よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

教育と学習というもの

 

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社員一人ひとりは縁があり組織で働きます。

 

言うまでもなく事業の盛衰は人の力量に依存しているので、組織が目的を達成し発展するためには、彼らを含めた組織構成員全員が成長することが期待されています。なので、他社と比較し自社の社員は、どこの会社や施設よりも高い質をもたなければならないのは自明の理です。

 

比較優位性を持つためには、魅力ある事業モデルや適切な採用を前提とした、一人ひとりに光を当てる教育が必要です。また、文化風土による影響やリーダーが範を示すなかで自然に実施される教育だけではなく、確実なOne on oneでの教育のために自社の基準と比較した評価による教育がなければなりません。

 

評価は公平公正な処遇以前に、平等な教育の着眼を明確にするために行うことを理解しなければならないのです。

 

多様な視点からのチェックを行い、教育の課題を発見することが評価の基本です。評価は自社における採用から配置、日々の業務の振り返りを行う機会でもありますが、社員も自ら進んで学ぶ姿勢をもたなければ成立しない事項であることは間違いありません。いくら環境が整っても社員の能動的な取り組みがなければ成果は挙がらないからです。

 

社員の側からみて仕事のなかで「学ぶ」ということは次の意味を持ちます。

 

  1. 人生は学びの連続。年齢は無関係
  2. 積極的に学ばない人の成長は遅い
  3. 厳しい環境を迎え、仕事に対して前向きに学ばず成長できない者は、成長する者とさまざまな面で大きく差が付く
  4. 会社の進む方向を受け入れ、組織のなかで協力して成果を挙げ続ける社員が必要とされることを認識する
  5. 評価により処遇に差がでることを受け入れる
  6. 主体的に学べない責任は自分が負う
  7. 組織で「やりたいこと」(好きで得意な、かつ客観的価値のあること)を見つけ、組織目標と擦り合わせるとともに、そのために何を学び実践すればよいのかを明らかにする
  8. その行動は自分の人生を変える

 

会社は社員の学習意欲の醸成や維持拡大を支援しなければならないし、社員はそれを活用しなければならないことが分かります。組織は学ぶ姿勢をもつ社員を大切に、平等に育成していかなければ、ここから先成長することができないと知らなければなりません。

 

会社は一人ひとりの社員に適切な教育を行うため、「こうなって欲しい、こうあるべき」という到達点を設定し具体化します。そのうえで現状を多面的に評価し、社員毎に「うまくいかなかったこと」を見つけ到達点と現状にどれだけ差があるのか乖離を把握します。これが評価です。差を埋めるために教育や学習を行うことについて会社も社員も容易に理解できます。

 

多面的評価は、縦の目標、横の目標により行われます。前者は毎年変わりうる組織の業績目標を達成するための目標管理、後者はある程度安定した情意目標、能力目標をいいます。

 

業績目標は例えばBSCにより設定します。BSC(Balanced Scorecard=バランストスコアカード)では財務の目標、非財務の目標(業務フローの視点、顧客の視点、学習と成長の視点)が到達点になり、KPIの設定及びその管理が行われます。

 

また、情意目標は、規律、協調、積極性、責任性が目標として、能力目標は職務基準やマニュアルにより到達されるべき基準として設定されます。

 

組織がうまく機能するために、どのような課題があるのかを常に把握し、問題提起することで上記の多面的目標を修正し、より現実的なものとして進化させていくことがリーダーの重要な役割の一つとなります。

 

組織のこうなって欲しいという要求を目標として設定し、そこに到達する社員をできるだけ多くつくるために、組織も社員も教育や学ぶことの意味や場を共有し、仕組みをつくり、環境をつくり、リーダーシップを発揮しなければならない時代であることを、常識としていくことが求められています。

 

なお、ずいぶん前に著名な経営者から「会社は学校ではない。遊園地でもない。自ら求めて成長するための戦場である」という趣旨の話を聞きました。イメージとして教育<学習の関係があり、リーダーも含めた組織構成員の覚悟が必要なことは言うまでもありません。