よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

バランストスコアカードについて(4)

(6)BSCの周辺制度
  BSCを運営するためには、付随して、あるいは周辺としていくつかの制度が整備されなければなりません。
まずは戦略です。自院のSWOTが正しく認識できておらず課題が不明確であればいくらBSCを導入しても、達成するものが本当に病院に必要なものである保証はありません。当然のことですが、戦略が正しく立案されることが必要となります。

2つ目として、組織の基本的事項です。職員が何かを行うとき、その目的や理由をよく理解できるとともに、達成しようとする目標に向かって一体となって行動できる体質をもっているかどうかが問われます。こうした体質をつくりあげるための道具としてBSCを捉えることもできますが、やはりBSCだけでそれを成し遂げようとするのは困難です。

他に中間管理職のリーダーシップの醸成、職務分掌の明確化、権限や責任の設定、職務基準の決定等さまざまな制度を視野に入れた活動を行うことが求められます。

3つ目には個人レベルの教育や評価です。BSCでは、個人毎に目標を落とし込むかたちにはなっていません。しかし、目標を達成しようとすると各部門、各部署で設定した目標を個人毎の特性や属性、育成目標に合わせて目標設定することが不可欠です。

したがって、個人が役割や目標をもって行動できるよう、現場で指導したり教育することができるかどうか、そしてその結果として求める成果をあげたときには評価する仕組みがあるかどうかがBSC成功のポイントとなります。

評価制度のなかで評価するためには、業績評価の仕組みをつくり賞与に反映することになります。人事考課においては情意考課と能力考課と合わせ昇給昇格(そして昇進)の基準とします。少なくとも業績評価として賞与に反映するかたちがつくりあげられていればBSCに対しての誘因ができます。BSCを始める当初から、BSCで掲げた目標を達成した場合には賞与により処遇するといったことを説明することも必要であると考えます。

4つ目として部門別損益計算があれば、部門別の損益が判り財務的な評価を行うことが可能です。また、予算実績管理制度が月次でかつ部門別に行われるのであれば、BSCの目標への取組みが財務の成果につながることが確認できます。
部門別に損益を認識できることが重要となります。


3.BSCの導入
次にBSCを導入するための手順を説明します。
(1)BSCの前提(周辺制度の整備状況)調査
  ①戦略・事業計画 
  ②組織の基本的事項
  ③教育制度・評価制度
  ④部門別損益計算

(2)(1)のうちできていない事項について整備計画立案

(3)4つの視点での目標設定

(4)(3)のための課題を設定

(5)課題を達成するためのKPI(キーパフォーマンスインディケータ=先行〔目標〕指標)の設定

(6)BSC説明会開催

(7)各部門への目標の落とし込み

(8)各部門からの行動計画の収集

(9)各部門からの行動計画検討

(10)全病院運営開始


4.まとめ
 上記に簡単にBSCについて説明しました。教科書のように詳細ではありませんし、具体的に進めるための指示をしていません。本来は一つひとつの手順において、いくつかの点について留意しなければなりません。そもそも、BSCをやらされていると考える人が大半であるところ、どのようにしたら、モチベーションをあげることができるのかについて議論する必要があります。

 BSCのような道具は、あくまでもその根底にある、あるいは中心に思想や情熱が必要です。そしてそれを徹底していくリーダーシップがなければなりません。職員が受容できるよう噛み砕いて説明することが必要となる場面もあるでしょう。

 BSCをするからいきなりそうしたことになるのも変であり、日頃からリーダーが組織に対して納得性が高い戦略を提示し、それぞれの役割に期待していることを表明しておく必要があると考えます。もし、それができていないのであれば、その部分に執着し、まず大きなうずをつるりあげ、それをどのように整理し、まとめていこうかというところでBSCを使うべきであると考えます。

 BSCを使えばすべてがうまくいく、というほど優れた道具ではないことをご理解下さい。
 
 まずは、リーダーがこの病院をどうしたいのかについてとことん考えることが必要です。そして決めたことをどのように下に下ろし、組織としてそれらを達成していくのかの道具としてBSCがあるのです。
BSCにより成果をあげることができるよう祈っています。


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