よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

組織発展のために

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組織の目的はさまざまですが、多くは「価値創造による社会貢献を行う」との趣旨が、ビジョンや理念、ミッション等に表現されています。

 

ここで組織は、価値創造を継続させるために仕事の質を高め、発展し続ける必要があります。

 

質向上とは、同じ経営資源でより多くの成果を挙げることです。

 

たとえば、8時間で10の仕事をしていた人が、同じ時間で20の仕事ができるようになれば生産性は2倍になります。4時間で10の仕事ができます!

 

勤務している社員が力をつけて成長し、よりよい仕組みをつくることで生産性が向上し、仕事の質が上がるのです。生産性向上の結果の質向上であることが分ります。質の向上は生産性向上によりもたらされるのですね。

 

結果、付加価値時間(先程の事例では8−4=4時間)から新たな価値が生み出されます。一方でコストは下がり利益が生まれます。利益から新たな雇用や設備投資が行われ、組織が発展するのです。

 

ここで、生産性向上のためには、

  1. 個人の技術技能向上、
  2. 仕事の仕組みの見直し

 

が必要です。どのように2つを達成すればよいのでしょうか。仕事の可視化(目に見えるようにすること)を行います。可視化を行うことで誰でも同じレベルの仕事ができるようになるとともに、仕事のどこに課題があるのかが見えてくるからです。

 

可視化にはいくつかの方法があります。写真や動画、音声、数字、文字のマニュアルがそれらです。ただ、写真だけでは詳細な部分が伝えきれないし動画、音声だけでも限界があります。また数字の表現力には制約があるのはいうまでもありません。

 

まずは目に見えない「うまいやり方やコツ」(ナレッジ=暗黙知)を文字化する(形式知)必要があると考えています。

 

ナレッジの多くは個人に付帯する目に見えないものが多く、すべてが文字化できません。しかし、できるだけ多くの情報を文字化すれば、その内容を理解でき、より課題を発見し易くなることは間違いないからです。

 

仕事をうまくできる個人がもつ、①仕事の手順や②留意点③必要な知識等(個人知)をマニュアルに落とし込むことで組織の知識とし、優れた人の仕事のやり方を他の人が擬似体験できたり、真似しやすくすることが有益な理由がここにあります。

 

マニュアルで業務を標準化し、誰でも同じ業務が行えるよう訓練することで個人の技術技能が向上します。

 

さらに、可視化され課題を発見し易くなった仕事の仕組みを、もっとうまく、速く、安くできるよう改善することで、さらに仕事の仕組みを見直せます。

 

結果、個人の技術技能は向上し、仕事の仕組みの見直しが行われ、生産性や質が上がります。

 

前述のように、質が上がることで新たな取り組みの時間が生まれ価値が創造されます。一連のプロセスで得た利益による投資を通じ、より高いステージでの仕事を行えるようになるのです。

 

これらの連続が組織発展そのものであり、目的を達成するための基礎になると考えています。

 

V字回復により成長した無印良品の提唱する「Mujigram」が高い評価を得ています。Mujigramは、無印の店舗用のマニュアルです。Mujigramは写真やイラストも含めて2,000ページにもなります。

 

この他、職務基準書も含めて努力を成果に結びつける仕組み、経験と勘を蓄積する仕組み、ムダを徹底的に省く仕組みとして作成された二つのマニュアルに、無印の業務のすべてのノウハウが詰まっているといわれています。

 

どんな作業にもうまくいく法則があるといいます。それを標準化したものがマニュアルになるのです。マニュアルは常にアップデートして最新のものではなくてはならないといいます。そのためには社員が常に問題意識をもって、現状の仕事を改善できる機会をうかがっていなくてはなりません。

 

またそのような機会を見つけたときに、会社に提言して即座に認められる風土が備わっていなければ、そのような”気づき”も生かされずに終わってしまいます。

 

松井さん(社長)は、作業の改善点が見つかれば、それをリアルタイムで見直す必要があるといいます。(無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい 松井忠三著 角川書店)」

 

として、暗黙知をマニュアル化し教育に活用、そして業務改善による仕組みの見直しを行い、高い業績を挙げ続けているのです。

 

私たちは、量販、小売業やサービス業、医療・介護等多くの組織において、マニュアルや業務改善提案制度の導入、One on One教育の仕組みの構築を通じた改革を行なってきましたが、組織発展のための質向上への取組みを、これからも継続していきたいと考えています。