よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

業績評価を見直そう

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 報酬に関する評価には大きく2つのものがあります。

 ひとつは賞与支給のため、業績を評価するための業績評価、そして昇給昇格昇進の基礎となる人事考課です。

 前者は予め設定した組織目標や個人目標が達成できたかどうかを基礎として評価するものであり、また後者は仕事に対する姿勢や態度を評価する情意考課、本人に求められる仕事に対する能力を保有するかどうかを評価する能力考課、そして年二回行われる賞与のための業績評価2回の集計を評価する業績考課により構成されています。

 

 今回は業績評価をどのように行っていくのかを説明します。

 業績評価の対象となる業績は、組織が設定した目標を達成できたかどうかにより決定されます。原則として目標管理制度が導入されていることが前提となります。

 

 経営方針から組織全体の目標、各部署の目標、そして個人の目標が設定され、半期に一度達成できているかどうかを評価し、賞与支給の基礎とします。

 

 目標管理制度を導入していない、導入しているが部署別にのみ利用している、個人レベルまで目標を落とし込み年間の活動の柱の一つとしている、などさまざまな状況があります。

 

 一般的には個人レベルまで目標を設定し評価することができていない組織や、目標を定量化(数値化)できないていないことが多く、本当の意味で業績評価を行っている組織は少数派ではないでしょうか。

 

 目標管理制度の代わりにバランストスコアカードを導入している病院もあります。

 

 バランストスコアカードは、財務の視点と非財務の視点に区分して目標を設定し、後者をさらに顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点と分け、多様な目標達成を行います。

 

 現状、目標管理が導入できない、導入できるが意味のないと考える多くの病院では、賞与の査定に業績評価の代わりに、人事考課でいう情意考課を行っている病院があります。

 

    被評価者のやる気や仕事の姿勢や態度全により上司が部下の評価を行い、賞与に差をつけるといった方法が採用されています。

 

 意味がまったくないわけではありませんが、情意考課を業績評価に使うのは危険です。

 

 頑張っている風の人が仕事ができていなかったり、そうではない人が実績を挙げていることが把握できないからです。

 

 主観的になりがちな評価では適正な判断ができません。好き嫌い、印象、タイミング、自分や他人との比較、性差、よくわからいために中心化しがちなど、様々な問題が提起されています。

 

 客観的な評価が必要です。

 

 物事は、ほぼ全て定量化できます。%、個数、件数、時間、人数、回数、金額、枚数等々がそれらです。

 

 どのような職種においても現状を是とせず定量目標を設定、役割化して活動することは可能です。

 

 いずれにしても評価制度の課題は、公平公正な評価を行い、組織に必要な人材像を示し、そこに向って努力する職員をつくれるかどうかにあります。

 

 できるだけ多くの意味のある(これ大事です)指標があり、到達点や役割の設定が行われていることが有効です。  

 

 処遇に差をつけることだけではなく、本人の課題を鮮明にすることが、評価の大きなテーマということを理解すれば、手間をかけても一人ひとりをよく見るための評価基準が用意される必要があるのです。

 

 なお、評価する側も評価が多様となることで、大きく成長できます。人を育てることの喜びを人生の生きる糧にできることは、人として価値のあることです。

 

 機会提供は組織が行っていくものであり、部下育成を優れたリーダーだけの個人的な楽しみにしてはなりません。

 

 個人別の評価の結果、本人の教育課題を発見するためにも業績評価を正しく行うことが必要です。マネジメントサイドは、業績評価本来のあり方を学習しなければなりません。