よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

リスクマネジメントの問題点(4)

「4.周知される方法が確立されていない」

 対策を立案して、通達を出す、あるいはマニュアル化する、といったことが行われればよいほです。一般的には、これらが行われないという印象です。マニュアルへどの程度反映しているのの調査を13の病院で評価したら、23%という結論がでました。

 23%のマニュアル化率の原因は、
 ①マニュアルが網羅的に作成されていない
 ②マニュアルを改訂するシステムがない
 ②マニュアルを改訂するシステムはあるが、委員会同士の連携が悪く機能していない
といったことがあげられます。

 すべての業務をマニュアル化し、ナレッジを積み上げることによって、常に仕事のそばにおくことで、仕事の仕組みを変えたり、個人のスキルを高める仕組みをつくることが必要です。また、リスクマネジメント委員会とマニュアル委員会(手順委員会や業務改善委員会でも可)が常に連携を行い、タイムリーにマニュアルが改定される仕組みをつくることも必要となります。


 勿論、マニュアルの改訂はリスクマネジメントだけではなく、積極的に業務改革を行うための改善提案制度を導入するなどして、有効に実施することができます。改善提案制度を整備する、といったこともマニュアルを改訂する大きな誘因になります。ちなみに改善提案制度でマニュアルを改訂したスタッフのうち優れた改善を行った者は、表彰されるなどの制度を導入すればよりモチベーションは高まります。
 
 そうした仕組みがあればこそ、「5.徹底さされているかどうかについて評価する方法がない」
といったことの前提が整備されます。まずは、基礎をつくり、そのうえでマニュアルを利用した教育制度を整備する、マニュアルを改定する、さらに「巡視活動」を行うことになります。

 巡視は、インシデント、アクシデントが発生し、立案した対策が実施されているかどうかをチェックするために行います。まずはインシデント、アクシデントの対策を開示し、徹底を促すとともに、マニュアル化し、マニュアルの教育に結びつけたのち、巡視を開示します。
 
 巡視中の腕章を腕にまき(安全パトロールとするところもあります)、チェックシートをもって随時実施します。チェックの結果は、上長に伝えられ、さらにできていない部門は2度目の巡視を受入れます。それでもできていなければ勧告、さらにできていなければ院長に報告といったながれをつくります。

 「6.評価されたのちどのように対策を徹底するのかについての権限がどこにあるのかがわからない」
という状況を打開して、リスクマネジメント委員会(あるいは巡視をする部会)に権限をもたせることが必要です。
 
 いかがでしょう。多かれ少なかれ、巡視をしている病院は増加していますが、システム化されていないことや権限が不明確なため、結局は趣旨が理解されていなかったり、成果をあげられなかったりしているのが現実です。

(続く)

「ドクタートレジャーボックス同時記載記事」