随分前に、医療事故で訴訟となるのは、次の3つであると説明しました。
①注意義務違反
②看護観察義務違反
③説明義務違反
これらについて十分に事前に検討し、それぞれが発生しないようにしようという意味でした。しかし、最近の医療事故の内容をみていると、他のいくつかの前提があるように思います。
それは、
②医療過誤訴訟を恐れた医師の離脱、看護師の離脱
①医師不足
といったことがそれです。
なぜこんなに問題がややこしくなってしまったのでしょうか?総論では議論できないほど多くの個別の事情が現場にはあるのでしょう。しかし、先日ある地方大学の元教授が話されたことが耳に残っています。皆東京にいっちゃうんだよね。東京で何しているのですか?フリーター医師か在宅医ということだ。
という話です。すごく短い会話でしたが、とても胸をうちました。
医師がなぜ、そうするのか、なんとなく理解できたからです。医局でさまざまな医師と話をすると大抵は、どうしよう、こうしたいという思いをもっている方が多いです。なのにそうするのは、今の病院での
自分の医療に自分が見出せないからではないでしょうか?最近クライアントの医師が辞めました。
院長との折り合いがうまくできなかったからです。こうした話はあちらこちらにあります。それが本人の属性に起因するものであるのか、そうではないと思います。それもあるでしょうが、やはり病院としてどれだけ地域に貢献し、医師を必要としているのかについてトップが語れないのではないか、そんな想いがあります。
病院全体が活性化し職員全員が医師のリーダーシップのもと、一定の目的に向かって動いている病院は、もちろん、医師固有のすなわち、自分の技術を追求する、どこまでも自分の医療をしたいという思いのなかでのある我侭があることは事実です。全員があらゆる場面で協調することはできないでしょう。しかし、最終的にはマクロの部分で納得し、どこかでベクトルを合わせているよい病院が数多くあります。
どんな過疎地でも、トップのリーダーシップで成果をあげている病院もたくさんあります。医師が働きやすい職場、それは看護師や子メディカル、そして事務方も働き易い職場ではないか。であれば、まずは病院一丸となって、トップのもと組織活性を行うための医師の働き易い職場づくりに着手することが最優先課題ではないかという結論をもちます。
成長する病院では、多少の不都合はあっても医師は力を抜かない、これが多くの良心的な医師の姿ではないかと、いま私は考えています。
「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」