よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

クリティカルパスのすごさ(1)

 クリティカルパスは、医療の質の向上に絶対役立つと考えます。ここで医療の質は、その病院として最低限以上必要な医療や経済性合理性をすべて包含した概念です。

 最低限以上という意味は、最低限ではないがこれもしたいあれもしたいという医療ではありません。また経済合理性というのは、前段とセットとなる考え方ですが、極限までコストを引き下げるということではないものの、一定程度の利益(適正利益)を生むために必要なコストの範囲で利用されるレベルのコストです。
 
 とどのつまりは、医療の質は、必要十分な医療ではあるが、無駄を削ぎ落とし、このうえなく正しく行動したうえで発生するコストにより提供されるものでなければならないものであり、医療の質の向上は、その程度をより高めていくなかで達成されるものであると考えます。結果として医療の質は仕事の仕組み、個人の技術技能に表現されることになります。


 パスの領域でいえば、
(1)現状の医療を書き表したパスがあること(一次パス)
(2)パスの各項目の内容が医師や医療従事者ごとに異なることがないようプロトコールやチェックシートによりアセスメン  トされること
(3)他の病院のパスと比較し、どこが異なるのかを明確にしておくこと
がパスを医療の質の向上のために利用する第一段階です。

 この段階がクリヤーされるためには、すべての疾病についてパスがある。という状況にすることが前提です。不適用や適用頻度が低いとか高いということではなく、まずはパスをつくりあげておくことが必要です(パスができないという疾病はありません。要はどのレベルのパスであるかという違いです。幅がないパスと幅があるパスとの相違です)。

 この状況になっているのかどうかを各病院はチェックしなければなりません。

 なお、患者別疾病別原価計算をしていると、同じ疾病でかつバリアンスや変動がないにもかかわらず、1日の原価が異なることがあります。

 それは項目はパスどおりであっても、使う薬剤が異なる(直接材料費)、使う時間が異なる(直接労務費)といったことが発見されます。これは原価計算からパスの内容を統一すべきだという指摘が行われる領域であり、医師の使う薬剤の統一や、看護師によるばらつきが生まれないよう看護師の技術を統一したり、マニュアル通りに実施できるよう訓練することを意味しています。

 何れにしても、パスの項目が同じでも、薬剤名や使用量を明確にパスに記載しておくことや、各項目の実施にあたりマニュアルを作成し、マニュアルどおりに業務が進められること(勿論、業務改革は継続しマニュアルは常に改訂されることになりますが)が必要です。

 なお、当該パスを利用する者(看護師以外もすべて)は、マニュアルどおりに実施できるよう教育を正しく実施することなどが別途必要になります。

 パスはパスだけでは標準化されたことにはなりません。他のエビデンスやマニュアル、そして全体を理解するための関連図(アルゴリズム)とセットになっていなければならないのです。一次パスであっても、上記のことが理解されて利用されるのであれば、まずパスの機能を提供することができる段階のスタートを切ることができます。

 パスのすごさの第一は、業務を可視化したうえで、実施レベルで標準化することやコストを一定の範囲に収めることであるとともに、業務改革や教育へのきっかけをパスとしてつくりあげていく材料として役立つことにあります。
 次にはパスのすごさ第二弾を説明します(続く)。


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