困難を困難と思わないポジティブな人も稀にいますが、まったく困難に直面しない人生はあり得ません。
人は、程度の差はあるものの何らかの困難を乗り越えて生きていかなければならないのです。困難を克服することで、何が得られるのかを考えます。
ところで、人が何か目的をもち行動するためには、背景に思いや信念が必要です。思いや信念なく先には進めません。
好きだから、得意だから、「やりたいから」やろうと思う(内部湧出といいます。)のか、やらざるを得ないので「やらなければならないから」やろうと思う(外部要請といいます。)のか、思いを持つきっかけは別としても、思いをもつのは自分です。
ここで、内部湧出の思いは原則として「継続することも止めることも自由」な思いです。
自分が決めて始めたけれども、そのうちに好きでなくなったり、興味の対象が変わること、また得意なことが増えて別の選択をすることがあるからです。環境変化によりやりたいことが、どうしてもできなくなることもあるでしょう。
しかし、外部要請の思いによる行動は、環境が大きく変わることで自分のアイデンティ(自分が自分であること)を守ることや、仲間や家族への責任を持つなどが、やらなければならないことの原因なので、目的を達成するまでやり続けなければならないことが通常です。
もちろん、外部要請の思いであってもそれが自分の好きなことや得意なことと一体化し、内部湧出と外部要請の思いが重なることもあります。ただ、そのときにもやはり、外部要請により、やり切るまで何かを続けることになります。
生まれてからずっとこの方、人は意識するしないとに関わらず、内部湧出の思いと外部要請の思いの関係性のなかで何かを思い、両者の間を行き来しながらどう行動すべきかを決めてきたのだと思います。
内部湧出優位で行動する人もいるし、外部要請先行で生きる人もいるでしょう。内部湧出と外部要請のバランスをとり自分を安定させる人や、常に外部要請と内部湧出が背反し、もやもやして過ごす人もいると思います。
やりたいことと、やらなければならないことの両者が一致して人生を謳歌している人は幸せですね。
いずれにしても、人は目的を持ち、それを達成するまで何かをやり切らなければなりません。
ただし、何かを続ける過程は順風満帆ではありません。唐突に予測できない壁に直面し、行く手が阻まれることがあります。袋小路に追い込まれることもあるでしょう。もう限界だ、どうしようもない、前に進めないという状況です。
そんなときでも、前進を諦めそこを離脱するわけにはいきません。壁を回避したりズルして通ることもできません。踏ん張りながらもしっかり前を向き、壁を乗り越えなければ、守るべきものを守れないからです。
その困難を、全身全霊をかけて自分だけで、また仲間と協力して解決していく必要があります(解決方法の手順は別の記事でお伝えしますね)。なぜなら苦労を重ね、やっとのことで壁を乗り越えた後に多くのものを得られるからです。
試行錯誤の中で、こうするとうまくいく、こうすると失敗するといった学習や新しい知識を身に着け、物事への理解を深められます。
また、壁を乗り越えたときの達成感があり爽快です。
壁が厚ければ厚いほど、また高ければ高いほど得るものは多く、乗越えたときの喜びもひとしおでしょう。
達成感から得られる高揚感を知ると、次の壁に直面したときに、壁を乗り越えたときの晴れやか気持ちを思い出し、もう一度あの達成感を味わおうと自分を鼓舞できるようにもなれます。
その気持ちが次の壁を乗り越える勇気を生むのです。
目的を達成しなければならないという動機と経験や学習により知識を得つつ、一つひとつの課題を解決しようという意欲とが一体となるとき、人は成長し自信をつけ強くなれます。
何度も壁を乗り越えるたび、外部要請に内部湧出が近づき、徐々に外部要請に収斂していきます。
「やりたくもないことだけれど、やらなければならない」という思いから、「やらなければならないことは自分がやりたいこと」に変化していくのです。
さらに、成長が進むと内部湧出=外部要請を凌駕して内部湧出>外部要請の状態になります。
ここまでくると「やりたいことは、やらなければならないこと」に完全に置き換わり、やらなければならないという思いは消失し全ての思いは内部湧出から生まれたもの、つまり「やりたいこと」になるのです。
思いはすべて内部湧出でひたひたに満たされ、この上ない心地よさや満足をもたらします。行動にさらに拍車がかかるのはいうまでもありません。
日々の行動が、身に着けた経験と学習による知識、そして壁を乗り越えたときの達成感に誘導されながら、勢いをもって工夫と創造による前向きな活動へと転換されるのです。
ここに人が力を付けさらに強くなるプロセスが生まれます。
自分の置かれた環境において自分の未来を見据え何をしなければならないのかを決めること。それは当初は自分のやりたいことではないかもしれません。
それをやらなければならばならない理由が、経済的なものであったり仲間や家族のためかもしれません。
また、自分はこのままでよいのかという思いから、やらなければならないことを続けたり、苦しい道を歩き始めなければならないかもしれません。
しかし、説明したように、目の前の壁を自分が、そして仲間と乗り越えていくうちに、成長し力をつけて、やらなければならないことはやりたいことに変えられます。
困難を乗り越えると強くなる、といわれる理由がここにあります。
組織も同じです。同じ危機感を共有し、ここまで行こうと決めた道を皆で前に進むことで、組織構成員一人ひとりの自覚と成長が相乗効果を生み、より大きな達成感のもとで高い成果を挙げられるようになるのです。
今私たちはコロナという壁に直面しています。そのなかで多くの人が、少しずつ困難を乗り越えるための活動を始めています。
今を「未来が見えない不安の時代」とみるか、「未来をつくる変革の時代」と捉えるのかは人それぞれでしょう。ただ、少なくとも身を屈めて嵐の過ぎ去るのを待つだけではなく、たとえ窮地に追い込まれていても捲土重来を期し、着実に準備をする、そして次に向い新しい活動を開始していく必要があります。
困難を乗り越え自らの成長の機会とするために、コロナを前向きにチャンスと捉え、果敢に挑戦する人が益々増えていくことを心から期待しています。
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