よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

業務改革と個人の成長

 病院のマニュアル委員会に説明した資料です。

 「マニュアルをつくらなければならないからマニュアルを作成するのではありません。
 必要だからマニュアルをつくるのです。必要に思わない、というのであれば、マニュアルは作成できません。

 いまの仕事のやり方がベストで、これ以上進化できないというところまで行なっているということについてすべての人が自信をもっているのであれば、マニュアルを作成する必要はないのかもしれません。しかし、それはあり得ません。必ず、不効率な仕組みや、整備されていない仕事、そして不足する仕事があります。ないわけがないのです。

 そしてスタッフのスキル(技術技能)がもうこれ以上ないほど高いのであれば、マニュアルを利用した教育や、マニュアルから職務基準を作成し、それを教育の客観的な指標とすることも必要ないでしょう。でも、それはあり得ません。

 また、個人個人をみても、これは得意だけれどもこれは不得意といった一人ひとりの課題が必ずあります。完璧な技術技能をもった人の集団はどこにもないのです。

 また、必要であるのは十分判っているが時間がないのであれば、時間をつくらなけ
ればなりません。
 
今の病院を収益体質にしていくためには、時間を絞りだしていき、そこで改革を行うことが必要です。なお、注意しなければならないのは、改革は改革、現場は現場ということではないことです。

 改革は現場での仕事が円滑に進むためのものであり、また個人の力をつけることも同様です。

 したがって、時間をつくり作業を行うことは、必ず現場に役立つ結果となります。仕事がやり易く、生産性があがり、患者さんに喜んでもらえるスタッフがさらに増え、そしてまた新たな時間が生まれます。そしてその時間を付加価値業務に利用し、仕事はより円滑に、そして個人もより力をつけることができるようになる、というながれです」

 この説明は延々2時間続きました。機能評価もそうですが、形式にとらわれて実質的に成果をあげることができない病院は、時間を無駄にしています。有効に使える時間を、形だけのマニュアル作成に浪費してしまうのでは、あまりにも大きな犠牲を払うことになると考えます。

 機能評価もそれをきっかけとして成果をあげようとすることでの意味はあります。

 しかし、本質的にはやはり、もっと深いところで、意味を理解し、マネジメントのなかでの役立ちを徹底的に伝えることができる管理者がいなければ、結局のところそのときの体験を以降に役立たせることができる人だけが個人的な利益を享受する程度の活動で終わってしまうとある事務長が話されていました。

 その事務長ももう二度と受診しないと話していましたが、結局時期がくると論理的な説明で組織を納得させることができず、再受診をしていました。

 病院という組織は、人の良心に依存し、使命感に依存して成り立っているだけに、マネジメントがなくても、成果がある領域まではあがるという事実があり、それが逆に誤解や障害になってシステム的な活動を阻害している側面があります。

 マネジメント力のある幹部が育ってくることで、新しい病院運営が行なわれなければならない時代を迎えているのでしょう。何れにしても、マニュアルを業務改革と個人の成長の道具として使いこなすことが求められています。


「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」