組織マネジメントを行うときには、組織と社員の関係づくりや、社員がどうすれば情熱をもち仕事に取り組みできるのか、といった視点を欠かすことはできません。
社員が自立し自らの仕事に対し主体性をもち行動することで、彼等の挙げる成果は大きく異なります。また、社員も自立することで自らを大きく成長させることができます。「自立」がキーワードです。
自立して主体性をもち行動するためのきっかけがどこにあるのかは、生れ育った時代や個別環境、友社員、働いた組織、職場の上司、仕事の経験、顧客、経済状況等々さまざまですが、結局は人が自立するためには
- 何かをしたい成し遂げたいという思いや
- 信念をもち、
- 特定分野で自分のスキルや
- 人間力、
- コミュニケーション力
を高め、どの組織にいても、また独立しても、「どこでも通用する社員」になれるよう行動することが有益です。
同業種、同規模であっても、他の社員の質やマネジメントのクオリティや取引先など実際には全く同じ条件や環境の組織はあり得ないので、完璧な比較はできないものの、同じ仕事を行った結果、ある組織のなかでは認められ(通用し)他の組織では認められない(通用しない)というのでは、当該社員の実力には客観性があるとはいえません。
なお、経験上どこかで何かを成し遂げて認められた人は、多くの場合他の組織でも同じように成果を挙げることができます。場合によれば何かで高い評価を得た人は、違う何かをしてもいつも高い評価を得ることがあります。
そうした「違う何かをしても高い評価を得る」自立した人は、個々の仕事の成果の背景にある「仕事をうまくやるコツ」を掴んでいる人だと思います。
- 仕事の全体や連関する事項を俯瞰し、
- プレイヤーを掌握。
- 手順を理解し、
- 段取りをとり計画し、
- 実行し、
- 他人の支援を得ながら
目標達成まで行動できる人たちです。
独立するとか起業するのではなく、「どの組織でも通用する」スキルや人間性、能力をもてれば組織に従属せず、依存せず常に力を発揮できます。
この人は成果を挙げられる、信用できる、というブランドをつくることが有効です。少なくとも「どの組織でも通用する」という自立の段階を目指し自らを鍛錬することは社会人の心得ではないかと思います。
小さなことでもよい、前述したように、自分の仕事にどのような思いがあるのか(何をやりたいのか)、どのような信念があるのか、スキルを高めるために何をしているのか、どのように自分の人間性を高めていくのか、どのように他者とコミュニケーションをとり関係していくのか、を一つ一つ振り返り、自分が「どの組織でも通用する」社員に近づくための成果を挙げているのかについて振り返る機会を多くつくる必要があります。
ただ、いま自分にはやりたいことがない、思いがないという人が多いのも事実です。何をやりたいかが明確でなければ、まずは目前の仕事に精通するところから始めます。
ただ言われたことを「知る」だけで闇雲に行うのではなく、内容を「理解」し、『あ、これは私がやる仕事だ』『自分の仕事だ』として「受容」し(受容れ)て、手を抜かずに場面場面で懸命に行うことが適当です。
仕事の概要、業務フロー、自分のパートの手順、ノウハウ、関係する人々とのやり取り等の掌握を行い、個々に熟達したうえで課題を発見、解決を行うとともに仕事の迅速性や正確性、求められている質の担保を行います。
それがうまくできるようになれば、経験や客観的評価を積み上げて次々にステージの高い仕事への誘導が行われます。そのなかから自分の得意な分野、興味のある領域への思いを見つけ、自立を見据えた次のステップに進むというアプローチです。
主観的、客観的に自分の立ち位置をみるために生まれたスケールがISM(Independence Stage Management)です。
ISM(Independence Stage Management)は、社員の自立の状況を4つのステージに区分し、それぞれのステージにいる社員に適切なマネジメントを行うことで、できるだけ多くの社員に自立を促す方法です。社員から見ても自分を振り返り自立のためには何を行えば良いのかを気付かせてくれるスケールになります。
自立した社員は、社内外の連携を通じたより一層の高い成果を挙げていけるようになります。
ISMは、次のプロセスで実施します。
- 自分のステージ評価
- 課題抽出
- コミットメントによる課題解決目標化
- 解決支援
- 課題解決によるステージ移動
まずは、「全社員のステージ評価」は次の4つのステージで表現します。
ステージは自立度を会社への依存度と独立度の組み合わせで構成します。会社に依存している程度を評価し、併せて会社から独立している程度を評価することで自立の状況を焙りだそうとするものです。
社員の自立を期待して、会社は適切な社員材配置と仕組みにより組織目標を達成していきます。会社ミッション達成のためには社員の貢献が不可欠です。社員の貢献があることで会社は所期の目標を達成できます。しかしISMでは貢献度を評価基準にしていません。「貢献」は自立した社員が連携し成果を挙げて初めて到達する領域であり、自立の状況を直接判断する基準ではなく帰結であるとしています。
さまざまな理由により環境が短期間で目まぐるしく変化する現状では、社員が予め設定された活動目標や行動様式を受容れ順応するだけでは、会社は柔軟な環境適合ができません。従来のやり方である時点での組織目標を達成しようと活動することも必要ですが、指示通りに仕事をすれば事足りる時代ではありません。ほぼ同じことを続ける日々から抜け出せない度合いを依存度と言っています。「確実に同じことができる」高い依存度を持つことも重視しつつ、それだけでは不十分な領域を独立度で評価します。
ここに、依存度においては、組織目標達成のために規律を持ち協調して行動しているか、また自らの役割に対し、責任をもち積極的に行動しているか、結果として目標を達成し実績を挙げているかが評価されます。規律、協調、責任、積極の4項目は、仕事に対する姿勢や態度をみる情意考課の項目でありとても身近です。実績については業績考課の対象でもあり、評価する会社において現状の評価制度と親和性が高いと考えています。
そして独立度です。仕事ぶりが従順で実績が挙がったとしても、言われた通りに行動し低い生産性を以て成果を挙げているのでは会社は変わることができません。独立度は、社員一社員ひとりが、これをやりたい、こうなりたい、こうしたいという思いを信念に変え、自分の進むべき道をはっきりさせて、それぞれの得意分野でプロとして独立している度合いをいいます。
独立度の高い社員は、将来を見通したうえで目標を持ち粘り強く取り組むことで周りを巻き込み成果を挙げます。置かれた現状を改革し組織を変えていける社員です。独立度が高ければ、会社文化や風土や計画、仕事の方法に順応しても依存せず、自らが率先して価値を生むことができるのです。
常に向上心をもち、技術を身に着け、他者から求められる社員になるよう取り組むとともに社員としての気遣いや思いやりをもち他者の力を引き出すなか、ともに改善や改革を進め生産性向上や価値創造を行なっているかどうか社員に求められている自立の要素です。
独立度として、向上心、技術力、社員間力、コミュニケーション力、改革力の程度が評価されます。
上記より、
会社への依存度は、
1規律
2協調
3責任
4積極
5実績
により評価するし、
そして、会社からの独立度は、
1向上心
2技術力
3人間力
4コミュニケーション力
5改革力
により評価することが分かります。
上記で説明した依存度を縦軸に、独立度を横軸にとります。依存度は下から上に、また独立度は左から右に値が高くなります。そこに生まれた空間を4つのステージに区分します。
左下 低依存度・低独立度
左上 高依存度・低独立度
右下 低依存度・高独立度
右上 高依存度・高独立度
がそれらです。
それぞれにはステージの特性を表現する名称を付しています。
低依存度・低独立度 ハンモック
高依存度・低独立度 ベッド
低依存度・高独立度 チェアー
高依存度・高独立度 スタンディング
がそれらです。
ハンモックのステージにいる社員は「リゾート社員」です。ハンモックは南国のイメージ、休暇のときの時間をゆっくり過ごすときにリラックス効果を得ることができます。自立度でいえば、面従腹背してやらない、言われたこともできない、向上心もない、現状を気にしないという気楽な状況です。
ベッドのステージにいる社員は「ぬくぬく社員」です。組織目標達成のために、それなりの姿勢や態度をもって行動し、一定の成果を挙げている社員です。しかし、結局は指示通りに仕事をして、同じことを続けることから抜け出せていません。「なんとなく一生懸命にやっているのでいいだろう」という安心感や心地よさをどこかに感じながらも変われない自分に気づいていません。
チェアーのステージにいる社員は「腰かけ社員」といわれます。ここにいる社員は、独立度を評価すると高いポイントを付けられるけれど、どこか組織のベクトルと合っていない社員ですが、これをやりたいという信念をもち、将来を見通した目標を持ち自分の進むべき道をはっきりさせています。ある分野で高い能力もあり行動しますが、この組織のためには働きたくないと考えています。
スタンディングのステージは文字通り「自立した社員(An independent person)」です。企業に依存しても一方で独立心を持ち、率先して自ら価値を生むことができる社員です。常に使命感や向上心をもち、プロフェッションとして求められる技術を身に着け、人から求められる社員です。人としての気遣いや思いやりをもち常に進歩しています。また、改革を進め高い生産性向上や価値創造を行ない進化しながら組織貢献し結果を出し達成感を得続けていく社員です。自分はどの位置にいるのかを確認し、自立に向けて行動する必要があります。
詳しくは別項で説明しているのでご覧ください。
常に会社側がISMを理解し実際に依存度と独立度の評価基準をポイント化し調査を行います。自社の現状を分析して、「当社にはハンモック社員が多い、どこに出しても恥ずかしくないスタンディング社員は少数だ」、とか「やばい、腰かけ社員だらけじゃないか」とかの、結果を享受したうえで課題を抽出し、一定数のスタンディング社員育成を行うための対応を行います。
また、社員が自分はどこのステージにいるのかを確認し、そこからどのように自立への道を辿ればよいのかを考えてもらう機会にしていくことがこれからを生き抜くために必須です。
主観的評価と客観的評価により、自分の立ち位置を判断します。まずは、主観的な評価は自分のなかでできているかの確認を行い、そのうえで他者からの評価を得て自己評価を修正していくことになります。別の機会に詳しく説明します。これからを生き抜くためどう自立していくのか大きなテーマだと思います。