よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

ドクターのインセンティブ制について

 最近私はドクターのインセンティブ制を導入することを多くの病院に提案しています。
はっきり言って、医師としてプライドを保つには対価が必要である、という結論です。

 私達には医師は崇高で、かつ聖人のような対象であるという思いがあります。
 大半のは小さいときから努力し、よい成績をあげる生徒であり続け、医師になったという経緯をもっているでしょう。医師になることは難関の試験を経て研鑽を重ねてきたことは間違いありません。そして職業の貴賎ではなく、人の命を救うことを生業(なりわい)としているところからも明らかに尊敬の対象となっているのです。
 
 しかし、例えば商社や損保、銀行やメーカー、ITサービス業においても医師の報酬を超える社員が数多く存在します。仕事の質を比較しているのではありませんが、医療には高い価値を置くことが国民の効用を高めることでもあり、医師にはそれなりの報酬をとってもらうことが必要ではないでしょうか。

 たくさんの院長や医師と話をしてきました。ある雑誌では、患者が待たされたことに腹を立て、土下座して謝れといい、かつ足を蹴ったという話が載っていました。抗弁しようとすると2チャンネルに書き込むぞ、といわれたという気持が私にはよく判りません。俺は患者だぞ、大事にしろ、といったという記事には呆れてものが言えません。クレーマー患者さんはレアーケースではなく、どの病院でも出没しています。

 多くの医師は、報酬が仕事に見合っていないと感じつつも、患者さんを救うことに懸命になり、そして感謝されることに喜びやプライドをもって仕事をしてきたと話ます。したがってリスペクトされない環境では、自分の医療に対する気持を維持することができないと話す医師も一人や二人ではありません。

 逆に勤務が大変であるときに、それを忌避しながらバランスをとる。例えば救急車を断る、紹介患者さんを断る、時間外はみない、オンコールは切るといった医師がどの病院にも複数いることも見聞きしています。

 医師も人間です。以前にも医師を神格化するのは私達のエゴではないかという記事を書いたことがありますが、医師も人であり、生身の人間です。身近になんでも話せる医師が何人もいますが、みな素敵な頑張って人生を生きている人間です。すくなくとも一部ではあると思いますが、国民の意識レベルが低くなってきているのであれば、他の何かで医師に報いていかなければ、医師のなり手はいなくなる。志だけで医師が頑張れる領域はそれほど広くないと最近考えています。

 インセンティブ制は王道ではないかもしれない。しかし、なんとかしたいという医師に病院は応えていく必要があるのではないでしょうか。欧米やアジア各国でも頑張る医師の報酬は高いという話を何人かの医師が説明してくれました。

 医師は医療従事者として、身命を賭して働くのは当たり前と考えている国民はいないと思います。
医療制度改革のなかで、さまざまな問題が露呈していますが、病院で頑張ろうという医師に対して、あるいは地域で使命感をもって働いている医師に報いてくこと。とりわけ前者の医師に報いるためにインセンティブ制(内容については今回は説明しません)が導入されなければならないと考えます。

 勿論、患者さんの視点にたち、懸命に医療に打ち込む医師をみなで大事にする文化があり、そして業務改革が行われ、医師の力を正当に発揮できる病院であれば、こうしたことは必要ないのかもしれません。いやそうした病院であっても、治療に対する報酬は適正であることが適当でしょう。
 使命感があるから何でもできる筈だという論理は成り立たたないのです。

 明日も病院のプロジェクトで理事長や院長、副院長に具体的な進め方を説明します。

す。医師が良心をもって働ける、そして尊敬される環境をつくることが組織の役割であると、私は考えています。ここで書くことではないと思いましたがあえて書きました。