よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

悪循環からの脱出(Ready go!)

 

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 「悪循環」とは、あることが他の悪い状態を引き起こし、それがまた先に起こったことに悪影響を及ぼす関係が何度も繰り返されて、状況がますます悪くなることをいいます。

 

 悪循環が続くと「負の連鎖」になります。

 

 負の連鎖は、一つのよくない出来事が原因となって悪循環が繋がりをもって連続的に起きることをいいます。

 

 悪循環はらせん状(スパイラル)に下に向って悪くなることをいいますが、負の連鎖は、らせん状に悪くなるものがいくつも繋がり連続的に起きることなので、悪循環が次々に生まれるんですよね。

 

 最悪な状況です。

 

 さすがに、負の連鎖を何度も経験する機会は少ないと思いますが、たまに、「あ、これは悪循環になっているな」ということがあります。

 

 意識がネガティブな方向に向いていると、益々、その思いが心を占有してしまうのです。そうなるとなかなか冷静な判断ができなくなり、その気持ちから抜け出せません。

 

 「信号にやられた事件」を例にとり話をします。

 

 とても急いでいるときに、信号に停められる。「なんだよ、タイミング悪いな」、と思う瞬間です。いつもならスムースに進める道も、そういうときには、次の信号でも、また次の信号でも停められてしまい、「おーい、どうなっているんだ」、とイライラしてしまうイメージです。

 

 何かを行っているとき、一度躓(つまづ)くと、次々に問題が惹起し、躓きまくるといった状況です。

 

 信号事件について、なぜそうなるのか、原因を考えてみましょう。

 

・予定の設定に無理があった

・予定よりも遅く自宅を出た

・気持ちの余裕がない

・道路が混んでいた

・たまたま前の車がゆっくり走っていた

・時間帯により信号の変り方が早い

などが該当します。

 

 そこには自律的な課題と、他律的な問題があります。

 

 予定の設定に無理があった、や予定よりも遅く自宅を出た、は自分の責任であり、自分が車で移動するときの状況を想定し、時間的な余裕をもって行動すれば、道が混んでいようが、前の車が遅かろうが想定内の事柄として受け入れることができました。

 

 障害があっても予想できていれば、物事を俯瞰することができて、気持ちの余裕も生まれ問題は起こりません。

 

 とてもシンプルではありますが、悪循環が生まれる理由は、さまざまな点において「準備不足」ということが分ります。

 

 

 準備を行うということは、物事に対して

 

  1. なぜ
  2. 何を
  3. 誰が
  4. いつ(いつまでに)
  5. どこで
  6. どのように
  7. いくらで

の検討を行い、必要な何かを用意することです。

これは5W2Hですよね。

 

 このなかに、当然に「いつまでに」の項目があり、適切に対応するためには間に合うように、というキーワードがプラスされます。先ほどの信号事件の解決です。

 

 ということで、実は何かが起こることが複雑な要因により生まれるとしても、情報を集め、ケースを想定し、障害を予想し、時間の使い方、役割分担や必要とされる道具や手法の用意、資金調達などの対策(仮説)を立て、どのように処理していけばよいのかの準備を行い、物事に当たる必要があることが分ります。

 

 なお、信号事件の解決のためには、予定の設定に無理があった、予定よりも遅く自宅を出た、気持ちの余裕がない、道路が混んでいた、たまたま前の車がゆっくり走っていた、時間帯により信号の変り方が早い、としても、

・抜け道を通る

・違反にならないようスピードを上げる

・クラクションをならして前の車に注意を喚起する

といった方法もあり、周到な準備がなくてもその場をクリアーすることもできないわけではありません。

 

 しかし、このようなイレギュラーなことに随時対応して、リスクを背負いながら何かをすり抜けるよりも、物事に対し、常に戦略的に対応することのほうが安全で、安心できるし確実です。

 

 用意周到に準備をしたうえで、発生するイレギュラーな事象に対して、訓練により、うまく処理するスキルも身に着ける必要はありますが、できるだけ想定内の出来事の範囲に収めながら事に当たることを心掛ける必要があるのです。

 

 仮説の立て方に熟練することが重要です。

 

 なので、悪循環に陥ったときには、いちど自分を振り返り、

  1. 現状のどこに問題があるのか
  2. その課題は何か
  3. どのようにすれば解決できるのか
  4. 次から何を準備すればよいのか

を冷静に分析してみる必要があります。

 

 悪循環を負の連鎖にまで誘導することなく、少なくとも一回りしたところで対処できるよう日頃から訓練を行う必要があるのです。

 

 5W2Hは、物事を捉えるときのあまりにもシンプルなフレームワークですが、常に

  1. なせこの仕事をしているのか、
  2. 何をしなければならないのか、
  3. 本当に自分の仕事なのか、
  4. いつまでにやらなければならないのか、
  5. この場所で行って良いのか、
  6. 方法は間違っていないか、
  7. 自分の時間のかけかたは合理的か、

ということを常に考え、行動する大切さを教えてくれます。

 

 なお、いうまでもありませんが悪循環になる前に5W2Hで準備をする癖をつけ、ASCS(アスクス)やPDCAと併せて準備を行えば最高ですね。

 

「準備(preparation)セット=Prep set」もしくは「準備完了セット=Ready go (用意どん)!set」と名付けて頭の引き出しに入れておくとよいでしょう。(Ready go !setのほうがやる気になります)。

 

 5W2Hをあなどれません。