よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

コロナをチャンスにする

 

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 新型コロナウィルスにより、社会生活や仕事が大きな制約を受けています。

 

 また、いくつかの業種は想像を絶する状況に直面し、多くの方々が塗炭の苦しみを味わっています。

 

 ただ、この時期に業容を拡大している事業もあり、悲喜こもごもではありますが、私たちは環境の変化に翻弄されることなく、前を向いて進み続けなければなりません。

 

 この時期、私たちは何をすればよいのでしょうか。

 

 ある意味、当然のことかもしれませんが、以下を検討します。 

  1. 自分や自社を分析する
  2. 突然の環境の変化への対策や準備ができてたかを反芻する
  3. 今行うべきことは何かを列挙する
  4. 優先順位をつけて3を開始する

  私たちは、この時期いくつもの悩みを抱えながら日々仕事や生活をしています。

 

 場合によれば、環境の制約のなかで、その日を乗り越えるのが精一杯という毎日もあります。

 

 ただ、実際のところ環境には大きな影響を受けていないにもかかわらず、何かをしようと決めても、時間がないと言い訳をしたり、コミュニケーションがとれないのは相手のせいと自分を慰めたり、一生懸命やっているんだから、との思いを免罪符にして行動しがちです。

 

 もちろん、そうではない人もたくさんいるでしょう。

 

 私は、前者をトラベラー(旅人)、後者をファーマーズ(農園主)と呼んでいます。

 

 トラベラーは、本当はここに行ってみたい、こんな旅をしたいという夢がありながら、他律的かつ、孤独で他者との関係性が薄いこともあり、どうしても自分の思いを実現できないでいる人です。

 

 実現できない何かが常態になり、自分には夢があることさえ忘れてしまい、今の位置に安住している可能性があります。

 

 ファーマーズは季節に合わせて作物をつくるだけではなく、次はこんなものをつくろう、こんな農法を使ってみよう、作物の売り先はここに、加工してみよう、直接消費者に販売してみようという日々が未来志向です。

 農家の信頼を集めて協力を得ながら、彼等へのメリットを提供し、自分のやりたいことを実現してきた人です。

 

 農業自体が常に環境との闘いである、という場に身を置いています。環境変化に敏感で新しいことへの取組みに躊躇していません。

 

 人はこの両面を持ち合わせて生活しています。完璧にトラベラー(T)、ファーマーズ(F)の片方に身を置く人はいないと思います。

 

 TとFの合計を100とした場合、トラベラーとファーマーズのどちらの割合が大きいかにより、環境変化に対する対応が異なります。

 

 これをFT指標と名付けています。FT指標=F÷Tで示されます。自分はいま、どこにいるのかを分析してみる必要があります。F50、T50としても指標は1。少なくとも1以上は欲しいですよね。

 

   FT指標をどのように高めていくのかは、未来志向か現状満足かの選択というテーマでもあります。

 

 ファーマーズでいえば、未来志向は地に足の着いた未来。文字通り地面に足がついています。土を触り、気候を知り、空気や水を肌で感じつつ、さらに先進的な農業のようにITやAIも活用し、ビジネスモデルも堅実です。

 

   なお、トラベラーの現状満足は、満足していないけれど自分の壁を乗り越えられないという意味での現状妥協=消極的満足も含めての満足をいっています。

 

 次に、2の検討です。

 

 突然の環境の変化への対策や準備ができていたかを反芻することは容易です。ほとんどの人はコロナにより、こうなることを予想できていなかったと思います。

 

 それさえできていない人や組織もたくさんありますが、地震や風水害、地域によれば噴火に備え、BCP(Business Continuity Plan 事業継続計画)を設定することが精一杯でした。

 

   WHOのテドロス事務局長が新型コロナウイルス感染症大流行は、「100年に1度の衛生上の危機」だと言いましたが、このような常軌を逸する状況を誰が予測できたでしょう。なので、これは仕方がないと考えなければなりません。

 

 ただ、少なくとも、何かの仕事をしていたときに、将来のリスクに対し自分に力をつける、組織にを強くする、そして自分自身や組織自体が常にトライしてきたのか、については反省しなければなりません。

 

   トラベラーは言うに及ばず、例えファーマーズであっても、行動や戦略が十分であったのかを振り返る必要があるのです。

 

  そして3つ目に、今行うべきことは何かを列挙します。

 既に、飲食でもネットでのオーダーによるデリバリーに力を入れたり、昼夜営業の二毛作に切り替える、冷凍食品として自動販売する、デリバリー専門の多店舗を配達機能を付けて開設するという活動が盛んです。

 

 また、その他の業種でも、EC強化、研究開発、設備投資、異業種への出向や、物流センターや量販での雇用、時間単位の副業への移行が行われています。

 

 もちろん人が移動しないことでの産業対策や、重要課題としてコロナ感染症患者の治療を行う医療機関の支援への徹底が渇望されているなど、個人や組織での対応が困難な事例も山積みです。

 

 しかし、そのなかでも少しでも前にという動きを個人や組織が行っていることも事実であり、皆が懸命な努力をしています。

 

 影響は受けつつも、コロナにダイレクトに接してはいない業種であっても、今のうちに、自分は

  • 個人の能力を高め、
  • 仕事に精通する
  • 工夫や創造を重ねる

とともに、組織としては、

  • 戦略を再構築し、
  • 業務改善を活用し、
  • システム化し、
  • 従業員を鼓舞しコミットメントを得て、
  • ガバナンス等、内部体制強化を図る

必要があります。

 

 闘いを伴う臥薪嘗胆の時期を越えれば間違いなく、明るい未来が来る、いや明るい未来をつくらなければ、ここから先の時代を描くことはできません。

 

 コロナが終息するのを、ただ、身をかがめ息をひそめてじっと待つだけでよいのか、トラベラーでい続けることで良いのかを熟考しなければなりません。

 

 再考しこれをしようと決めた、あるいは以前から決めていて実行できていなかったことを掘り起こし、FT指標をどれだけ高めていけるのかに果敢に挑戦する必要があります。

 

 優先順位をつけて、一つ一つの実効性を高める活動を開始しなければならないのです。

 

 コロナを奇貨として、自分自身のFT指標を高め、自分も組織も前に進む力を引き出すことが、今私たちが行わなければならない最大の事項であると考えています。

 

 私の周りには、それぞれの思いにより高いFT指標をもって日々挑戦し、今だからこそ行なうべきことに焦点を絞った活動をしている人達が数多くいます。

 

 現状を慮りながら、自分達が出来ることは何かを考え、未来を見据えて次のステップに進もうという気概をもった多くの人々により、必ず明日に続く道がつくられると、私は固く信じています。