よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

その日に向かって生き抜くこと

 

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かなり前のことですが、「象の背中」という映画を観ました。役所広司と今井美樹が夫婦役で共演です。

 

余命6か月を宣告された役所広司が、180日をどう生きるのかという映画でした。象のように死を覚悟したとき、誰にもみつからないように死に場所にいくのではなく、皆にかかわりながら生き抜きたいという主人公の思いをテーマにしています。

人生、仕事、家族をテーマにしたあたりまえのストーリーで、とても日常かつ誰にでもあり得る生活を描いていて、リアリティのある映画でした。

結局人間は死んでいくものだということを分かっていながら、その日がくるまでは死を意識していない。死を意識して、どう生きるのかということが人生の半分を超えてからでなければ切迫感をもって感じられないことを思い起こしました。

あと何年、と漠然と考えて不安と焦燥をもちながら、何かをしなければならないという感覚になったのは、この5年位のことか、と自分で思い返していました。そうはいっても毎日死を意識しているのではなく、気がつけばそこに戻るという程度の薄い意識であることに、映画をみて気がつきました。

毎日死までの日めくりをめくる役所広司は、家族のための生活費を補填するため12年ぶりに会った兄が、自分の入院するホスピスに見舞に来たとき、こういいます。

 

「死ぬのが怖い…。」

 

自分から進んで生を全うしようとして、治療をしないことを選択した役所広司が、「分ったようなことをいっても、俺はとても怖いんだ」、と言うところはとても人間らしいと思いました。

私たちには、「怖い」という個人個人のさまざまな思いを凝縮した言葉を最後の最後までどこかで感じながら、でも死を受け入れざるを得ないときが必ず来ます。

 

なぜ宇宙あり、地球があり、人間が存在すること自体に対する解を誰ももっていないいま、死ぬことだけに焦点を当てることにはあまり意味がないような気もしますが、その日に向かって、誰にとっても一日一日後悔のない日々を懸命に、そして満足して(達成感をもって)送ることが必要なことには変わりはありません。

 

いつか来るその日に後悔しないために、生きた証を自分のなかにしっかりつくりながら、日々を懸命にそして楽しく生きていこう、と決意することが大切です。

 

実際にそうしているかどうかというと自信はありません。頭では理解していても覚悟せず、切羽詰まらないと行動できない怠惰な心を抱え、日々右往左往している自分がいるからです。そんなときにこの映画です。


偶然に鑑賞した映画ではありましたが、自分のあるべき立ち位置を再確認させてくれた、とてもすてきな物語でした。