よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

勝ち残る5段階で進めるDPC戦略(2)

2.5段階戦略について
DPCに踏み込んだ病院が、どうすれば成果をあげられるかについて、当社では、5段階での戦略を提案しています。

5段階は次のものです。
第1段階  基礎の確立

第2段階  病院原価の計算による自院の損益構造認識

第3段階  質を向上させるための利益プールからのコスト配分

第4段階  自院の強みを伸ばすことでの利益確保

第5段階  ポートフォリオにより自院の診療内容をより明確にする

5段階で、DPCをどのように進めていくのかについて説明をします。

〔第1段階 基礎の確立〕
いうまでもなくDPCの導入目的は、高密度で質の高い合理的な医療を行うことです。高密度というのは、在院日数を短縮することですし、質の高いということは、治療成果を高め、医療の質を担保するということでしょう。そして合理的な、ということは、できるだけ無駄のない、効率的な医療を行うことを意味しています。
このように、DPCでは、高い治療成果をもって早く退院する、ということを目指しているのです。

なお、在院日数が短いだけ、多くの患者さんを確保しなければベッドが空いてしまいますから、一方で、増患することが求められています。「たくさんの患者さんに来院してもらい、早く退院してもらう」というコンセプトが成り立ちます。

このような考え方のなかで、DPC病院は、以下を実施することになります。
DPC出来高の比較による不必要な行為の取りやめ
ⅰ)他科受診の禁止
ⅱ)持参薬の管理
ⅲ)検査・撮影の外来化
ⅳ)ジェネリックへの転換

②他病院とのベンチマークによる課題発見及び解決
ⅰ)抗生剤投与期間の短縮
ⅱ)在院日数の短縮

③システム構築
ⅰ)パスによる計画的医療 
ⅱ)リスクマネジメント強化によるリスクマネジメントの徹底
このようなことが、基本的なDPC実施事項であることは、多くの病院で認識をしています。

在院日数を短縮するということは、入退院が繰り返されることですから、現場はとても忙しくなるため、無駄のない仕組みやスタッフの高いスキルが要求されます。したがって、
ⅲ)制度整備
ⅳ)業務プロセス見直し
ⅴ)マニュアル整備及び運用
ⅵ)教育システム整備
ⅶ)看護プロセス個々の行為見直し
ができているかどうかが問われることになります。
さらに、最も重要なことですが、
④増患のための仕組みづくりも必要です。

増患はそもそも、
ⅰ)本質的にブランドをもつことによる増患
ⅱ)連携による増患
ⅲ)プロモーションにより見えていないところを見せることによる増患
が考えられます。

ブランドは、信頼、信用、安心をつくりあげることであり、DPCを通じて、医療の質を向上させていくことの帰結として得られるものです。また連携は意図的にさまざまな取り組みをして、病病連携や病診だけではなく、病介をも含めた連携を意図しなければなりません。病介では、地域支援協議会や訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所等との連携をとる必要があります。

プロモーションについては、Drのビデオ放映やセミナーの開催、会報の作成、ボランティア活動、健康相談会の開催など、医療からの広告宣伝活動を病院としてどのように行っていくのかを徹底的に実行することが必要です。

いずれにしても、第1段階では、DPCの趣旨や目的を理解し、どのようにDPC病院としての基礎をつくりあげていくのかが戦略ポイントとなります(続く)。



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