社員と組織の間でコミットメント(公約)を行うことが有効です。コミットメントは、社員のやる気が組織を動かす事を背景に組織と社員が両者の行動や成果に対する約束をするためのものです。
自分がやりがいのある仕事をすることや成果を挙げることを組織と約束し、約束したことを組織の支援を受けながら達成する。そのことで、社員は達成感を得て次のやる気をつくり出すとともに、さらに組織からの評価(承認)で次の仕事への意欲をもつことができます。
社員が、自分のやりたいことを確認し、また見つけて、組織目標とすり合わせ、組織目標達成を行うなかで同時に自分の目標を達成できるよう、上司とOne on oneの面談を行い、コミットメントを行います。
コミットメントは、評価→役割(付与)→依頼→達成支援のフローで行います。これをコミットメントシステムといいます。我々が開発したコミットメントシステムについて、以下「依頼」までのプロセスを説明します。
(1)評価及び思いの引き出し[評価1]
情意考課、能力考課、業績考課、日常活動、勤怠等通常の人事考課の内容をチェックするとともに、意向調査や社員属性(仕事の嗜好)への質問を行います。社員が「仕事を通じて何を成し遂げたいのか」、現在「どのような思い(テーマ)をもって仕事をしているのか」を引き出す手順です。併せて、仕事に関わる当該社員は「どのような性格なのか」をも明らかにします。
これらの質問により、自分が気づかなかったことも含め、自分がどのような仕事をしていくのかを考えることを要求しています。
- 普段からこんな風になりたいという思いをもち行動している社員や
- 思いをもっているけれども行動していない社員
- まったく考えたこともなく懸命に日々仕事をしている社員
- 日々漫然と仕事をしている社員
等すべての社員に対し自らの考えを整理し、まとめ、あるいは気付いてもらうことを目的としています。
(2)社員の思いの程度を明確にする[評価2]
社員の思いの程度(前、中、後)の推定を面談により確認します。このプロセスは(1)に示した内容を確認するなかで、思いの程度を確認し、優先順位を決めるために活用します。なお、やりたいことについて考えたこともないけれども懸命に日々仕事をしている社員や、日々漫然と仕事をしている社員は、将来どうなりたいかの自分の思いの整理を行うためのサポートが必要になります。
上司は、「この件についてどう考えていますか?」と質問をしながら、社員の客観的な情報から「〇〇が得意そう」「○○をしたらどうですか?」「〇〇をして欲しい」といったアドバイスを行い、思いの程度を確認するとともに、場合によれば組織の求める方向に誘導することもあります。
(3)社員の目標となるテーマを抽出[評価3]
テーマの確定を行います。上記で思いの程度を明らかにしたあと、社員の思いをまとめます。テーマが明らかになることで、社員は、「自分は何をしたいのか、何をすればよいのか」が明確になります。自分でもっていた思いや、上司との面談のなかで整理された思いをテーマとして確認することでコミットメントの準備が始まります。
- スキルを身に着けたい、
- 資格をとりたい、
- 新しい仕事に就きたい、
- 大きな仕事をしたい、
- 地道に仕事をしたい、
- 仲間と一緒に何かをつくりあげたい、
- リーダーになりたい
等が代表的なテーマです。
なお、本人のテーマとして、例えばリーダーになりたいというテーマがあったとしても、その社員にはまだまだやるべきことがあり、まず地道に仕事をしてから経験を積み、そのうえでリーダーを目指そうと話し、理解してもらわなければならない社員もいます。社員の思いとテーマが合致しないことがあるのです。上司の評価や、他者からの評価など、第三者評価を参考にして社員にテーマの設定に対する適切なアドバイスをしなければなりません。
社員の思うテーマが組織にとり、そして本人にとり適切なテーマであるのかどうかを確認しながら本人の仕事に対するテーマを決めていきます。
(4)部署目標の確認[役割1]
組織(部署)目標の確認を行います。部署目標が記入されたシートを社員に渡し、自部署にはどのような目標があるのか開示します。
(5)テーマ擦(す)り合わせ[役割2]
提示された部署目標に対し、自分の思いを達成するためには、部署目標にどのように取り組んで行けば。部署目標を達成しながら自分の思い(テーマ)を遂げられるのかについて上司と一緒に考える段階です。
先ほどの「リーダーになりたい」というテーマには、「マニュアルを作成・運用する」という部署目標があれば、プロジェクトリーダーとして現場での体制づくりをしてもらえますか(依頼)」という使い方をします。
上司がテーマをどのように部署目標のなかで位置付け、部署目標を達成するなかでテーマもクリヤーできる、ということを説明できるかどうかがこの手順の重要なところになります。社員が少しでも自分の思いを遂げて達成感を得られるよう、個人目標を設定するのです。
(6)公約の確認[役割・依頼]
社員の目標達成に対する公約(納得感)を確認する手順です。上記の結果をコミットメントシートの公約欄に記入します。本来は社員が直筆で記入することや、再インをもらうことが必要かもしれませんが、「この部署目標に対し、私は自分の思いを達成するために、これを行っていきます」という意識をもって公約欄に社員の役割を記入することになります。「これはあなたにお願いしたい」「一緒に達成しよう」という依頼を行うことも忘れてはなりません。
結論として、社員がやる気になるために、組織はどのような取組みを行えばよいのか。最優先として社員が達成感や承認を得る場面を増やすことが必要です。日々の小さな喜びのなかで感じる小さな不定期の達成感だけではなく、決めたことを成し遂げて得られる達成感が大切です。
決めたことを成し遂げる達成感のうち、組織から自動的に落ちてきた目標の達成感だけではなく、自ら納得して、自分の思いを達成できる達成感を仕組みとして用意したものがコミットメントの仕組みです。
なお、リーダーは、
- 目標管理における目標が定量的で、
- 適切な解決策に裏付けられて設定されていること、
- One on oneミーティングを部下に信頼して受容れてもらえる自分づくりや、
- 達成感を阻害する組織やリーダーの行動
についても併せて学習し、求める成果が挙がるよう達成支援を行う必要があります。
これらの課題も解決しつつ、コミットメントシステムの体系化が行われなければなりません。間違いなく組織、社員の双方において従来にない成果を得ることができます。