よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

自立が連携を生み成果を挙げる

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自立と連携を考えます。自立した社員が企業価値を高め、厳しい環境に勝ち続けるためには連携が必要です。

 

ここで連携とは、「相互に連絡をとりながら協力して仕事を行うこと」をいいます。自立した社員が、企業の進む方向と自分のやりたいことのベクトルを合わせ社内外で連携することにより始めて価値が生まれると考えています。

 

もうお分かりのように自立した社員が個々バラバラに自分の思いで行動するのでは企業は成果を挙げられません。一人で動くよりも組織を活用した連携を行う事で多くの価値を生みだせることに疑問を持つ人はいないでしょう。

 

自立からは自らの進歩や進化が、そして自立した者同士の連携からは協働、ベンチマーキング、支援、改革、創造が生まれます。

 

一緒に働くだけではなく相互を比較して良いところを学んだり、不足するところを支援し合い共に成長を享受できます。そこからは改革や価値創造が行われるといった実質的な連携です。

 

そもそも社員が自立していなければ実質的な連携は生まれません。自立していない社員でも連携という形式はとれ一定の決められた範囲内で一緒に仕事はできるものの、自立していない社員からは感化や啓発、鼓舞もされず、ひらめきや刺激も与えられません。上記に示した連携を実践できず価値創造を行なえないからです。

 

自立した社員だからこそ、どの職位にあってもリーンな(無駄のない)情報をもって現場で発想し率先して行動することで認められ、他の社員や取引先への影響を相互に与えながら連携できます。

 

なお、連携によって社員は、自立→連携→成果→自立2→連携2→成果2→自立3→連携3→成果3といった上方スパイラル的な効果を得てより一層成長することになります。

 

企業から社員の自立をどう促すのか、自立できていない社員にどう自立してもらうのかがマネジメントの重要なテーマの一つになります。    

 

社員自ら自立を考える必要もありまずが、まずは企業からの「自立」促進のための枠組みを考えます。

 

企業が社員に自立してもらうためには、社員一人ひとりの役割を明確にするところから始めなければなりません。そのためのガバナンスが必要です。

 

組織自体の到達点を明確にして、現状分析を行ったのち、到達点と現状のギャップを確認、その乖離を埋める解決策を検討しPDCAを回して目標を達成するという流れをつくります。

 

我々が開発したASCS(アスクス)のフレームワークです。

 

  1. 何をしなければならないのか、到達点(Attainment=A)はどこか
  2. 現状(Staite=S)はどのようになっているのか分析
  3. 到達点と現状の間にはどのようなギャップがあるのかを確認(Confirmation=C)
  4. ギャップを埋めるための解決策(Solution=S)

といった枠組みのなかで、解決策をPとしてPDCAサイクルを回します。問題解決のためのフローの頭文字を取りASCSと言っています。

 

  1. 到達点が不明瞭だと、組織として何を目指して活動すればよいのか分からず、日々の直面する仕事を懸命に行うしかなくなる
  2. また仮に到達点が明確でもs、現状分析ができていなければ、解決すべき問題がどれだけあるか、そのための課題は何かが掌握できず、行動が網羅的に行われない
  3. 到達点や現状分析が行われて乖離の確認が行わなければ、何を解決すべきかを見いだせない
  4. そして解決策が適切でなければ解決につながらない

ということを理解して、ASCSを意識しギャップを埋める解決策(最適解)を誘導しなければなりません。

 

ここでPの段階で各部署の、そして各社員の役割が確定します。社員が自立するためには、彼らが成果を積み上げ力を付けて自信をもつプロセスが必要です。

 

企業は経営方針を目標化し提示したうえでOne on oneミーティングにより、

  1. 一人ひとりの属性や能力、思い(やりたいこと)を評価する
  2. 個々に明確な役割を付与する
  3. 達成に対する約束(Commitment=コミットメント)を行う
  4. 達成を支援する

ながれ(コミットメントサイクル)を回します。

 

ハーズバークの二要因理論にあるように、承認、責任、適正な評価、昇進、達成感(動機付け要因)により社員はやる気になり、給与、福利厚生、同僚や上司との人間関係(衛生要因)は悪いと不満になるけれども良くてもそれほどのやる気につながらない、という傾向にあります。

 

目標管理により社員一人ひとりの役割を確定し、達成支援のなかで成果を挙げ、「動機付け要因」に関与しながら達成感を得て自信を付けてもらうのです。このプロセスの連続において社員の能力を高め能動的な活動を誘導し経験やナレッジを以て自立を促す仕組みです。

 

なお、どの段階で行われるものであっても「現場の情報を得つつ行う意思決定」が必要です。情報提供者の一人である社員が、経営思決定のどこかに自分の思いがにじみ出ていると感じることが彼らの自立を促す一助になるからです。

 

意思決定による管理方法にはトップダウン、ミドルアップ、ボトムアップといった方法があります。

 

しかし、トップが独自で意思決定を行い下位に指示を行うトップダウンメソッドでも、中間管理職が軸になるミドルアップメソッドでも、そして現場の意見をもとに意思決定を行い行動するボトムアップメソッドでもない「トップマネジメントが着想し、現状分析→情報収集→仮説立案→情報収集→仮説検証→情報収集→仮説立案というサイクルを繰り返しながら確信を得た段階で最終意思決定を行い、下位に落とす」という形をとることが有効です。

 

トップマネジメントが現場や中間管理職と「コンスタントにやり取りをしながら意思決定を行い管理する方法」を我々はCIM(Constant Interchange Method=シム)と名付けました。

 

CIMでは、

  1. 意思決定を行うトップマネジメントが情報収集を行い、自分の考えを整理したうえで情報を下位に流す
  2. そしてその考えが正しいかどうかの情報を収集し、検証作業を行い判断を行う
  3. そしてまたその考えが間違っていないかを別の階層に下ろしたのち情報収集により考えの妥当性を確認する
  4. これら作業を納得いくまで繰り返し最終的に意思を決める

というながれをつくりだします。

 

決めたことをいきなり組織に落とすトップダウンでもなく、現場の意見を尊重し判断をするといった意思決定ではありません。

 

一端ボトムに落とし現場の情報を得て、検証し結果をミドルに落とし、彼らの持つ情報を判断するというプロセスを何度も繰り返しながら、さらにマネジメント層と議論し考えをまとめる、といったトップマネジメントと組織内を行き来する絶え間ない(ギザギザした)やり取りのなかで、最終決定を行うものです。

 

この方法による意思決定は、既に現場の事情や意見を汲んでいるし中間管理職の考え方も聞いた結果なので、トップマネジメントからある決定による指示が行われたとき組織に受容れられやすく、皆が同じ方向を向いて行動することができて成果を出しやすいという大きなメリットもあります。

 

意思決定に必要以上に時間がかかるのではないかという懸念は必要ありません。時間があるものはじっくりと、瞬時に判断が必要な案件については制約の中で効率的にCIMプロセスを回すことができるからです。

 

なお、トップが現状を把握して回るとことは必要条件ではなく、例えば経営企画やネットで意見を収集することでも事足ります。

 

敢えてCIM(シム)と定義することで当社は経営意思決定には、各階層を行き来しながら主体的に情報を集め、仮説検証を繰り返し徐々に意思を固めて、最終的に意思決定し組織に落とす、という意思決定プロセスを当社は採っている、ということを企業内に明らかにできるのです。

 

CIMを採れば、前述したように社員に「この件について現状や自分の思いを聴いてもらった」という安心感があります。結果、経営意思決定のプロセスにおいて全階層の参加の帰結として社員の自立を得られるのです。

 

この他業務の質向上のためのシステム化や業務改善提案制度など社員が変革や創造に関わりつつ力を付ける仕組みは多数あります。

 

適切なリーダーシップのもと、日々の指導や評価、教育制度も含め「自立」をテーマへの取り組みをしっかり行わなければなりません。