よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

漏れなくダブりなく

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仕事をしていくときに、大切な考え方はたくさんあります。

何かを分析したり、何かの行動をとるときの「生産を実現するための効率的な考え方」をビジネスフレームワークといいます。フレームワーク(framework)、枠組みです。

ご存知のPDCA、SWOT、ロジックツリー、5W2H、AIDMA(アイドマ)、STP分析などがよく使われています。

更にとても重要なMECE(ミーシー)があります。

MECE(Mutually [お互いに]Exclusive [重複せず]and Collectively[全体に] Exhaustive[漏れがない]=お互いに重複せず、全体に漏れがない)という意味です。言いやすいので漏れなく、ダブりなく、と言われています。何かを整理したり実行する時に、ある事項が重複したり抜けることがないようにするためのルールがMECEです。

MECEは事業のあらゆる場面で取り入れられる考えかたで、その対象は多岐にわたります。戦略、事業計画、予算編成、予算統制、目標管理、権限規程、業務フローチャート、マニュアル、日々の業務すべてなど、記載すればきりがありません。

戦略を立てるときにも、マーケティングを行い顧客や市場、業界や競合、自社の分析を行ったうえで行うべきことを決めていきます。ここに漏れやダブりがあれば、組織の進む方向に誤りが生じます。なので、戦略立案上必要な項目を列挙し、そこでMECEを検討します。

ターゲットにする業界の括りに漏れがあれば、見出すべき課題を発見できなくなるし、競合も見逃すことになります。

例えば飲食で、とんかつを展開する会社は、一定の仮説を立て、飲食業界のみならず、コンビニやデリバリー、ファストフード、インバウンド、アミューズメント、酪農、農業、小売り業、通販などさまざまな業界のトレンドや消費者の嗜好の分析を行い、マーケットボリュームを推定しつつ、商品開発、価格、流通、プロモーションを考える必要があります。

ここで網羅性が担保できなければ、チャンスロスや熾烈なレッドオーシャンの世界に足を踏み入れることになります。

また、消費者の性差が「かつ類」の消費に影響すると考え、男女の分析を行ったところ、年齢層による消費行動に強い傾向があり男女の分析はダブりになる、という結果もあるかもしれません。当初立てた仮説通りに進み、余計な労力をかけないよう、慎重に仮説を立てる必要があります。

もちろん、当初年齢層による動きを見ていたら男女差による行動偏差があり、これはやっぱり年齢層だけじゃまずかったよね、といった結論になり、漏れてたね、ということになるかもしれません。留意したいですね。

さて、元に戻ります。このようにありとあらゆることにMECEが役立ちます。最近のクライアントの事例で、権限の行使に漏れがあったことを思い出します。

権限規程がないために、起案、審査、承認、(実施)、報告において誰の責任なのかわからず、これは俺の仕事?のようなことがある組織があります。慣行により誰かが決裁しているけれど、審査せず押印して事故が発生したり、承認せず事故が起こったケースです。

事故が起こらない限り露見しませんが、起こってから始めて「ルールないじゃないか」、のような状況になるのです。権限規程運用においても、新しい業務が増えるつど、MECEを応用し正確な作成と権限行使を行わなければなりません。

上記にあげた戦略、権限過程以外の、事業計画、予算編成、予算統制、目標管理、業務フローチャート、マニュアル、日々の業務すべてについても、クライアントの現場でMECEの有用性を常に感じています。

個人行動も含め自分の身の周りを、MECEの眼で再確認してみるとよいと思います。

漏れなくダブりなく。片時も、忘れてはなりません。