よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

貧乏人は医者にかかるな!を読んで

 永田宏さんの本(集英社新書)を読みました。医師が不足していることをマクロ、ミクロの視点から書き、2025年には、本当に医者が足りずに今と同じような医療は受けられない時代がやってくると今の政策を喝破しています。

 イギリスでは、数ヶ月待ちの患者がいて、大変なことになっている。アメリカは命を金で買わなければならない。この折衷となるだとうと予測しています。実際、日本の医療費はとてもやすく、インドよりも安いと説明し、保険料も自己負担も増やしたくないという国民の意思もあることにも触れ、国民皆保険制度が維持できなくなるだとうと結論づけています。

 実際、医師の報酬は安く、医療費に裂く資金が不効率な日本の官僚や公共工事に使われていると思うと本当につらく感じます。国全体がより生産性をあげ、医療費を増やすし、国民も応分の負担をしなければならないと考えます。医学部の定員を減らす政策(医師が多いと医療費がかさむという主張)を若干訂正したものの、医師という職業の意味や大切さをもっと国民が理解しなければならないと考えています。

 医師を守る病院をつくり、医療を提供し易い環境をつくらなければ、本当にあとで困ることになるでしょう。そもそも、貧困率アメリカについで高くなった日本において、経済活性が行われることが大前提ではあると思います。医療1人ですべてを解決することはできないでしょう。

 日本の政治、経済状態、官僚社会、国民の意識などすべてを変えていかなければ抜本的な解決にはならないと分かっていても、今の現状を打開する方法をそれぞれの立場、役割をもつ者により考え、行動していかなければならないのでしょう。

 我々の立場では、まず地域医療の強固な基盤づくりのため、診療所の経営支援、高齢者専用賃貸住宅の質の高い運用ノウハウの展開、居宅介護事業所のスタッフのスキル向上、環境整備と今行っていることの充実を図ります。

 そして、科学的根拠に基づく戦略立案(ここはちょっと難しいところはありますが…KPIを多様するなかで現状認識を行うことになります)医師のモチベーションをあげるための報酬制度や、医師が安心して指示ができる職員の質の向上(四位一体の仕組みづくり)、ビジョンをもって医療にまい進できる環境づくり、地域支援協議会の運営による医療と介護の垣根の排除…という仕事を進めていくことになります。

(これは、病院の勤務医が不足する部分をすでに多くの医師会で進めているように、地域における医療介護の質の向上を前提とした夜間土日の開業医の外来業務の代替化や、病院そのものの生産性向上を意味しています。勿論、絶対的に勤務医が不足するところにおいては、限界はあります)

 まずは、身近な一つ一つのクライアントの医療提供体制や環境を整備することが我々の使命であるからです。医師や看護師不足が前述したように重要なテーマとはなっていますが、であればこそ、一つの単位ではなく、一定のくくりをもつ地域全体が医療介護の壁なく超連携してくなかで、医師が力を発揮しやすい、力を発揮したいと思う環境を整備するために闘うしかないと思っています。

 日本の国民の医療機関受診回数は世界でも群を抜いています。少なくとも我々も含めて国民一人一人がまずは自分の健康管理を行うことが必要であるのかもしれません。

 といったことを本を読みながら考えたりしていました。残り少ない今年、そしてお正月、不健康にならないようにしようと心に決意したのでした。