よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

ナレッジで組織は進化する

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組織のもつ知識やノウハウ(ナレッジ)は、

  1. 組織のルールや仕組みになり当該業務を担当する誰もが共有するナレッジと、
  2. 個人が個別に持つナレッジ

から構成されています。

 

ここでノウハウは、上手いやり方、コツ、やってはいけないことを総称する概念です。

 

時代のながれや環境そして事業内容の変化により求められらナレッジは変化します。以前にもっていた知識が必要なくなったり、新たな知識やノウハウが必要になったりを繰り返しながら事業が行われていくのです。

 

例えば手書処理で行った業務がシステム化され、次に自動化される、クラウド化する、さらにAI化される、という出来事はどの産業や業種にもあるイベントであり、そのことで個人の仕事やそれを支えるナレッジも入れ替えが必要なことは誰でも理解できます。

 

個々のプロセスのなかで必要なナレッジを習得できている個人にも差があり、環境や仕事に柔軟に適合できる人もできない人もいて、その濃淡により仕事の質や生産性、ひいては組織の業績が影響を受ける、という事実も身近です。

 

組織として、常にそのときに必要なナレッジを網羅し、そのナレッジが適切に使われ事業が行われているのか個人別に評価し、不足するところを何等かの方法により補完していくとともに、時代や環境、事業内容の変化に合わせ事業維持発展に必要なナレッジを組織や個人が習得できるよう仕組みづくりを行う必要があります。

 

 

野中幾次郎が Knowledge-Creating Company (知識創造企業)(1995年)でナレッジマネジメントの考え方としてSECI(セキ)モデルを提唱しています。SECIモデルは、

  1. 共同化(Socialization)
  2. 表出化(Externalization)
  3. 連結化(Combination)
  4. 内面化(Internalization)

という4つのステップで誘導される知識創造のプロセスです。これは、個人のノウハウを組織全体で共有し、組織のノウハウを個人に(移転)移植しようという考えです。

 

目に見えないノウハウである暗黙知を常時共有化する文化を形成するとともにお互いに知っていること得意なこと、あれやこれやの話し合いの場を設け組織で共同化し、その暗黙知をマニュアル等により可視化し、目に見えるノウハウである形式知に変換し表出化します。

 

次にマニュアルを皆で確認しながら、標準化、簡素化、代替、移管、システム化、内製化・外注化、廃止などの業務改善により改訂(連結化)することでマニュアルを進化させ、それらを使った主にOJTによる教育で形式知を個人の暗黙知に変換し内面化します。

 

「目に見えないものは変えられない、可視化により改善が容易になる」という事実をしつかり理解しなければなりません。

 

マニュアルがない組織やマニュアルを作成して終わりの組織が多くあります。マニュアルは単なる手順書ではなくノウハウ書です。またマニュアルは常に改訂し動態的に活用する必要のあるツールであり、個人の創造や進化を誘導する媒体です。

 

個人のクリエイティビティにより業務を進化させるために、マニュアルを教育や業務改善に活用している組織は高い成長力を以て発展しています。

 

ただ、そもそもマニュアルは、すべての業務や仕事のナレッジを網羅できるものではありません。なので普段のミーティングによる情報共有は大事だし、話し合いにより個人の暗黙知を膨らませていく必要があります。

 

前述したように何かを得意な人、よく知っている人からの暗黙知での教育も重要ですね。しかし、それを個人のナレッジに留まらせるのでは組織は継続的に進化できません。できる人が辞めた途端に業績が落ちるのはよくある事です。

 

ルール化、マニュアル化できるナレッジを管理しルーチンに活かすとともに、ここが最も重要ですが、マニュアルを業務改善などにより改訂することで業務を進化させ業務や事業の質を高める取り組みが求められているのです。

 

  1. 暗黙知から暗黙知(共同化)
  2. 暗黙知から形式知(マニュアルにより個人知を組織知に)(表出化)
  3. 形式知から形式知(業務改善)(連結化)
  4. 形式知から暗黙知(教育)(内面化)

という1から4を繰り返し回すサイクルができているかを確認しましょう。

 

なお、前提として、創造が生まれマニュアルが進化するまでにはタイムラグがあり、それを補完するために常に暗黙知から暗黙知をつくるための評価や教育の仕組みも必要です。

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我々は、マニュアルやフローチャートを作成・運用するとともに業務改善によるマニュアル改訂を行い、クライアントの経営改革を支援していますが、多くの組織が自らを進化させ、厳しい時代を乗り越えるため、

  1. スタッフのやる気を醸成するマネジメントを基礎として、
  2. 組織として求めるスキルの到達点の設定を行い、
  3. あらゆる手段を活用し個人の技術技能向上やそれを達成するための仕組みづくりを行う。
  4. その重要な手段の一つとしてSECIモデルを活用する。

ことが期待されています。