よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

会計の知識がなければ現場は見えづらい

 

 

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会計には財務会計と管理会計があります。前者は外部報告のための会計であり、後者は文字通り現場管理のための会計です。

 

会計の知識がなければ経営がどのように動いているのか、どう行動すればよいのかが分りません。

 

正確かつ迅速な月次決算で、収益は、費用は、そして利益はいくらあるのか、キャッシュフローはどうなのかを理解できなければ、現場で目の前の出来事は把握できても、(数字に基づいた)的確な経営は行えないでしょう。

 

収益が費用を回収できないことが定量的に把握できなければ、収益をどのように増加させるのか、費用のどの費目をどのように削減、若しくは増加させて(収益をそれ以上に増やし)成果を挙げていくのかを判断できないのです。

 

また、資金の調達や運用の考え方が分からなければ、マーケティングや適切な投資経済計算ができず、不必要な資金を調達したり、投資を行うことになります。

 

結果、あっというまに屋台骨が揺らぐことすらあります。

 

利益を指標とせず、またキャッシュフローを把握せず組織運営を行えば、不都合が生じ組織が立ち行かなくなることは明らかです。利益が出ているからと言ってキャッシュがあるわけではなく、無駄な投資や債権回収に力を入れなければならない理由です。

 

医療であれば、収益増や費用削減の必要な診療科はどこか、部門はどこかが部門別損益計算により管理されていなければ、増患や単価アップへの意思決定を誤る可能性も高くなります。

 

患者の外来来院経路や入院経路を分析し、紹介の弱いところへの営業をかけたり、多様な地域別プロモーションを行うこともできません。

 

費用については、変動費と固定費の動きを精査し、損益分岐点分析を実施することで適切な費用削減や増加を判断できます。

 

また、患者別疾病別原価計算ができれば、この患者はなぜ利益がでて、あの患者はなぜ赤字なのかが分かります。そのうえで教育や業務改善、部署間コンフリクト(衝突)の解消を行い効果的な利益創出活動につなげます。

 

会計知識や運用スキルがあれば、現場の見方が変わるとともに、現場の動きが診療科や部門の動きとして把握できます。

 

それらが集約された組織全体の経営成績や財政状態に展開されているのかを確実に俯瞰できます。

また、組織は未来を予想し、中期経営計画や事業計画立案、そして予算統制の仕組みをもち目標設定や目標達成のための活動を行います。

 

KGI(組織目標指標)→KFS(重要成功要因)→PD(行動尺度)→KPI(重要業績評価指標)の流れが生まれます。

 

ここでも利益目標をどのような行動により達成していくのかについて、数量×単価=収益の深淵な意味や費用発生の要因分析を基本とした、あらゆるパフォーマンスの可視化を行う指標管理の知見が必要です。

 

経営管理を行う中間管理者に会計知識や運用能力が不可欠な理由がここにあります。

 

数字は客観的で嘘をつきません。特に管理会計を縦横無尽に活用し、効果的な組織運営が行われることを期待しています。