よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

たな卸の実務

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会計的にいうと、たな卸は在庫の実在性を確定し、貸借対照表の棚卸資産の簿価を確定する行為です。しかし、医療機関にとってみれば、それは薬剤や医療材料、消耗品の管理の巧拙をみることであり、またキャッシュがいかに無駄になっているのかを確認する機会でもあります。

 

そもそも棚卸資産は収益獲得を行うための材料であり、欠かすことはできないものの、できるだけ発注量を少なく、在庫を少なく、使うときに使うだけ用意されていることが理想です。

 

できれば在庫をもちたくない、というのが本音だと思います。

トヨタで有名になったJIT(ジャストインタイム=かんばん方式)はまさに自社では在庫をもたず、使うときに在庫を使い、使ったときに費用となるという方法であり、在庫管理の究極であるといわれています。

 

もちろん、病院でも一部のインプラントやカテーテル等には、消化仕入れが行われていて、滅菌袋をやぶりタグをとった瞬間に仕入になる方法も採用されています。普段は預かり在庫として病院ではたな卸の対象から除外されるものです。SPD(サプライプロセッシングアンドディストリビュ―ティング=物流管理)を入れている病院で、在庫は業者負担というところもあります。

 

しかし、多くの在庫は、誤解を恐れずにいえば、職員の思うがままに仕入れられ、管理され、ムダが発生し、キャッシュが寝る(在庫は現金と同じという考えから来ています)可能性があります。

 

基準在庫を決め、これ以上はもたないとか、発注から納品までのリードタイムをみて使用量からの在庫量を決める(経済発注点分析)を行う、といったことが行われなければなりません。

その場合、現場のスタッフに対する教育や、経費に対する意識を徹底する必要があります。

 

日常から在庫とは何か、どんな意味がある資産なのか、どう使えばよいのかを考えて、大切に在庫を取り扱い、結果、どのような管理がなされているのかを確認する手段として、たな卸を行うことができれば、病院の経営はより良いものになる、と考えています。