よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

自立する社員が企業価値を高める

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企業からの支配や助力を受けず(
自立)に企業とフラットな相互関係をつくる力のある社員を数多く生み出すマネジメントが必要です。数回に分けて社員の自立を促すマネジメントについて考えます。

 

そもそも、組織はなぜ存在するのでしょうか。「組織とは、目的を達成するために人が集まり、秩序ある行動をとる枠組み」をいいます。

 

組織は人を軸とした経営資源を活用し成果を挙げ続けなければなりません。社員は組織の機能の一部を役割として活動し、集団として結果を出さなければならないのです。企業は目的達成のためコストをかけて収益を得て利益を出し継続していく(Going Concern)ことが期待されています。

 

ここで大切なことは目的を達成するための組織目標と個人目標の一致です。組織に集まる人は、その組織が何をする組織なのかを知り組織に帰属します。少なくともこの企業はこんな仕事をしていると知り、漠然とここでの仕事に興味がある、あるいは明確にこんな仕事ができるからこの企業に入社するという動機がある筈です。

 

稀に仕事があればなんでもいいやという人もいますが、組織としては好ましいことではありません。言うまでもなく頭数ではなく「こんな仕事をして欲しい」という期待や成果を想定しての採用だからです。

 

いずれにしても企業と社員には双方の思いを遂げるために成立する関係があり、そのうえで事業活動が行われています。しかし、時が経つと組織サイドからすれば、想定していた成果を挙げてくれない社員が見えてきます。当初に曖昧な採用を行うことやマネジメントの脆弱性が原因ですが、社員の側にも当初思い描いていた仕事ができていない不満も生まれてきます。

 

その相互の感覚は明瞭なこともあるし、モヤモヤしていることもあります。相互感覚をうやむやにして企業活動が継続される組織が多く、「うやむやをなくしはっきりしたい」と思い、さまざまな組織的取り組みを行うものの思うような成果を得られないまま日々が経過する企業も多く存在します。

 

企業のその時代にフィットした業種や一定規模、勢いや成長があると、そうした課題は小さくみえるので余計に手をつけないし、逆のポジションにある企業は手を付けたくても課題が大きすぎて、きめの細かい対応ができず、むやみに大ナタを振るうことで本来の課題解決が行われないまま業績を落とす羽目に陥ります。これらの事象は組織にとっても、そこで働く社員にとっても不幸です。

 

なお、順風満帆に事が進んでいると安心している企業でも、社員の力を十二分に引き出してはいないことに気づかなければなりません。社員が覚醒し力を発揮することで企業もより高い成果を得られます。そのためのマネジメントを行う必要があります。

 

まず、企業と採用される者の関係から振り返ります。そもそも人の採用時に、企業側にも自社の良さや課題についてすべての真実を伝えられる訳もなく、働く側も自分が何をやりたいのか、イメージが鮮明に描けていないか、仮に具体化できていたとしてもよほどの専門家でないかぎり、企業側にその仕事が必要であるのか分りません。

 

自分に求められる筈の実力があるとしても、神でないかぎり組織内にその仕事ができる人が実はどれだけいるのか、またいないのかまで知る由もありません。企業のニーズと社員の実力がほぼ合致し双方が思いを遂げることがあるとしても、それは稀です。

 

現実には働く側の思いとは別に、ある分野で企業が目星をつけて人を採用したあとは、その時々の企業にとり必要な役割を担ってくれる人を、どれだけ企業の考える一定の方向に誘導できるかどうか、あるいは不足するところがあれば育成できるかどうかが大切なマネジメントの一つになります。

 

社員は、組織と柔軟に折り合いをつけながら、その都度組織の求める方向で自分の力を発揮し、どのように仕事をしていくかを考え行動することが組織の中で上手く生きられるコツだと知る必要があります。社員は未だ経験していないことを仕事から学び、組織のポテンシャルを活かしさらに経験を積み成長できます。

 

企業は社員に役割を与えミッションを果たすようマネジメントし、社員は自分の思考や行動を組織に合わせ敷かれた線路を踏み外さないようにしっかりと自分をコントロールして仕事をすることで安定した環境を確保するのです。そのことで「想定していた成果を挙げてくれない社員」はいなくなり、企業は所期の目的を達成できるようになります。

 

もちろん、全ての社員がそのような行動をとることは困難であり、この議論は理想論かもしれません。パレートの法則を持ちだすまでもなく、残念なことにどのような企業にも何らかの理由により仕事へのモチベーションが低い、あるいはやる気はあっても能力が伴わない社員が一定数いるからです。

 

しかし仮にここでいう相互関係さえあれば目まぐるしく変化する環境に適合して最適化し、企業は成長できるのでしょうか。そうではありません。これだけでは間違いなく不十分です。

 

付与された役割を果たすだけではなく、主体的により一層高い技術を身につけ、変革を仕掛け新しい価値をつくりだす社員が数多くいれば、間違えなく企業は掲げた目標をより早く達成できるし、その時点でのゴールに辿り着くことができます。

 

社員も、順応しながら役割を果たして組織に貢献するとともに、自らの思いを以て組織を利用して、変化しながら力をつけて本当に自分がやりたいことを企業のなかで実現できる地盤をつくれるようになることが本来の生き方です。自分の価値を高め将来に向けて仕事の選択肢の幅を広げて行くことができるようになるからです。

 

ここでのキーワードは自立です。自立とは、企業内において他への従属や支配から離れて独り立ちすることをいいます。

 

企業は社員に自立を促し、また社員は自立できるよう鍛錬を重ねて成長する関係がなければ、企業も個人も思いを遂げられません。  

 

社員は、自分の価値を高め自立することで自分の得意とし評価される市場に身を置くことができます。

 

企業に従属するしか道がない人生ではなく、自分を求める他の企業に招聘されたり新事業を起こせる実力を身に着けられれば、企業も一騎当千の社員を抱えられ高い生産性を確保できます。

 

企業はどこに出しても恥ずかしくない実力のある自立した優秀な社員とフラットな関係をつくり、彼らを組織に繋ぎ止めて社員同士の連携を牽引するマネジメントができれば企業価値が格段に上がります。

 

社員の自立を促し社員間、外部との連携を牽引する経営こそが先の見えない環境をものともせず、次々に立ちはだかる障害をなんなくクリアーして行ける企業をつくるれるのです。