2.職場業務環境
職場内環境として、病院の風土や文化が最も重要です。
アクティブな文化や風土が病院全体を覆っているのであれば、自分の立場や役割が自動的あるいは原理的に明確になり、目標や課題をもって仕事ができるため、医師はある部分、組織の目的と個人の目標をリンクさせることができます。
これは、働くことの意味を明確に受容することであり、組織のなかで成果をあげること=自分の成果をあげることという意味づけができることにつながります。
多少の問題や嫌悪する状況があっても、全体のより大きないわば「善」ながれのなかで、意識を一定に保つことができます。ただし、どうしても我慢ができない状況が他にあれば、働く意欲を失うことになります。
いずれにしても、病院の風土や文化がネガティブであり、ヴィジョナリーではないといった環境のなかでは、明らかにやる気を維持することが困難です。リーダーがリーダーとして役割を果たしていないことや、戦略が明確ではないとき、そして他の組織構成員のモチベーションが低い、などといったことがあれば、自らの意思を一定の状況に保つなんらの基盤をもつことができず、結果としてやる気を失うことになります。
なお、職場環境は、仕事の仕組みや職員との医師疎通の良し悪しによっても大きく影響を受けます。これは単に文化や風土という代物ではなく、実際の仕事のやり方や職員の技術技能に大きく影響を受けるものです。
(1)で説明したことがクリヤーされていても、実際に仕事をしていくうえで、能力の低いスタッフがいるといったことや、仕事の仕組みが確立されていないということがあれば、間違いなく、医師は余計な心配や行動をせざるを得ません。
指示が正しく実施されているかについて気をもみ、また病棟に患者をみにくるといった医師がいますが、結局はスタッフの過去からみてきたスキルに不安があることが心底にあります。
報告がないことで、結局は自分に帰責事由のないリスクを背負わされることの負担には大きいものがあります。医師が良い医師であればあるほど、そうした傾向がでてきます。
医師が働き易いと考えるためには、文化風土をポジティブなもととするための取り組みを行なうとともに、その医師本人の期待レベルとのバランスではありますが、常にスタッフの質を高める、そして業務改革する体制をつくりあげていくことが必要となります(続く)。
「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」