よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

健康で豊かな生活を送るために

私たちの生活には医療を欠かすことはできません。

 

コロナ渦になり医療がより身近に感じられるようになったのはこの数年ですが、メタボリックシンドロームがきっかけになり、国民が健康に目を向けるようになったと考えています。

 

内臓脂肪が過剰に蓄積され、血圧上昇、空腹時の高血糖、脂質の異常値がみられる状態をメタボリックシンドロームといいます。メタボリックシンドロームは広義でいえば病気であり脳梗塞、心筋梗塞となる動脈硬化のリスクを高めます。

 

世界中で過栄養と運動不足を背景にした動脈硬化疾患が急増してきたことを基礎として、2002年に世界保健機構(WHO)が動脈硬化を起因とする心臓血管系の病気の予防を重視すべきと宣言し、2004年に日本でも栄養過多を原因として増加した心臓血管系疾患を予防するためいくつかの学会が合同で診断基準を作成しました。

 

多くの国民がメタボを意識し、健診や食事や運動への興味を持ち行動を開始した歴史です。このイベントを経て健康や医療に対する関心が生まれ、健康であることに対するムーブメントが起こりました。しかし、医療にはまだまだ健康をサポートする、より多くの潜在能力があります。

 

先日お会いした大学病院の著名な医師は「病気にならないときの医者は役に立たない。自分で健康管理をしている。毎朝(拡張期血圧)90を切れと念じながら血圧を測り記録する。また、鏡を見て顔がむくんでいるか、全身をみて、飲みすぎたかな、運動できてないかなとか考えながら、むくんでいるかを確認する」と話され、「血栓をつくらない、血流がよくなるように痛むところやむくんでいるところをマッサージする。届かないところは誰かにやってもらえばいい」「歩くだけでも随分と違うよ」と教えていただきました。何気ない会話ですがとても重要な話です。自らの日々にセンシティブに向かい合い自分で健康管理をすることがいかに大切なのかを理解できました。

 

話していただいたのは専門的な医療の知識や知恵がある彼の、多分ほんの一つの行動についてだけだと思いますが、医療が生活のなかに浸透することの必要性を感じた一瞬でした。

 

心臓血管系疾患だけではなく、多くの病気に対峙するために人は医療と生活の距離をもっと縮めることが有益です。医療=健康にいい食事や食事の取り方、医療=健康にいい衣料、医療=健康にいい住宅、医療=健康にいい運動、医療=健康にいい余暇の探し方、医療=健康にいい教育、医療=健康に関する金融など、医療と事業の間にはまだまだ隔たりがあります。

 

但し医療が前面に出ると堅苦しく、ストイックな生活を強いられるという意識が行動を躊躇させらかもしれません。そうではなくて自然に人が健康で豊かな生活を送るために、生活のなかに医療の思いや知識や知恵が無意識に沁み込み、知らず知らずの間に心身ともに「健康で豊かな生活」を送れるようになることが理想です。

 

ここで「豊かな」とは経済的な意味だけではないことは明らかであり、その人らしく豊かな気持ちをもって、ということに視点があります。

 

事業の側から医療に近づき、健康で豊かな生活を支援する食品の提案、食事の提案を行うことには萌芽が見えますが、まだまだやれることはあります。衣料はどうか、住宅はどうか、運動はどうか、余暇はどうか、金融はどうかというと医療の視点からのアプローチはまだまだ一部の領域に留まっているのではないかという思いがあります。

 

スーパーや商業施設、レストラン、メーカー、アパレル、スポーツ店、ハウジングメーカー、興行会社、旅行会社、教育機関、銀行などが、人々がより健康で豊かな生活を送れるようマーチャンダイジング(販売政策)やマーケティングを行えれば、国民の効用はより一層高まります。

 

そもそも心身ともに健康であれば、人はどのようにでも行動できます。また、家族が健康であれば経済活動も疎外されることはありません。

 

もちろん疾患のある人々には医療そのものによる最善のケアや治療は必要だし、介護による包括的な支援もいままで以上に充実させなければなりません。きめの細かい政治や政策による支援や未来に夢のもてる国造りも求められます。

 

患者や利用者が安心してそれぞれの思いや希望に合ったケアを受け安定的な社会生活を受けられる環境づくりを前提としたうえで、医療をより生活に浸透させ、大きな意味での疾病予防や健康でいられるメリットを享受できるよう働きかけていくことが、厳しい環境のなか少子高齢化の進む日本にとり有益なビジネスモデルになると考えているのです。

 

自分は健康だ、と思っても不健康な人や隠れた疾患をもつ人は数多くいます。調子が悪くなってから慌てることや健康診断や人間ドックに免罪符を与えることもナンセンスです。日々の何気ない健康管理がとても大切です。

 

地域住民の健康で豊かな生活を守るために、診診連携や診療所のユニット化(複数の診療所で一人の患者を診る体制)によるプライマリケア(初期医療=身近にあって何でも相談にのってくれる総合的な医療)の提供機会を充実させるとともに、医療と事業との融合により医療の潜在能力をもっと生活に活かす工夫や取り組みが多角度的に実現されることを心から期待しています。

 

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