よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

いやびっくり台風とリスクマネジメント

 西側の便はすべて欠航という状況で東に行く便だけがかろうじて残る空港は、閑散としており、団体旅行の人々が旅の残り少ない時間をいつくしむように笑顔でゲートに並んでいる姿がとても目立つ、そんな時間がながれていました。

 ときおり強く吹く風や風に煽られながら真横に飛ぶ雨が、もうすぐやってくる台風の使いとなって空港建物の窓に打ち付けられていて、早くとばないと…と焦る思いが少しずつ私のなかに芽生え始めていたのを思い出します。

 そんななか何もなかったようにアナウンスがあり、優先搭乗、そして全員の飛行機への乗り込みが完了し、台風が四国に差し掛かっている19時50分、私の乗せたJAL便は雨が降り続く伊丹空港を、何かを振り切るように、両翼をすこしゆらしながら力強く飛び立ちました。

 これは、私が台風に追われながらもいつもどおり家に帰りつくことができたいま、思いだす昨日の状況です。新幹線は止まったり動いたり、もし新幹線で帰ってきたらどのようなことになっているのかと思うと少しほっとしています(いまも静岡で新幹線はとまっています)。
 
 今回は何げなく状況を切り抜けたのですが、実際リスクマネジメントはとても大事です。台風のときには意外と飛行機がいいんですよね。

 一種のかけではありますが、何かを行うときには代替案をいくつかもち、意思決定をしていかなければならないことがたくさんあります。病院の場合には、日々こうしたことが数多くあり、システムのなかで必ず安全な方法を構築していかなければなりません。
 
 訴訟が起こるということが抑止のきっかけではなく、患者さんによい医療を提供しなければならない、ということがリスクマネジメントの基本であるべきです。今の風潮は少し、この視座を忘れている気がします。

 さて、医療過誤訴訟で問われる3つのポイントは以下のものです。
Ⅰ説明義務違反
(1)入院から退院までの説明機会列挙
(2)一般的説明事項の列挙
(3)書類等の整備
(4)クリティカルパス(患者用)作成
(5)個々の説明事項の内容検討
(6)ブレストによる患者さんからの疑問点抽出
(7)過去係争事件からの問題点抽出
(8)マニュアル整備

Ⅱ注意義務違反
(1)各部門での業務フロー作成
(2)各部門で注意すべき事項のチェック
(3)事故発生項目についての継続的改善
(4)書類の整備(フォーム、必要事項の検討)
(5)マニュアル化
(6)チェックシート化
(7)権限規程、職務分掌規程の作成

Ⅲ看護観察義務違反
(1)看護過程現状分析
(2)観察、診断、計画、実施、記録、(退院要約)といったプロセスの精度向上
(3)起案、審査、承認、報告についての具体化
(4)事故発生項目についての継続的改善
(5)患者情報管理
(6)知識の継続的習得
(7)監査によるウォークスルー

 何事も準備を徹底し、仕組み化し、そして徹底して習熟する。そしてその場でもっともよい判断ができるよう思考する。病院のリスクマネジメントはそんなながれをつくりあげ必要があると考えます。
 台風のおかげで、また自分を振り返ることができました。