よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

インバウンド戦略について

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インバウンド、アウトバウンドという言葉があります。インバウンドは「入ってくる、内向きの」という意味であり、これに対してアウトバウンドは「出ていく、外向きの」という意味です。

医療で言えばインバウンド、アウトバウンドとは、患者を外から日本に連れてくることをインバウンド、そして経産省などが進める医療、病院まるごと輸出をアウトバウンドとしています。

インバウンドは、人口が減る日本において、海外の患者に医療を提供する機会という意味で、医療の将来にとり重要な意味をもつ戦略の一つだと考えられています。

 

 首相官邸 健康・医療戦略推進本部 第1回 インバウンド・ワーキンググループでは、以下のようにインバウンド、アウトバウンドを整理しています。

(1)医療の国際展開は、日本再興戦略の柱の一つである

(2)健康・医療戦略推進本部の下に設けられた「医療国際展開タスクフォース」が、日本の医療技術・サービスを海外へ展開するいわゆるアウトバウンドと、日本の医療機関に外国からの渡航受診を受け入れるインバ ウンドを車の両輪として推進

(3)相手国の医療の質の向上に貢献するアウトバウンドをテーマとする一方で、まだ、現地での対応が難しい医療に関しては日本で受診する機会を提供することがインバウンドの目的

(4)日本にとっては、国際的な医療協力を進めるとともに、国外からの医療サービス(健診や治療・検診の受診者を受け入れることで、医療分野における技術や資本の蓄積も期待される

(5)医療の質・サ ービスの更なる向上にも繋がる好循環が生まれる可能性もある

 

また、経産省は、インバウンドの具体的な対応として、病院のための外国人受け入れ参考書において、外国人受け入れ業務、リスクの回避、価格の検討、資料・書式フォーマットについて説明し、実際の受け入れを円滑に行えるよう指導しています。

 

実際の手続きとしては、日本政府は既に医療滞在ビザの発給を開始していますが、経済産業省と観光庁が審査し登録された事業者が外国人患者の身元保証を行います。

 

登録事業者の身元保証が医療滞在ビザの発給の条件で、ビザの期間は、最長6カ月、数次ビザも可能となっていますが、治療の状況によって有効期限を3年まで延ばせることになっています。

 

まだ、日本で検診や治療を受ける外国人患者は、数万人ですが、韓国やタイと比較するとインバウンド戦略は緒に就いたばかりです。

 

大学病院の教授と話しをすると、語学がネックになることやリスクに対する体制が整備されていないので、受け入れが難しいという結論です。

大学病院としての戦略として成立していないことが分かります。

 

日本の医療制度が変化していくなかで、インバウンド戦略は政府がいう可能性をもっています。可能性のある病院における積極的な対応が望まれます。

 

             (病院・診療所マネジメント羅針盤寄稿平成2810月)