よい病院、よくない病院の見分け方[石井友二]

マネジメントの巧拙が、病院の良し悪しを決めます。多くの病院コンサルティングの成果をお伝えし、自院の運営に役立たせていただくことを目指します。職員がやりがいをもって働ける環境づくりも、もう一つの目的です

DPCが変わりつつある

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 DPCに関わる病院は50万床以上となり、DPC病院の活動は成熟してきました。
私が発表した「DPC5段階進化説」によれば次のようになっています。

第1段階<比較>
 ①DPCと出来高(医療行為の見直し)
 ②他病院とのベンチマーク(現状確認)
第2段階<DPC必要事項実施(概括的コスト削減・生産性向上)>
第3段階<病院原価計算実施(詳細原価低減)>
第4段階<得意分野の拡張による利益創出(経験曲線の証明)>
第5段階<アローアンスの許容(納得性の担保)>

 導入当初は第1段階であり、分析ソフトなどを活用し、出来高からDPCへ移行するときの入院してから医療行為の見直しを行うことが必要です。また、他の病院と比較を行いながら、自院の課題や問題点をピックアップしながら自院の医療を再検討するという作業が行われます。

 しかし、先行している病院は、こうした作業を経過しすでに第2段階に入りました。術前検査の外来化、検査撮影セット化、持参薬管理、他科受信禁止、ジェネリック化、抗生剤の見直し等々の作業がそれらです。入院してから手術までの期間や、緊急入院と予定入院の比率を管理している病院はそこそこでてきているものの、これが全部できている病院はまだそれほど多くはないでしょう。しかし、これをやっていかなければなりません。

 これからが問題です。第2段階を深めつつ、第3段階に進まなければならないのです。
疾病別原価計算により診療群類別に、利益が管理できるようになれば、得意な治療の利益を確保できるよう戦略を構築していくことができるようになります。先生方がその病院でやっていきたい医療をどのように病院が指示していくのか、支援していくのかについて考えることが実はDPC病院の使命であり、DPC制度の狙いだと理解しています。

 SWOTを行い強みをつくれ、これが松田班の主張の一つであるわけで、医療生産性を国全体であげていくためには、多くの病院が多くの治療をするのではなく、それぞれが得意な治療をそれぞれが特化していくなかで強化し、そこに多くの広い診療圏から来院した患者さんが早期の、そして的確な治療を受けることができればよい。ということになります。

 DPCは、日本の医療を根底から覆すものではありません。高密度で質の高い合理的な医療を行うための計画的に企画された成果をあげることができるストラクチャーであると思います。

 ただ、瑕疵があることは否めず、これから修正していかなければならないもの、例えば救急入院は多くのコストを負担すること、などは制度の自己矛盾として改善の俎上に乗せなければならないものです。

 それを考慮しても、過去の制度や構造のまま医療を維持することはできないというのが、厚労省の考え方なのでしょう。その通りだと思います。

 本来は、あらゆる手段を駆使し、まず病院経営の確立を行い、そのうえで、病院を再編するということなのですが、DPCを導入し、淘汰をさせつつ、頑張った病院は残すという方法が採用されています。
 どちらにしても、病院トップがマネジメントを学び、医師や職員を守り、本当に高密度で質の高い、合理的な医療を行わなければならないことは間違いがありません。

 誰がリーダーなのか。誰が身をとして医療を変えようとしているのか。病院を変えようとしているのかについて各病院は反芻してみなければなりません。空港でジャンボ機をみて、多くの機能に支援されつつも、やはり多くの乗客を運ぶたくましい姿に、とても感動しました。病院トップもジャンボ機(機長)でなければならないのか。そう思いました。

 DPC病院においては、DPC5段階進化プロセスを粛々と辿ること。そのためには病院をけん引するリーダーが必要である。これが結論です。DPC病院でこの段階に来ている病院も散見されるようになりました…。

 私たちホワイトボックスは、これからもDPC導入運用及び、病院原価計算の徹底的な病院への導入、そして医師が判断しやすいデータ分析及びブリーフィングシステム整備により、病院がよりDPCを円滑に活用できるよう、微力ですが頑張っていこうと思います(地域一般病床や療養病床の廃止、転換に向けた対応は当然に病院再生として対応していきます)。