よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

医師が働きやすい環境づくり(1)

 医師不足が叫ばれていますが、病院は医師を自院に留める対応を本気になって指定内容に思います。本気になっているのであれば、方法を間違っているとしか思えないことがあります。

 それは同時に真剣に医師を呼ぶ体制を整備していないことでもあります。
 
 積極的に医師を自院で雇用するためには、医師が、医療に真剣に取り組める環境をつくりあげる必要があります。

 医療に専念できる環境は複数に区分されます。
①職場人間環境
②職場業務環境
③報酬・褒賞環境

1.職場人間環境
 職場の人間環境は、上司と部下の関係、看護師と医師の関係がメインです。

 とりわけ上司と部下の関係が重要です。

 当人が上司であった場合と部下であった場合により状況は異なります。
 上司であった場合、部下が指示に従わない、指示通り動けない、あるいは反駁するといったことがあることで嫌気がさすということがあります。

 ある病院では、4人の部下の医師が病棟で患者さんの受け持ちを8人から0人と決めていて、自分が28人の患者さんを持っている。もう少し診て欲しいというと、なら、大学に帰りますけどいいんですか?と脅されると嘆いていました。このままでは自分が壊れてしまうけれども、仕方がない、と肩を落として仕事に戻っていかれました。

 また、逆であれば、仕事を押し付けられることで、リスクが高い、体が持たない、精神的に負担が大きくなるといったことがあげられます。
 

 ある開業したいという医師は、毎月50人の出産をしている。常勤医は自分だけで、診察、検査をし、麻酔をかけ、出産を行い、場合によっては手術もする。院長は病院の借金を返すためにもっと増やしてくれと迫る。このままでは自分が倒れるか事故か起こるかだ。いますぐ辞めたい。と悲壮な顔で訴えていらっしゃいました。

 また、ある病院では、部長が数人しか患者をもたず、自分が30人をもっている。あまりの過労で倒れてしまった。病室に見舞いにきて、やさしい言葉をかけてくれると思っていたら、ねえねえいつから復帰できるの。大変だから早くでてきてね。と奥さんのいる前で、その上司は言い放ったそうです。夫婦は激怒し、即効院長に辞表を出し、病院を去っていきました。

 これらについては、原則として上司よりも上位の責任者による調整が問題を解決するための方法です。
前者は院長マターの問題であり、上位の責任者がいないケースですが、患者さんには評判のよい医師であり、もったいないというだけではなく、経営のために医師を酷使する病院、任務を懈怠する医師により引き起こされる地域医療の崩壊がここにあります。

 利益のために募集もせず、一人の医師に依存する上司や、自らが懈怠して次々に医師を辞職に追いやる上司の存在について考えなければ、医療は成り立ちません。

 大学に帰ってもいいんですかという医師が部下に多くいる病院は、院長がその部下たちと上司の調整すらせいていません。また、違う病院の話で部下が倒れているのに、早く復帰してくれと常識はずれの行動に出た上司を、本気になって諭してもいないし、強制的に患者さんをもたせてもいないし、首にもしていません(既に部下が3人も辞職しているにもかかわらず)。

 医局の問題には病院不介入という傾向をもつ病院の業績は決まって悪くなっています。思い切って解雇をして訴訟になったり、収益を落とした病院は、のちに必ず復活しています。

 医師の働く環境を、患者さんの立場にたって考える院長のリーダーシップが発揮される病院が増えれば、いまの医師不足という状況も随分解決される可能性は高くなるはずだと私は思います(続く)。


「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」