よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

舞台と観客、それは人生そのもの

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この建物(東京宝塚劇場)の写真を前にして、思い出したことがあります。

まるで宝塚は、夢の世界でした。舞台の大階段から降りてくる羽をまとったスター(宙組、大空裕飛)は、上り詰めた天空の世界から、爽やかに舞い降りてきた天使のようでした。

彼女は輝き、主張しながら、辺りに光を放っています。

どこの劇場か忘れましたが、熊川の舞台に出たバレリーナの中村祥子もそうでした。彼女が袖から舞台に現れると、そこに大きなスポットライトが当たるように確かに目にみえる薄明るい丸い光が躍る彼女を取り囲みます。

 

言葉はなくとも清楚な中に、生命の息吹が躍動していて、それはまるで夜明けの静けさのなかに、ある瞬間に、ぱっと地球を照らす太陽の光の様でした。

 

実際には、スポットライトは当たっていませんでしたが、あとでネットを調べると、彼女が光に包まれている気がした、と書かれているブログがいくつもあり、私の印象が間違っていないことが分かりました。

宝塚では、これでもかこれでもかという舞台の勢いが客席と一体になって迫ってきます。大きな音をたてたうねりのように。スターはそれ以外の、彼女をを引き立てる多くのジェンヌのなかで、やはり輝き、歌い、躍り、そしてときには手を広げ観客を強く抱きしめていました。

秩序と序列。肩につける羽の大きさにはいくつかの違いがあり、やはりスターの羽は大きく美しい。


努力を重ね、才能を見いだされ、そして今降りてきた大階段を裏側から一つ一つ登るようにスターの道を懸命にあがってきたに違いありません。
 
バレリーナの中村祥子と宝塚のスター大空裕飛。輝き方は異なるものの、ともに心に響くアーティストだした。

 

バレエの場合には、観客は静として、そして宝塚の場合には動として、舞台を支えています。それぞれの舞台での彼女たちのオーラのかたちは、自らの才能や努力とそして彼女たちの観客の思いによってつくりあげられたものだと思います。

 

舞台が始まり進むなか、静かな観客がかたずを飲み、いつも中村祥子の「出番」を待っています。

 

彼女がはじけるように袖から舞台に躍りでて、可憐な姿をみせると言葉ではなく、大きな空気の波動が起こります。ため息ともとれる心が動く大きな波のようです。

 

波は瞬間にして客席をなめるように広がり、そのスピードははかりしれなく早い。自身の鼓動が身体を包み込み、言葉のない世界のなかで、その場がすべて彼女そのもので覆われるのです。

 

呼吸が止まるほど美しく、静かに、しかし躍動的に舞う彼女の姿は他に観たことがないものでした。

 

そして宝塚。有無を言わさない迫力は、舞台が観客の命と一体になったときに生み出されるものであることが解ります。

 

拍手と歓声、そして静寂のなかの彼女たちらしい唄声が宝塚をつくりあげ、観客は動として、舞台をつくります。

舞台のながれは異なるものの、観客の求める心が舞台をつくることは同じです。

 

求め方の違いにより、舞台の空気が変わり、そしてそれはまた観客の心に戻されます。静と動。てらいのない湧き出る波動と、つくりあげられる波動。クラッシックバレエと宝塚。

それは、まるで私達の人生をみているようでした。

 

さまざまな演目の舞台のうえで、舞台に上がったバレリーナやジェンヌが努力を怠らず、才能を伸ばす世界のなかで、多くの人々の支えをもって、自らを輝かせること。それが人生です。

スターと観客は、自分と社会になぞらえることができます。主体と客体は、あるときには客体と主体と位置を変え、相互に影響しあいながら成果をあげるものなんですね。


自分が魅せられるものをつくり出し続けた分、観客は感動し、声援を送ってくれます。感動をつくり出した分だけ、応えてくれます。そしてその感動がまた自分の人生を支えていくからです。

世界の誰でも、どんな舞台でも演じる自分は美しいと思うのです。

スターであってもスターでなくても、人生の舞台に、スターもスターでないものもなく存在している事実があることを納得する。そして、舞台にあがる者すべてが主役であるということが腑に落ちれば、人生に自分を見出すことができます。

 

どのような運命やどのような役回りであろうと、自分の命の続くかぎり、自ら輝き続けることこそが人生なんだ覚悟しなければなりません。

観客が多くても少なくても、例えどんな演目であったとしても、演じるのは自分でしかないということを意識して、意欲をもって最後まで舞いきることが大切です。

自分が精一杯、できるだけたくさんの努力をして、何かをつくった分だけ、廻りは反応し、応援してくれます。

 

自分と自分以外のすべが相互に関係をもち、尊敬し合い、ともに何かをつくりあげていく人生は素晴らしい。私はこらからも、それを抱きしめ慈しみたいと思います。