よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

DPCには病院原価計算が必要

 先日、都内のある病院で、レクチャーをした資料の一部です。DPC病院として、病院原価計算を行うことは不可欠であるということを説明をしています。これらののち、詳細な学習会を開催しています。

 少し、ご紹介します。

 「DPCを採用するには、病院原価計算の導入が必須です。
 出来高からDPCに移行する過程で、どちらかが収益が高いのかといったシミュレーションはしなければなりません。どのような調整が行われるかは別として、疾病別にシミュレーションすることで、差額を把握し、DPCに本格移行した場合にはどのように収益が逓減する、あるいは増加するのかについて認識しておくことは必要です。

 しかし、もっと重要なことは、DPCに移行することにより、質を落とさず合理的な医療をどのように行うのかに留意することです。

 診療報酬が下がり続けることは明らかななか、自院がどのような診療活動を行い地域に貢献していけるのかを考えるとき、自分達の診療活動はどのようなコスト構造のなかで行われているのかをまず理解し、そして目標を決定し、業務改革をしながらあるべきかたちのところで活動する。このような方向をもたなければなりません。

 病院原価計算が経営意思決定を行なうときの重要なツールとなります。
病院原価計算を行うことが目的ではなく、そこから何を抽出し、何を改革するのかが病院原価計算のポイントです。

 であるのであれば、病院全体のコストリダクション(原価低減)や管理会計全体のシステム構築が必要であり、これら体系的なアプローチがないとき、原価計算だけを行ってもうまく成果をあげることができません。全職員がコスト意識をもち、一人ずつのベストプラクティスを確保できるシステムを導入することが求められています。

 明確な戦略のもと、スタッフのモチベーションをどうあげるのか、どのような道具を使いマネジメントを行うのか、自院を中心とした地域完結型医療を介護事業への関与をも含めてどのように展開していくのか、といった総合的なマネジメントシステムを並行して整備しつつ病院原価計算を計画立案やモニタリングの道具として利用することが必要です。

 DPCの時代は「病院改革の時代である」といわれるように質を維持、あるいは質を向上させながらさらに合理的な医療を行うといった、医療のあるべき姿へのルネッサンスである、と考えることが適当です」

 医療が包括制度になったおかげで、合理的で質が高い医療をどのように達成していこうかという思いが医師やスタッフに芽生えました。制約条件があるなかで、最高の医療を目指す。そんな病院がDPC下において増加していることはとても意味があります。

 これからもDPCの本質は何であるのかについて徹底的に啓もうさせていただければと考えています。