よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

現場をより可視化する部門別損益計算

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 財務会計における損益計算は、医療機関単位でこれを行います。もしくは本院だけではなく、サテライトがあったり、施設があれば事業所別に行う法人も多くあります。

 しかし、病院であればさらに組織を外来の各科や、各病棟、診療科、診療支援部、事務部などの部署別(部門別)に区分し、損益計算を行わなければ、どの部署が利益を出しているのか、損失を出しているのかを管理することができません。また、どこに不効率や無駄があるのか分からないのです。

 

 まだそれほどは一般化していませんが、いくつかの病院では、部門別損益計算を導入が行われてきました。部門別損益計算は文字通り、部門別の損益を把握する手法です。

 

 部門は、直接部門、間接部門、補助分門に区分されます。

 

 ここで直接部門は外来や病棟など、直接的に収益を得る部門であり、間接部門は間接的に収益を得る部門、すなわち直接部門における医師のオーダーにより収益をあげる診療支援部、すなわち検査科や放射線科、栄養課など技術部が中心(手術室は医師看護師が運営しますが、ここに含まれます)となる区分です。

 

 また補助部門は収益を得ないコストセンターであり、総務や医事、営繕や購買、連携室など直接部門や間接部門を支援することを業としています。補助部門がなければ病院は本来行うべき医療を行うことが困難です。

 なお、各部門が利益を出すには、プロフィットセンターで部門収益を上げるか、各部門で独自に発生する直接費用を削減するしかありません。もちろん、コストセンターのコストを削減することも選択肢ですが、組織運営が脆弱にならないよう、極端に対応することは無理があります。

 

 部門別の損益の計算は、次の3つの段階により行われます。

(第一段階)

 各部門の損益集計を行うもので、発生した収益や費用が、どこの部署に帰属するのかをみるものです。ここでは、従来全体で集計していた収益費用を、発生部署別に集計作業を行います(一次損益)。

 

(第二段階)

 補助部門は直接部門と間接部門にサービスを提供します。したがって役務提供を受けた知直接部門と間接部門に予め定めた比率で、補助部門のコストを負担してもらう計算を行います(二次損益)。

 

(第三段階)

 間接部門の損益を負担した各補助部門の損益を、最終的に直接部門に負担してもらう計算を行います。結果として、この段階を終了すると、直接部門では、直接部門で直接的に発生した損益の他に、間接部門の費用と補助部門の費用が付加された損益が配賦された損益が計算されます(三次損益)。

 

 適切な階梯式配賦法をつかった上で、このようなプロセスを経て、各部門の各部署の一次損益はいくらか、二次損益は、また三次損益はどのようになっているのかが判り、どこに損益に影響する要素があるのかが判ります。

 また、最終的に直接部門の各部署損益が判明し、各部署の通過患者数で除すと、患者一人当たりの損益が把握できます。部門別損益計算により、さまざまな情報を得て、業務改革につなげることができます。

 我々は過去15年前からこの分野や発展して患者一人当たりの損益を出す、患者別疾病別原価計算への対応を行なってきましたが、様々な課題があり日本ではなかなか管理会計が定着しません。

 多くの病院が部門別損益計算などの導入を行い、多様な情報を得て、よりよい医療を行えることを期待しています。