よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

クリティカルパスというもの

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 今日は、一般の方には少し専門的な話です。この記事は、2013年にある媒体に投稿した記事ですが、内容は、今でも考え方は変わっていません。

 

   ただ、爾後にメルボルンの病院視察したとき、現地で働く日本人看護師のNさんが、今はオペ後3日で退院するので、パスをゆっくり使うという状況ではない、との話をされていました。医療は機能強化し、どんどん進化しているのだと思います。

 

   そうはいっても日本では、依然急性期を軸としてパスを使った医療の質向上が行われているし、パスの考え方は、医療に限らず、業務を標準化し、実際との乖離を分析し改善する、ということからしてマネジメントの基本です。

 業務を可視化し、標準化し、さらに改善し続けることにより、質を上げ、生産性を向上させることができます。まさに、働き方改革の軸の一つだと思います。ということで、どのようなことにも応用できると考えたので、アップします。

 

「クリティカルパス(以下パス)(注1)は、医療における診療計画表です。

 1980年代に米国の医療制度改革があったときに、看護師のカレン・ザンダーが工場の工程表を模して、最も重要(クリティカル)な経路(パス)(=早く治療が完了する計画)として考案したといわれています。

 

 パスは診療を標準化し、診療活動のPDCAを行うとともに在院日数を短縮するツール(道具)として今や広く世界中に展開されています。

 

 パスから逸脱した医療行為は、マイナスの評価をされることがあるとともに、パス通りに治療を行なえば責任を追及されないといったことから、米国ではパスを活用する医療が進捗してきた経緯があります。

 

 日本でも、多くの研究が行われ、限られた在院日数のなかで一定の医療の質を担保するために現場で活用されています。

 

 また、単なる標準化ツール、あるいはコスト削減という目的だけではなく、多職種のスタッフ全員で治療のスケジュール管理ができることから、チーム医療の象徴ともなっています。パス通りに治療が行われることで、期待した在院日数での退院ができるようになります。

 但し、患者さんには個体差があるし、また種々の理由から退院が日程通りに進まないこともあり、それらは逸脱(負のバリアンス)として管理され、原因分析(注2)が行われ改善が行われます。

 

 なお、早期に退院したケースでも逸脱(正のバリアンス)となり、当該ケースを材料に、より早期に治療を完了させるために、どこまでの在院日数を短縮できるかが検討され、パスがリメイクされます。

 ここにパスは業務改革のツールでもあるということができます。

 

 外科系のパスは作成や適用が容易であるのに対し、内科系とりわけ高齢者に対する疾患の治療はなかなかパス化しづらいといわれます。しかし一時期から地域連携においても大腿骨頸部骨折や脳卒中のパスが作成されるなど、あらゆる場面でパスが活用されるようになってきました。

 

 日本の医療は機能分化と在院日数短縮により医療制度改革が進捗していますが、パスをうまく活用し、よりよい医療を行なう病院こそが、時代を乗り越え次に進んでいけると私は考えます」

 

(注1)日本ではクリニカルパスと呼ばれることが多いようです

(注2)医療従事者要因、システム要因、患者要因、社会的要因の4つが基本となり、さらに詳細に要因分析が実施されます