを機能させ成果を享受したうえで、そこまでのプロセスで経験で得た知見や学習して得られたナレッジを、さらに高次に設定した目標達成のために活用するフェーズです。
当初の目的を凌駕して、新たな目的を得るための取り組みを行い、成果を得ることが、「進歩する」ということです。
当初の取り組みを深堀することもあるし、別の追加的な仕組みづくりを行うこともあります。
テレワークの例でいえば、
・ルールを追加してより働き易い環境を提供すること
・効果的なあシステムや機器を採用しテレワークの質を向上させること
・個々の自宅に組み立て型テレワークボックスを設置し働く空間設備を用意すること
・スモールサテライトオフィスを多数設置し、近隣に居住する者が交通機関を使わず集まり、縦ではなく組織横断的チームでのワークを行うこと
などが進化に該当します。
当初の目的を超えて、明らかに新しい価値創造を行えたフェーズです。
進化させるところまで誘導することができて、やっと該当する実施必要事項に対するマネジメントがひと段落すると考えています。
もちろん、進化させたことを定着フェーズに戻して、定着→機能→進化→定着→機能…というISMEサイクルを回し続けることになるのはいうまでもありません。
成果をあげるためにどのようなマネジメントを行えばよいのかを常に振り返る。
そのきっかけとしての、成果獲得(及び継続)のためのフレームワークであるISME(イズミー)、すなわち、導入する(Introduce)、定着させる(Settle)、機能させる(make work)、そして進化させる(evolve)サイクルを忘れてはならないと考えています。
リーダーは、何かを始めたとき「成し遂げるのは誰か?」と問い続けなければなりません。
そして答えます。「それは自分です(It is me!)(ISME)」