よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

後期高齢者医療が導入される(1)

 後期高齢者医療が導入されるとどうなるのか、多くの病院は戦々恐々としています。一番素敵な方法は自院から医師を一人だし(辞めてもらい)病院の前に一部外来分離することです。この方法で、自院にかかる患者さんは、みなその診療所で初診をしてもらうということになります。

 しかし、実はそこで検査をしたりすれば病院にいかなくとも済む患者さんが多かったりします。結局以前はなしたことがあるかもしれませんが、心配だからということで大学病院や大病院、あるいは病院にまず行くという行為は、もしかしたら本当に無駄なことであるかもしれません。しかし本当に重篤な疾患をもっている患者さんを診療所で拾えるかどうかといったことには常に疑問があります。

 プライマリーの段階で多くのアプローチができる医師が沢山いれば、そうした心配はないのでしょうが…。この当たりの解決がフリーアクセスの制限といったことには常に付いて廻ると考えます。

 ただ、今回の改正直後(来年4月以降直後)においては、定額制程度の話で落ち着くのではないかといわれています。ただ、自己負担が増えた患者さんの受診抑制が起こることはすぐに予想されることで、病院にいけないので亡くなった奥様を屋上の冷蔵庫に入れて放置したというご主人が逮捕されましたが、これが事実かどうかは別として、こうしたことがまことしやかに新聞発表されるという時代になったということでもあることは認めなければならないでしょう。

 入院を断り通院で治したいという患者さんが増えているという事務長のことばは、病院は大変だな~と考えるとともに、地域で生きている住民の思いや悲しみが伝わるエピソードであり、とてもつらくなります。病院が残る。しかし地域住民は不幸せという公図をなくすためにどうすればよいのか。それを考えなければなりません。これはマクロ的な解決策でしか対応できない問題であるため、余計に辛くなります。また、明日はわが身でもあることを身沁みて判る気がしています。


 後期高齢者医療がどのように進んでいくのか、とても大きな問題であり、外来依存して手術の少ないいわゆる急性期病院の未来をつぶすものでもあります。それが国の狙いであるとしても、うまく着地できる方法を提供することが国の責務であると考えます…といって期待もできないので、自院が職員全員の力を出し切れる、そうした経営体としていくことが重要であるということではないでしょうか。リーダーとしての医師や幹部の行動がとても重要な局面を迎えたと考えます。


 選挙が終わったあと、後期高齢者医療がスタートします。消費税がもし10%以上あがったら多くの病院はコストを診療報酬に乗せることができず破綻しますが、後期高齢者医療制度下においても、多くの病院が患者をなくし、淘汰される坂道を転げ落ちることになると誰もが理解しています。
準備を怠らず。自院の戦略や政策について真剣に議論するとともに若年層を呼ぶ新しい標榜や新しい試みを早急に実施することが望まれます。


「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」