よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

DPCと原価計算(1)

 患者別疾病別原価計算は残ろうとする急性期病院には必ず導入されるべき管理会計の一項目です。
これができなければ、いくらベンチマークをしたり、他の病院と比較してもまったく意味がありません。同じ治療をしている。

 同じ請求である、といっても他病院と自院の損益構造が異なるからです。明らかにA病院は建物が古く、また機器もそれほど新しくなく、且つ過去からの自己資本で借入れも少なめに経営している病院ですが、B病院は建物を建て直したばかりだし、人件費率がA病院よりも高い。医療材料の仕入れや、医師が新人である比率が高く、どうしてもコスト高になる手術をしている、なんていうことがあるからです。基本的に収益をどう比較しても、そこから新しい発見はありません。

 あくまでもその収益に対し、いくらの利益がとれるのか、もっと利益をとるためにはどのような工夫をすれば良いのか、それは医療材料か、消耗品か、あまりにもAさんに時間をかけすぎているのか、医療事故が起こっていたのか、教育体制は整備されているのか等々、明らかに損益のなかみが異なるのです。
 
 こんなものを比較していったいどないするんや~っていう感じです。他はどうでもよい、というわけにはいきませんが、EBMの観点やガイドライン的に診療内容を検討することは必須としても、自院がこの治療についてはいくら利益がでるのか、あるいはこの処置には、この疾患にはいくら利益がついているのかといたことを原価計算のなかで理解し、病院が決めた利益率をとるためには、どのような質を維持しながら生産性をあげた医療を行っていくのかについての業務改革をしていくことに意味があるのです。

 これを気が付かずいつもシミュレーションやベンチマークをしているDPC適用病院や準備病院は、業務改革が組織に定量的にブレイクされず、常に他をみて、目を内に向けず、淘汰されていくのです。自らの損益構造や原価構造を理解したうえで、粗利の改革をしていくこと、自院のポリシーを維持しながらそのなかで工夫をしながら、よい医療を追求するためには、他はどうでもよいでなないでしょうか?

 自院がどのような医療を行い、そしていくら利益をあげていくのか、それは地域にどう還元するのか、職員にどう処遇として返していくのか、どう留保し投資していくのかについて自院の管理会計システムを構築していくことが必要です。

 これはベンチマークを否定しているのではありません。増患、在院日数短縮、そしてコスト管理ができなければ、DPCは根底から崩れます。それらを体質的に成し遂げられるあらゆる方法や手段を講じる必要があるのです。全体の治療のポートフォリオをつくり、どこで利益をとる。どこは利益をとらないといったことについても全体として計画し、計画を粛々と遂行していくことが必要であるということなのです。

 シミュレーションを幹部がするのはOK。しかし現場に医療の質を軸とした業務改革を促し、自院の戦略や自院の思想を地域に展開していくことこそが今必要である、と私たちは考えているのです。私たちのクライアントは皆そうした考えをもって、他はあまり気にしていません。

 そうした病院のトップは、ベンチマークをして他の病院と治療や処置の内容な収益を同じにすることがなぜ、そんなに必要であるのかわからないといつもいっています。




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