よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

勝ち残る5段階で進めるDPC戦略(5)

〔第4段階  自院の強みを伸ばすことでの利益確保〕
第3段階で、つくりあげた制度に後押しされた医師やスタッフの思いが患者さんを集めることになります。意思がやりたいと思う医療が定まり、コストをかけながらも医療の質が向上します。そのことは多くの同一疾患の患者さんの治療を行うことにつながり、そこでのスタッフや医師のスキルを高めることになります。

経験曲線を伸ばし、コストを低減させることになります。経験曲線は、累積の生産量が増加すれば、コストは一定割合で逓減するという理論ですが、医療においても、たくさんの患者さんの治療をしていくことで、スタッフや医師の熟練度が増加し、結果として、利益がダブルで増えてく結果を得ることになります。

つまり患者が増え、固定費が逓減することの利益(場合によれば一人ひとりの変動費自体が逓減されることによる利益)。一定期間における多くの患者さんの治療を行えることによる一人当たり利益の総和が増加することによる利益増がそれです。

第3段階を経て、損益構造を理解したうえで、行うべき医療を行うことができる、メリハリのある本来の医療を取り戻し、そこで良い医療を行い、強みを確認する、あるいは伸ばし、患者を増やこと。そして利益をコントロールしながら病院全体を活性化すること。
第4段階では、そうしたことをテーマとして活動することになります。

〔第5段階 ポートフォリオにより自院の診療内容をより明確にする〕
この段階になると、医師がやりたい、やり続けてきた治療を患者さんが評価し、その治療を目指して患者さんが病院に集まってきます。

この病院は、眼科でいえばこの疾患。ウロでいえばこう。内科であればこれ。外科であれば、これこれ。そして整形であれば、脳外であれば、心臓であれば、この疾患といった具合に各科別の医師が得意な疾患の患者さんが増加してきます。
小児や産婦人科でももちろん、皮膚科や形成、あらゆる診療科においてそうしたながれができあがってくることになります。
この段階からは、さらに集中と選択を行うかどうかを決めます。

病院全体の利益を計画し、外来と入院でそれらをどのように収益をあげていくのか、利益を確保していくのか、各科別ではどうか、各科ではどの治療は自院でするか、どの治療は他病院に紹介するといったように、自院でなんでもかんでも行うのではなく、自院の経営資源を最大活用できるよう治療を進めていくことになります。

これは、ある治療を拒否するというよりは、自院が行ったほうがより早くよりうまく治療ができると考える治療は自院で行うが、そうではない患者さんについては、他の病院に紹介をすることが、社会全体でみれば資源を最適化できる、そして病院にとっても利益を最大化できる、ということを意味しています。

手術室の利用できる時間や手術にかけることができる医師やスタッフの時間は有限です。自院が他院より優れている治療を優先的に行うことが、患者さんにも自院にとっても、そして他院にとっても、すべてにわたり意味があると考えます。

自院では、各科別にこういう医療を行う。それぞれ、他に誇れる治療はこれである。これについて以外は、他病院に逆紹介する。そして経営資源を最適化し、利益を最大化することがDPC病院第5段階のテーマとなります。

なお、上記は、ある地域に複数の病院がそれそれの特徴を出しながら存在しているということが前提であり、ある診療圏に自院以外の病院がなく、自院が当該患者さんの治療をしなければ、近隣では誰も治療を行うことができない立地にある病院では、上記は採用できない対応です。

いずれにしても、ここに到達するまでに、当該DPC病院においては、必要とされるすべての制度や仕組みがつくられ、個人の技術技能は向上し、医師が病院の方針のなかで、自ら行いたい医療を一定の裁量を以て行うことができる状況ができあがります。

この段階をクリヤーすれば、DPC病院は、高密度で合理的な質の高い病院として十分に機能し、地域に貢献することができるようになるのです(続く)。



「ドクタートレジャーボックス同時掲載記事」