
自分の才能は限定的です。才能は「生まれつきの能力や、それによって物事を平均以上にこなせる素質(いわゆる得意分野)」をいいます。
その客観的評価法にはここでは言及しませんが、ある者が自分の意思で何かの仕事を始めたとき、自分の得意分野だけで物事を進めていくのは間違いなく困難です。
自分であればなんでもできるという思いや意思は必要ではあるとしても、実際上自分一人でありとあらゆることを期待値レベルで行うことはできません。
例えばどのような事業でも、マーケティングや戦略立案、事業計画立案、ガバナンス体制整備や実務や営業、組織開発、HRM、財務会計等、さらにそれ以上の分野においての対応が必要です。
仮にラーメン店一店舗を開業する場合であっても、間違いなく狭い範囲で上記が行われます。お店を繁盛させるためには、マーケティングとして出店の場所、商品の特性、価格、プロモーションを明確にするとともに、来店客数の見込みや仕入れ、変動費や固定費の分析、目標設定や目標管理、そして自分やアルバイトのシフト管理、マニュアルづくりやOJT、日々の段取り、時間管理や評判づくり、資金調達や漏れのない金銭管理、毎月の採算分析等がそれらです。
いわんや二号店を出店する、チェーン化するといったときにはより慎重な対応を行う必要があります。ラーメン店に勤務した経験を積んだ者であれば、おおよそのノウハウを持っている可能性はありますが、それでも成功体験の再現は環境変化により変動し、過去のやり方対応できる確証はありません。一人ですべてをやれると考えるの危険です。うまくいっていると思っても抜けていることが必ずあるのです。
試行錯誤を行いながら活動を行う多くの事業では信頼できる自分以外の才能(得意分野)をもった社内外の者との協働が必要な理由です。
ビジネス上、なぜ“仲間(協働者)が必要なのかを明らかにする理論には以下があります。
1資源依存理論(Resource Dependence Theory)
企業は単独では重要資源(人材・資金・知識・販路・許認可など)を完結できず、外部との関係で生存・成長する。仲間(提携先・共同創業者・キーパーソン)は「資源へのアクセス」を作り、依存リスクを分散する装置になる。
2リソース・ベースト・ビュー(RBV)/コア・コンピタンス
競争優位は希少で模倣されにくい資源・能力から生まれるが、それはしばしば“個人ではなくチームの集合知”として成立する。仲間は能力を補完し合い、「強みの束」を作ることで優位性を厚くする。
3関係的ビュー(Relational View:Dyer & Singh)
競争優位は企業内部だけでなく、企業間関係の中で生まれる(関係特有資産、知識共有、補完性、ガバナンス等)。仲間とは「関係そのものが資産になる」相手で、単独では出せない成果(共同価値)を生む。
4戦略的提携論/アライアンス戦略
不確実性が高いほど、提携・共同開発・販売連携などでスピードと範囲を確保するのが合理的。仲間は“時間を買う”存在で、学習・市場参入・規模拡大を加速させる。
5ネットワーク理論(Network Theory)
企業や個人はネットワーク上の位置(中心性、構造的空隙など)で情報・機会・影響力が変わる。仲間が増えるほど「情報の早さ」「紹介」「信用の移転」が起き、機会が増える。
6社会関係資本(Social Capital)
信頼・規範・互酬性・ネットワークが、取引コストを下げ、協力を引き出し、成果を上げる。仲間の本質的価値は“信頼の貯金”で、ピンチの時の支援や交渉力にも効く。
7ステークホルダー理論
企業は顧客・従業員・地域・行政・取引先など多様な利害関係者の支持で成り立つ。仲間は「支持基盤を形成する存在」で、正統性(レピュテーション)と継続性を高める。
8取引コスト理論(Transaction Cost Economics)
市場取引は常に最適ではなく、探索・交渉・監視・機会主義リスクなどコストがかかる。仲間(信頼できる長期パートナー)がいると、そのコストが下がり、取引が速く安全になる。
9ゲーム理論(協力ゲーム/反復ゲーム)
単発取引だと裏切りが合理的になりやすいが、関係が反復されると協力が合理的になる。仲間がいることは「協力が成立する制度(未来の反復)」を作り、長期利益を最大化する。
10探索と深化(Ambidexterity:両利きの経営)
新規探索(探索)と既存深化(深化)は求める能力が違い、1人/1チームで両立しにくい。仲間がいることで役割分担が可能になり、“攻め”と“守り”を同時に回せる。
11組織学習論(Exploration/Exploitation、知識創造)
知識は対話・共同作業・試行錯誤のプロセスで生まれやすい。仲間は視点の多様性を持ち込み、学習速度と失敗の質(検証の精度)を上げる。
12変革型リーダーシップ(Transformational Leadership)
人は理念・意味づけ・一体感によって高い内発的動機づけを持てる。仲間がいると「共通の目的」が立ち上がり、個人の限界を超える推進力になる。
13心理的安全性(Psychological Safety:Edmondson)
チームで失敗や疑問を言える環境があるほど、学習・改善・事故予防が進む。仲間は単なる“人数”ではなく、安心して挑戦できる土台(再現性ある成長環境)を作る。
14チーム役割理論(Belbin など)/補完性
成果には多様な役割(推進、調整、分析、創造、実行、品質管理など)が必要。仲間が必要なのは、人は得意不得意があり、補完しないと“抜け”が必ず出るから。
15共有・分散型リーダーシップ(Shared Leadership)
複雑な環境では、リーダー1人が全て判断するより、権限と知性を分散した方が強い。仲間がいることは“判断の分散”であり、スピードと精度を両立させる。
結果として分類すると、
- 資源足りないものを補い、依存やリスクを分散する(資源依存/RBA=リスクベーストアプローチ)
- 価値関係そのものが優位性になる(関係的ビュー/提携)
- 機会情報・信用、紹介でチャンスが増える(ネットワーク/社会関係資本)
- 実行役割分担で両利き/スピード・品質が上がる(両利き/チーム理論)
- 継続信頼が取引コストを下げ協力を成立させる(取引コスト/ゲーム理論)
ということになりそうです。
私毎で恐縮ですが、社会で経験を少し積んだあと傲慢にも信満々で一人で何でもできると思い込み、事業を始めました。長い間、さまざまな仕事を行うなかで真実を少しずつ理解し、なんとなく感覚をつかみ、上記の考え方のように行動しています。
事業を始めるときに、こうした考えを始めから知っておけば、先ずは謙虚に仲間づくりを率先して行い、もっと早く事業に必要なリソースを確保し、協業できたと考えています。そうすることこそが楽しくやりがいのあることだと心底感じています。
事業は彼ら信頼できる多様な仲間(人材)と共に作り上げるものであり、成果を共有することだと意識して行動すればよかったと、いまさらながらに残念な思いになります。
限られた時間ではありますが、今手掛けている事業について上記をより一層胸に深く刻んだうえで日々の業務に取り組みを続けていきたいと考えています。