よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

日本人とサムティベート病院

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サムティベート病院 日本医療センター

 アジア各国の病院設備は日本の病院と遜色ない病院が多く、とりわけフィリピンではファンドや病院管理会社の保有する病院、また、タイやマレーシア、シンガポールでは民間の株式会社病院が、高いレベルの医療で、他国の重篤な患者の受け入れを行い、国レベルではなく地域レベで成果をあげています。

 

 それぞれの病院の医師は米国やヨーロッパ、オーストラリアそして一部は日本に留学して医療を学び、自国に戻り鍛錬を重ねて優れた技術を身に着けています。

 

 タイでは優秀な医師に高い報酬を出して、民間病院が医師を採用し続けた結果、公的病院から医師がいなくなったという話を聴きました。

 

 その後公的病院も報酬を上げて医師を確保したという落ちがありますが、彼らは設備を整備し、優秀な医師を集め、アセアン各国(東南アジア諸国連合)や中東から患者を集めるという戦略をもって病院を運営しています。

  

 タイで最も大きい、株式上場をしているバンコク病院グループのホームページには、「バンコク・ドゥシット・メディカル・サービス(BDMS)はタイ最大の医療ネットワークを展開しており、医療ケアソリューション提供者のリーダーとして活躍しています。

 

  今日、BDMSは6つの大手病院グループ(バンコク病院、サミティベート病院、BNH病院、パヤタイ病院、パウロ記念病院、ロイヤル病院)を所有・運営しており、パタヤやプーケット、サムイなどのタイの人気のリゾート地や近隣国のカンボジアに30の病院を展開しています」と記載されています。

 

 以前このブログでも紹介しましたが、ミャンマーのパルミ病院や、ヴィクトリアホスピタル等、業務提携やコンサルティングを行なっている病院も多数あります。

  

 同グループのバンコク市内にあるサムティベイト病院で友人と一緒に診察を受けたことがあります(外国人の私でも診察券はあっというまに発行されました)。

 

 美しいホテルのような内装と、飲食店街をもち、フロアーのコーナーを支配するジャパンデスクをベースとし、多くの外国人を受け入れる体制をつくりあげています。

 

  実際に友人が皮膚科を受診してみて、目に着く課題はいくつかありましたが、日本と比較しても、一定の質をもった病院であることに感心しました。

 

 ただ、今では前述した優秀な医師により多くのオペが行われており、医療の質が侮れない領域に入ってきています。日本がアジアの医療に興味をもたない間、アジアの国々は、努力して質の高い医療をもって活動を展開しています。

 

 この病院では、年間12万人以上の日本人が診療を受けた実績があると、当時(数年前)のジャパンデスクマネジャーのMさんが答えてくれました。

 ただ、日本人の患者は多いけれども、お金を落とすのはミャンマーの富裕層やアラブ首長国連合である。日本人は何かあれば日本に帰り手術を受ける、と話を聞き、妙に納得したことを思い出します。

 

 ところが、最近の記事を見ていると、2019年6月に大阪の高槻病院、神戸の佐野病院と連携して、内科、外科、小児科だけでなく日本人に罹患の多い消化器科を診療科としたASEAN初のサミティベート日本人医療センター(入院30室)を開設したと報道されています。

 

 直近では年間14万人の日本人患者や200人の出産があったということで、多くの日本人が働く(邦人8万人弱[2019年末])タイならではと感心しています。

 

 翻って日本の医療を考えます。

  もちろん、国内の医療事情も大変な状況になっている今、それどころではないという状況ではあります。

  しかし、日本の医療のこれからを考えるとき、少子高齢化が加速度的に進むなか、急性期病院を少なくしていこうという政策がある日本の医療をどのように守っていくのかを考えなければなりません。

 

 海外との連携を通じた国内における医療活動や、肌理の細かさで評価の高い日本の医療を以て、サムティベートでも日本の病院が応援しているように、アジアの医療をけん引するための活動をさらに行っていくことも、選択肢の一つであると、私は考えています。