よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

個人カルテによる教育について(1)

1.はじめに
 個人カルテを利用して職場内教育を行うことにより、スタッフ一人ひとりの課題を明確にした的確な教育を行うことが可能です。それらの方法について確認し、全スタッフが自らのスキルを高める活動に入ることが必要です。


2.内容
(1)職務基準による評価
 職場内教育については、まずは、職務基準をベースに課題を抽出し、カルテに記載します。課題を解決するために、各職場においてどの資格にある者は、どのような技術技能をもっていなければならないのかを職務基準(補完的にマニュアル)で確定し、現状と職務基準を照らし合わせながら課題を発見します。

 課題をカルテに記載したうえで、個人と上長でそれをチェックしながらつぶしていくという作業を行います。職務基準で課題を明確にし、具体的にマニュアルによって教育をしていくというかたちをつくります。

このように職務基準が個人の教育の前提となります。病院全体にどのような職務があるのかについてマニュアルをより詳細に分析したかたちで職務基準を作成し、それをもってスタッフが有していなければならない技術技能の基準とすることになります。

古くから一般的には目標管理制度において業績評価を、そして人事考課において、業績をも評価しながら情意を評価することで個人別の課題を発見しようとしていました。

 しかし、実際には人事考課の情意効果におけるにおける能力評価はあくまでも概念的(潜在能力から発展し、発揮能力を評価するといったラインまでは到達しているようですが)なものを規定することが通常であり、なかなか具体的な部分にまで切り込んでいけなかったという感があります。

 具体的に個人の能力を明らかにするためには、職務基準といった部分をより明確に打ち出すことが必要です。
 
(2)意識、意欲、姿勢、態度
勿論組織における人の動き方は、知識や技術技能だけではなく、意欲や姿勢、態度によって決定されるものではあります。したがって意欲の醸成、姿勢や態度の矯正あるいは、意識改革による仕事に取り組む態度等については、別途これを行う必要があります。

基本的に、これら「情意」に対する教育は、ある意味常識に由来するものと、職業から生まれる倫理、さらには仕事一般に対する姿勢や態度といったものを喚起するかたちで行われることが適当です。
①社会人としての常識

②医療従事者としての使命感

③仕事の役割分担の達成義務感

④権限の付与による責任から生まれる意識

⑤学際的な組織論やリーダーシップから求められる意識
などなどさまざまなかたちがあります。

少なくとも入職何年目、職位に関連づけた職務基準が作成されていますので、それら入職年数や職位に関連づけた役割分担や責任の所在を明確にしたうえで、それぞれどのような意識で仕事に望まなければならないのかについて教育を行うとともに、さらに意識をもつための意欲をどのように醸成するのか、意欲の発露としての姿勢や態度をどのようにもってもらうのかについて具体的な方法を確立する必要があります。

 一般的に看護部においては、歴史的にラダーといったかたちで、技術技能だけではなく、このような情意のなかの意欲や姿勢や態度や態度にまで切り込んだ教育制度をもっていますが、どちらかというと感覚的なもので、明確な尺度をもっているとはいいがたい部分も残しています(続く)。




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