DPCについて全体を俯瞰しなければ、何のために包括での医療が必要であるのかを理解することはできません。高密度で質の高い合理的な医療を行うことがDPCの究極の目的です。これらについて、数回にわたり、説明していくことにしましょう。
DPC5段階進化を私が発表してから1年近くになります。
多くの病院が、DPCと出来高の比較を経て、ベンチマークを行い、そのなかで自らの医療を見直しつつ、業務改革を行い一定の成果をあげてきました。しかし、フェーズ3である病院原価計算を導入している病院は、まだ少ない。
病院原価計算は、部門別損益計算と患者別疾病別原価計算があります。前者は部門の業務課題を明確にし、改革を通じて医療の質を向上させ、コストリダクションを図るものです。
間接部門はコストセンターとしての機能を果たし、廉価に予算のなかで最大のサービスを提供しているのかが評価されるし、コメディカル各部門は、それぞれの機能を最大の効用を以て、提供しているのかどうかが、コストパフォーマンスの観点から把握され、課題が抽出されます。
改善のためには、KPIといった道具を使う必要があります。個々の費目ごとにパフォーマンスを管理しながら、配賦される前の生産性を向上させることが目的です。
そして直接部門。外来や病棟は、限界利益を出せているのか、固定費の管理や変動比率の管理は適正かどうかが部門別損益のなかで管理される。このことに気が付いていない病院管理者や事務長は多くいます。
診療科別でなければ医師を説得できないという意見は間違いです。
いや、間違いではありませんが、妥当ではありません(医師は自分の病棟や診療科が結果として、どのような貢献をしているのかを知りたがっています。事実として理解したいのです。そのためにはこれらの資料を役立たせることができます。
ただし、医療のなかに切り込んでいくのはこれらでは不十分です。患者別疾病別原価計算や、組織生産性への事務方の活動が重視されることになります)。
部門別損益は、まず部門別にそれぞれの部門のポテンシャルを図り、そしてそれぞれの問題をつまびらかにするための管理会計だからです。診療別にすれば医師を説得できるものでもありません。
これは別の問題です。マネジメントのソリューションを行うこと、そして医師が働きやすい環境をどうつくるのかがこれら原価計算の役割であることを知らなければならないのです(続く)。