(3)コスト絶対額削減のための手法
コスト絶対額削減のためには、さらに職員全員の意識改革が必要である。
例えば、営繕や購買のコストを自部署がどれだけ使ったのか使っていないのか判らなかったときと判ったときには、どのような行動が生まれるか。
前者であれば、明らかに当該部門に所属するスタッフの一人一人に経費削減意欲が芽生える。したがって、まず、
①各部署からの営繕や購買へのオーダーはすべて履歴を残す
②部門別損益計算を導入して部署別の利益を把握できるようにする
といったことが必要となる。
利益がでたら職員に還元するといったシステムをつくることも有効。大きくいえば、目標管理やBSCで目標設定をするといったことがテーマともなる
4.単位当たりコストの削減
マイケルポーターは高い医療の質はコストを低減させるといっている。
基本的に、職員一人一人の生産性が高ければ人件費の生産性はあがる。法定人員の必要な部署であれば、時間外が削減されたり、インシデントやアクシデントの発生が抑止され、事務コストや医療コストが大きく低減される。
また、そうではないところであれば、少ない人員で同じこと、少ない人員で多くのことができるようになり、固定費の削減にまでつながることになる。
一人ひとりのスキルを高めるための教育体系整備と、彼らが働きやすい仕事の仕組みをつくりあげていくことが必要となる。教育は日々すべての仕事のなかで実施されるべきであるが、マニュアル、パス、リスクマネジメントといった機会をとらえた職場内教育や集合教育を徹底することが有効である。
とりわけ、これらは業務改革ツールであり、これらを徹底して実行することにより、個人のスキルは向上し、また仕事の仕組みは改善され、はやく、うまく、やすく物事ができるようスタッフが行動するようになる。
こうして考えると、医療機器の稼働率を向上させることも、単位当たりコストの削減につながる。できるだけ増患して、あるいは共同利用することにより、機器の有効活用を行えるよう対処することが必要である。
稼働率が低ければ間違いなく、準備や整備といった日々行われる固定的なコストの比率が増加することになり、明らかにコストを必要とする。
医療機器については、件数とか回数ではなく、稼働率で管理することが必要となる。
なお、追加的に説明すれば、未収入金の回収についても、発生がなければ回収コストも必要がない。ある病院は、病棟から請求書が渡されるのが遅く、金曜日の夕方患者家族が医事に行ったら、今日は受け取れないと説明。
結局、患者と家族は土曜日に支払を行わず退院。このフローであれば、不必要な回収コストを敢えてつくりだしていることになる。こうしたことをなくすことで、コストは削減される。
また、医師の生産性をあげて、単位当たりコスト削減への対応を行うために、
①管理会計数値の提示によるブリーフィングシステムの構築
②インセンティブ制度導入による増患対応
といったこともテーマになる(続く)。