よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

キャッシュフローマネジメントを行う

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シンガポール・ガーデンズバイザベイ・クラウド・フォレスト


 キャッシュフローとは、現金の流れです。

 営業から生まれる利益を源泉としたキャッシュフローを営業キャッシュフローといいます。営業活動により、いくらキャッシュを残したかを測定します。

 

 これに投融資をするための投資キャッシュフロー、資金の貸し借り(出入り)を行うための財務キャッシュフローがあり、3つのキャッシュフローを以て一定期間の現金がどのように増減したのかを明らかにするとともに、現金を適切に管理することをキャッシュフローマネジメントと言っています。

 

 キャッシュフローマネジメントでは、3つの現金増減の源泉を管理し、営業キャッシュフローの範囲で投資をしよう、借入金をできるだけ返そうという政策をとることや、稼いだキャッシュにプラスして不足する資金は借入をしても、未来のために投資をして利益を確保していこう、といった政策をとることを管理することになります。

 

 さて、「会計は意見であり、現金は事実である」という言葉があります。

これは、利益がでていても現金があるとは限らないし、利益がでていても、現金があることがある、という意味です。

 

 例えば。医療収益が計上され利益がでても、保険部分の医業未収金が2ヶ月後に回収されなければ現金は増えません。また、何かしらの費用を計上して利益が減少しても未払金を支払わなければ現金は減りません。

 

 在庫を増やし期末在庫が大きくなると、売上原価は小さくなり、利益は増えますが、在庫の分は現金が減ります。減価償却費は費用として計上されますが、有形固定資産を取得したときに現金を支払っているので減価償却費を計上するときには、支出を伴いません。貸倒れ当金なども費用と現金が同時に動かない事例です。

 

 ということで、会計処理により利益は異なることはあるが、現金はどのような処理をしても残高は影響を受けない。だから、現金をよく管理していきましょう、ということを言っているのです。

 

 最近、医療機関はCOVID-19により大きな影響を受けています。診療所や病院の外来は患者が減り、入院のための連携にも障害が出ており、医療機関の収益は落ちています。とりわけ民間医療機関は、どこまで続くかわからない状況のもと、とても厳しい医療環境を迎えているのです。

 

 さまざまな予測を考慮して損益を予想し、それに合せてキャッシュフローの減少を推定すること。そして減少したキャッシュの不足分を得るための患者視点の現業活性化、患者にメリットのある新規事業をどの行うかの戦略立案を行い、また一時的な資金調達をも含め、バランスのとれたキャッシュを確保するといった、将来予測に軸足を置いた、シミュレーションも含めたキャッシュフローマネジメントを行わなければなりません。

 

 景気が悪化して税収が減り、日本の財政が益々ひっ迫すると容易に予測できるなか、診療報酬が抑制されることは明らかです。これからの時代を迎え撃つために、キャッシュフローマネジメントを行い、合理的に行動していく必要があります。